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第169話 光あれと申すなら影もあれと申す者14


 夜も夜中の暗黒よ。


 そんなわけでミズキは真夜中に紅茶を飲んでいた。


 一人だ。


 部屋を一つ貸して貰い、魔術陣でお湯を用意し、茶器を並べて、それなりに自分で準備を済ませる。


 茶葉を広げて待つことしばし。


 渋みの強い紅茶が出来上がった。


「使用人に任せるべきだったか」


 そんなことを思う。


 キィと音がした。


 蝶番。


 扉の開くソレ。


「よ」


「…………」


 ミズキの挨拶にコクリと頷きで返す少女。


 白銀の髪と瞳は違えようもない。


 ドライ。


 エルダーの第三子。


 つまり王位継承権第三位の天上人だ。


「…………」


 黙して語らず。


「茶ぁ飲むか?」


「…………」


 頷かれる。


 不器用な手さばきで茶を淹れる。


 飲んだドライは渋みに顔をしかめた。


「やっぱり駄目か」


 本人も分かってはいるらしい。


 こういう繊細さにかけては、いくら彼が人間離れしているとはいえ、容易に解決する問題では無かった。


「カノンは凄い奴だったんだなぁ」


「…………?」


 首を傾げられた。


「ミラー砦の魔術師」


「…………」


「今は王立国民学院の特別顧問」


「…………」


「茶道楽でな。アイツの淹れる紅茶は美味い」


「…………」


 今度はドライが紅茶を淹れた。


 魔力はミズキが提供したが。


「ほう」


 淹れられた茶は少なくともミズキのソレより五段階は上だった。


「美味いな」


 惜しみない賞賛。


「…………」


 ドライは赤面した。


「可愛らしいな。お前は」


「…………」


 ポーッと恋慕に逆上せるドライ。


「お前は俺が好きか?」


 王女殿下に対する言葉遣いでは無いが……まぁ今更。


「…………」


 コクコクとドライは頷く。


「俺の味方か?」


「…………」


 コクコクとドライは頷く。


「どの口が」


 とはミズキは言わなかった。


 とりあえず茶を飲む。


「ああ、美味い」


「…………」


 しばし茶に浸る。


「…………」


 目を細めるドライ。


 幸せそうだ。


 銀の瞳は幸福に酔いしれていた。


 真珠の方は何を考えているやら分からない。


 ミズキは白い髪を弄った。


「シルクの様だ」


 とかしまし娘は絶賛する。


「老人くさくないか?」


 と言うと、


「格好良い!」


 と主張する。


「ソレ言いたいだけだろ」


 と反論すると、


「じゃあ証明する!」


 とアプローチしてくるのだ。


「セロリに一日の長があるがな」


「…………」


 寂しそうなドライ。


 想い人から別の同性の言葉を聞けば宜なるかな。


「新年までは一緒に居るから安心しろ」


「…………」


 それはつまり新年を迎えると離れる証拠だ。


「…………」


 それがドライにはとても悲しかった。


「苦労性だなお前も」


 ミズキの苦笑い。


「けどま」


 茶を一口。


「新年迎える前に因業は断ちきらないとな」


「?」


 首を傾げるドライだった。


「テロリズムの犯人」


「…………」


「誰だか知ってるか?」


「…………」


 頷く。


「愛い奴」


 ミズキはドライの銀髪を撫でて梳かした。


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