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第172話 光あれと申すなら影もあれと申す者17


「さすがに冷えるな」


 ミズキは外出許可を貰って一人王都に出ていた。


 いつものもこもこセーター。


 綿のズボンとジーンズの重ね着。


 しばし歩いて、


「急ぐことも無いか」


 喫茶店に入る。


 チョコレートをミルクと砂糖ありありで頼んで飲む。


「ほ」


 温まる。


「もうすぐ新年か……」


 新年祭。


 その準備に都民が駆け回っているが、一抹の不安も見て取れる。


 狂人。


 魔人。


 ついでテロとくれば、


「心穏やかに」


 の方が無理筋だ。


「神様に愛されてるな」


 甘い甘いチョコレート。


 だが、確かに愛されていた。


「――――」


 地の底から這い寄る様な不気味な声。


 魔人。


 血の色の瞳は正確にミズキを捉える。


 禍々しい翼。


 なるほど魔なる人とは良く言った物だ。


「では魔術師とは?」


 そんなことも思う。


 が事態は考察を打ち切らせる。


「――土刺剣山グラウンドフロッグ――」


「――術式拡散システムディフュージョン――」


 嘆息。


「いい加減にしろよ」


 というのも麦の国に来てから何度術式拡散を使ったか。


 自分一人ならどうとでもなるが、相手方は衆人を巻き込むからいただけない。


「――属性強化タイプエンハンスメント――」


「…………」


「――水流刺突トライデント――」


「…………」


 ミズキは余裕綽々でチョコレートを飲んでいた。


 水流刺突は風に巻き込まれて霧散する。


「ふむ」


 カチンとカップを受け皿に戻すと、


「…………」


 スッと手を振るミズキ。


 風が魔人を捕らえた。


 術式がほどかれていく。


 魔人は一般人へと戻った。


「とはいえ大火の前の一滴か」


 それも事実。


「疫病神だな」


 ある意味、王都のデモニズムを刺激しているのがミズキであるから。


 とはいえタイミングとしてどうか?


 ミズキが居なければ今頃王位継承権はドライが握っていただろう。


 しかも暴力装置として魔王崇拝を背景に。


 別にミズキは正義の味方ではない。


 倫理観もあまりない。


 それにしてはかしまし娘とのやり取りに以下略。


「モラルはあれど道理なし」


 一言で言ってそんな感じ。


 チョコを一口。


「で、こうなると」


 先を急ぐべきか?


「ただなぁ」


 外はシンシンと雪が降っている。


 見る分には綺麗だが、外に出ると猛烈な寒波に襲われる。


 ミズキにすれば荒行だ。


「なにかしら意思が働いているのかね?」


 チョコを一口。


「あまり変人とは仲良くしたくないんだが……」


『お前が言うな』


 に集約されるが当人いたって大真面目。


 サラリとチョコを飲んで勘定。


 店を出ると、


「ふ」


 吐く息が白くなった。


「暖房が欲しい」


 無理筋だ。


「糸と布で魔術陣を構築できんかね?」


 たとえば着衣内の気温を一定に保つ魔術とか。


 ゼネラライズ魔術なら有り得そうな物だが。


「学院に帰ったら研究室を訪ねてみるか」


 労力を惜しむための労力を惜しまないのはミズキらしい。


「にしても」


 ザクザクと雪道を歩く。


「雪は白色でない」


 とは絵描きの言葉だが、


「普遍的に白いよな」


 がミズキの意見。


 白い髪に積もった雪をパッパとはね除ける。


 目指すは教会。


 敵は本能寺にあり。


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