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第173話 光あれと申すなら影もあれと申す者18


 ギシィと音がした。


 教会の玄関。


 一般より一回り大きい。


 ソレの開かれる音。


「ようこそ迷える子羊よ。福音が、欲しいかね?」


 修道服を着ているがロザリオは付けていない。


 整った黒髪に淀んだ瞳。


「ああ、まずは挨拶を」


 一礼。


「小生はノーデンスと申す。この教会で神父をしている」


「ああ」


「お手前は?」


「ミズキ……という。エルダーの食客だ」


「陛下を呼び捨てるか。その不遜は中々のものだ」


「恐縮だ」


「治癒魔術に一家言あると聞いているが?」


「実際に第一王女が息災になったしな」


「さすがと言ったところか」


「さほど大層でもないがな」


 ミズキは首をコキコキ鳴らした。


「――鎌鼬ウィンドブレイド――」


「――自己固定セルフフィクシング――」


 攻撃と防御の魔術。


 どちらも淀みない。


 結果として教会の壁に斬撃の爪痕だけ。


「物騒だな」


「お前らほどじゃない」


「何か?」


「踏み絵みたいな言葉になるがお前は神を信奉しているか?」


「無論だとも」


「では魔王は?」


「無論、信奉している」


 神父……ノーデンスは淀んだ瞳の光をかき混ぜながら言う。


「世界を創った神も、世界を弄った魔王も、どちらも信奉して魔術師と相成る」


魔王崇拝デモニズム……」


「ほう。知っているか」


「知りたくなかったがな」


「いずれ君には勧誘をしようとしていた」


「その割には殺す気満々に見えたがな」


「あの程度で後れを取る様では新しい秩序は創れない」


「そのための犠牲か?」


「そうだとも」


 しっかとノーデンスは頷いた。


「そもそも君は魔術師を何だと思っているのかね?」


「魔術の使える一般人」


 コンマ単位で返答した。


「一般人か」


 何が面白いのか。


 ノーデンスは笑う。


「では君は魔術に誇りを持っていないのかね?」


「職人芸ではあるな」


「そう来たか」


 忍び笑い。


「お前は誇りを持っているのか?」


「そのための魔王崇拝だ」


「そんなご大層なものかね魔術は?」


「少なくとも何の力も無く、親のコネだけを引き継いで無能な王侯貴族が統治するよりは、まだしも背景に説得力があるが?」


「強い者が統べる社会……か」


「だとも」


 強くノーデンスは頷いた。


「で、俺も巻き込むと?」


「歓迎すべき逸材だろう」


「光栄だな」


「何故其処まで拒絶する?」


「大義が無いから」


 あっけらかん。


「あるとも」


「三流だ」


「ふむ」


 思案するノーデンスに、


「世界を征服して何が楽しいんだ?」


「人の新しい秩序の模索だとも」


「たかだか魔術がな」


 よくもほざいた。


 とは言わなかったが。


「君もお世話になっているだろう」


「否定はしない」


「ソレで尚魔王崇拝を否定すると?」


「面倒事が嫌いでな」


 一貫してあるミズキのスタンスだ。


「魔術師は暴力装置であれば良い」


「治癒魔術師がソレを言うのかい?」


「俺はへっぽこだからな」


 本当に……ただ……それだけ……。


「では排除せねばならないが宜しいか?」


「困る」


 率直。


「ではどうする?」


「殲滅」


 またしても率直。


「では被害者として抵抗しよう」


「口の回る奴だな」


 ミズキが言えた立場でもないが。


「――太陽ザサン――」


 宣言が聞こえた。


 天井からだ。


「――術式拡散システムディフュージョン――」


 ミズキは防御に回る。


 またしても宣言。


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