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第174話 光あれと申すなら影もあれと申す者19


「――太陽ザサン――」


 炎塊は吹き散らされる。


 既に領域は術式拡散が制圧しているため、この狭い空間ではどうあってもアドバンテージはミズキに傾く。


「――疾駆ギャロップ――」


 そこに別の宣言。


 ノーデンスだ。


 窓ガラスを割って街路に飛び出す。


 その意味をミズキも覚っていた。


「――燃焼バーン――」


 炎が広がって教会の中を埋め尽くす。


 その時には既にミズキも屋外に出ていた。


 疾駆ギャロップだ。


「寒っ!」


 とはいうもののさすがにノーデンスは放っておけないわけで。


 寒波に負けている場合では無い。


 街路を疾駆で走り抜けると様々な角度から魔術が襲ってきた。


「マジか……」


 と言いつつ、疾駆の緩急を付けて躱していく。


「――津波ビッグウェイブ――」


 面攻撃が来た。


「ちっ」


 舌打ちして魔術の切り替え。


「――術式拡散システムディフュージョン――」


 津波を消し去る。


「ていうか魔人いすぎだろ!」


 少なくとも見渡すだけで五人はいる。


 魔人の量産。


 無論技術的には無理だ。


 であれば別のファクターが要る。


 ワンオフ魔術。


 ノーデンスの物だ。






魔人構築デモナイジング






 人間を魔人に作り替える魔術。


 その破格性はある意味で戦略レベルでさえ及ばない。


 そのノーデンスがゼネラライズ魔術を行使する。


「――唯神誅伐メギドフレイム――」


「わお」


 驚いてみせるミズキ。


 火属性の上級魔術。


 高温度のプラズマを天から降らせる戦術級の魔術だ。


 もっともミズキの術式拡散は貫けないが。


「っ」


 ノーデンスに動揺が走った。


 その背の翼に揚力が働く。


 天高く飛ぶノーデンス。


「魔人だったのかよ……」


 愚痴も出る。


 空はさすがに飛べないミズキ。


「ていうか何で魔人が理性を?」


 たしかにノーデンスとは会話が成立した。


 魔人なら有り得ないことだ。


「何某かの魔術か?」


 その通りだが、


「では何か?」


 と問われれば両手を挙げるしかない。


「――唯神誅伐メギドフレイム――」


「――唯神誅伐メギドフレイム――」


「――唯神誅伐メギドフレイム――」


「――唯神誅伐メギドフレイム――」


「――唯神誅伐メギドフレイム――」


 周囲の魔人がよりにもよって火属性の上級魔術を重ね掛けする。


 超超高温度のビームが天から注いでミズキを襲うが、


「はぁ……」


 溜め息をつくミズキの術式拡散はその上をいった。


「何者だ?」


 そんなノーデンスの感想も分からないではない。


 当人に聞けば、


「別に」


 で終わるだろうが。


 無尽蔵の魔力炉。


 それがミズキの正体だ。


 魔神すら追いつかないレベルにある。


 あるいは影も踏めない……か。


 ほとんど魔術使いたい放題で制限というものが存在せず、ゼネラライズ魔術に込める魔力量もそれこそ文字通りの桁違い。


 ミズキの術式拡散を前にした人為魔術は正に、


「焼け石に水」


 といえた。


 説明する義理も無いが。


「叩くなら頭から」


 であれば魔術は必然決まる。


「――同風前塵ダストトゥダスト――」


 風が吹いた。


 魔性の風が。


 目に見えぬ魔性を指して人は恐怖と呼ぶ。


 天高い位置のノーデンスすらも飲み込む風の波濤。


 ゾクリとノーデンスの背中に悪寒が走り抜けた。


 塵は塵に。


 灰は灰に。


 ヒュオッと聞こえる風の音はおもいのほか軽やかで。


 しかし現象は破格。


 風であるが故に躱すことが出来ず、なのに見えないので対処も出来ず、なによりあらゆるものを塵に還すため防御すらも無効化してのける。


 魔王崇拝の枢機卿は塵へと還って大気に撒き散らされた。


 残る魔人の処理は簡潔。


「――術式拡散システムディフュージョン――」


 暴威の風が吹き、意識を取り戻す。


「えーと……え?」


 衆人環視は唐突に起こった魔術戦の意味が分からなかったらしい。


 まして唯神誅伐メギドフレイムまで出れば魔術の恐ろしさは手に取れるだろう。


「――――」


 混乱が場を支配したが、


「どうせ収まる」


 時間が経てば……ではあるが。


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