第48話 モテ期は突然やってくる08
喧々諤々。
ワンワンニャーニャー。
議論。
灼望。
否定。
提議。
結論。
「ですから私もカノン先生に教えを請いたいんです!」
言ってしまえばソレだけのことだが、
「そもそも……講師ではないのですけど」
それもまた事実。
「にゃあごう」
鳴くジュデッカ。
カノンの立ち位置は少しばかり特殊性を帯び、『特別顧問』と呼ばれる身分であって、言ってしまえば臨時戦力……傭兵のような扱いだ。
純軍事的緊張感が海の国と麦の国で働いている以上、
「カノンという超戦力は抑止力として機能する」
が学院……ひいては海の国の理屈。
一応特秘事項にもは値するも……幾つかのお偉い様方には認識の共有さるるところで、海の国と麦の国の両国は普通に彼女をジョーカー扱いしている節もある。
後者……麦の国にしてみれば、
「理不尽にも限度はあるぞ」
ということになるのだが、
「知ったことか」
がミズキの意見。
如何せん彼に真っ当な意見を求める方が筋違いというか根本的な理論破綻の典型で、単に少女の自由と平等のために鉄壁砦を鏖殺したことは幾人かの乙女の胸にしか秘められてはいないのも……これもまた世界の七不思議。
ある種の部外秘とも言える。
それを前提に、
「――ことの根幹は誰のせいか?」
と議論するなら、
「「「どう考えてもミズキだよね」」」
が、かしまし娘の通念だ。
さすがにジュデッカはそこまで察し得ない。
麦の国のミラー砦が地表から消失した件は聞いているが、
「誰が?」
「何故?」
「如何様にして?」
の類だ。
無理もないのだが。
そして優しく説くミズキたちでもない。
「とにかく!」
閑話休題。
「カノン先生に取り入ります!」
どちらかと云えば自分に向けてジュデッカは言った。
「はあ」
ポヤッとカノン。
ジロジロとジュデッカを見やる。
「?」
困惑するジュデッカには何も言わず、
「セロリ?」
「なぁに?」
「もう一着メイド服が増えても大丈夫ですか?」
「学院祭には間に合うと思うけど……」
要するにジュデッカを受け入れたのだ。
「光栄です!」
ジュデッカがヒマワリの様な笑顔を見せた。
「よろしく御願いします!」
元気溌剌。
「良いのか?」
とはミズキの懸念だが、セロリとサラダも認識は同一だ。
「交友が増えるのは良い事です」
「そんなもんかね」
殊更に拒絶する要素も無く、ミズキも流された。
別段、友情が増えることを忌避しているわけでもないのだ。
単に風聞の手前、友人として立脚しようとする愛すべきスクールメイトが極端に少ないだけで。
「ところでカノン先生はどんな魔術を?」
「秘密です」
「ですかぁ」
「そういうジュデッカは?」
「水属性と親和性が高いです」
「水……」
昇華の性質。
対象の強化を旨とする属性だ。
「治癒強化は使えますか?」
「イエスです」
「なら結構」
――何が?
と思ってもジュデッカは問わなかった。
「学院祭って街を挙げてのお祭りなんですね」
「らしいですよ?」
カノンも所属はここ最近であるため、あまり実感は無い。
サラダはお供を引き連れて。
ミズキはセロリと過ごしていた。
あくまで去年に限ればだが。
「今回は王族が来るらしいな」
とはミズキの意見。
不敬罪だが、あまり気にしても意味が無いため、
「不問」
が流儀だった。
「え?」
とジュデッカ。
さもあらん。
この緊張状態の最中だ。
特に学院祭は麦の国からも客が来る。
政治レベルで王族が顔を出すのは、
「悪手」
の一言。
「気楽で良いよな」
またしても不敬罪まっしぐらなミズキだった。
王族を、
「税金を計算する演算装置」
程度にしか思っていないのだから宜なるかな。




