表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/176

第46話 モテ期は突然やってくる06


「学院祭……」


「だぁなぁ」


 何の因果か……完全に懐いた野良猫あらためジュデッカは、ミズキとセロリと肩を並べていた。


 生地問屋で見分。


 色とりどりの生地を買って荷物持ちはミズキの領域。


 仕事の本題はむしろ後刻のことになるが。


「お前も学院の生徒なんだろ?」


「転校生ですけど……」


 今は私服だ。


 いちおう学院にも制服があるので、それさえ着ていれば余計な面倒は軽減できるはずなのだ。


 無論、それ故の厄介事もないわけではないが。


「いつ頃こっちに?」


「さほど経ってはいません」


「ふぅん?」


 懸念はしたが、憂慮には届かない。


 失礼な妄念をミズキは振り払った。


 というか捨て去ったが正しく、普通に何を思うでも無いのは平常運転。


「ミズキ先輩!」


「先輩?」


「私は高等部の一年生ですので」


「はあ」


「セロリ先輩」


「何でしょう?」


「ご指導ご鞭撻の程を」


「面倒」


「人に教えられるほど修めているわけではないね」


 スラッと流すミズキとセロリ。


「むぅ」


 ジュデッカは呻くが、


「大いに悩め」


 とかく無情なミズキである。


 客観的に言ってジュデッカは美少女だが、


「だから取り入ろう」


 という気概のないミズキ。


 恋と言う物が箸にも棒にもかからない。


 セロリにしても、


「これ以上恋敵が増えるのは面倒」


 そんな計算に立脚する。


「先輩方はクールですね」


「面倒が嫌いなだけだ」


「美少女は遍く敵」


 身も蓋もないとはこのことだ。


「ふにゃあ」


 取り付く島もない。


 困惑と……少しの焦燥。


 ミズキは鋭敏に感じ取っていたが、「さて何者為るや?」との段階は、「考えすぎか」なんて楽観論に押しつぶされる。


 元々学院の性質が捻くれている。


 後ろめたさや後ろ暗さがあるのは何も珍しい話では無かった。


 生憎とミズキがソレを抱えたことは一秒も在りはしないのだが。


「……ふむ」


 で、問題のジュデッカも何某かの思惑はあるのだろうが、だからとて譲歩する必要も無く。


 陰謀論は一種の思考迷路であるため、放棄するのも一手段。


 特にミズキにとってあらゆる事象は取り返しがついてしまう。


 これはアドバンテージとして、かなり最上級に近似する。


「先輩方は何の催し物を?」


「メイド喫茶」


 端的。


「え?」


 ポカン。


 言葉に認識が追いつかない。


 ポクポクポク。


 チーン。


「メイド?」


「ああ」


「先輩も?」


「不本意ながら」


 諦観の境地だ。


 とはいえ線が細いので、容易に想像が付いてしまう。


 そのジュデッカの想像では、


「可憐なアルビノ男の娘メイド」


 がほぼ未来事項と重なる形で想起される。


「うへ」


 乙女にあるまじきだらしない恍惚の表情。


「何を想像した?」


「先輩のメイド姿です」


「……………………」


 だろうな。


 とは言わない……言えないミズキである。


「さて、それじゃぁな」


 灰色の髪を梳いて、ミズキとセロリは宿舎に戻る。


「良ければ好意的でありたいのですけど」


「さてな」


 けんもほろろなミズキに、


「むぅ」


 思うところもあるらしい。


「魔術を教わりたいなら講師に聞け」


「先輩になら身を捧げても……」


「不幸になるだけだ」


 謙遜ではない。


 むしろ、


「単純に事実だ」


 とさえミズキは思っている。


 その根幹にまで話す必要を認めていないが。


「ならこっちにも考えがありますからね!」


 宣言。


 誰に対してか。


 何に対してか。


 あるいは魔術としてのソレか。


「期待せずに見届けよう」


 ソレだけ言ってミズキはセロリと帰路についた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ