表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/176

第167話 光あれと申すなら影もあれと申す者12


「んで」


「…………」


 意識を取り戻したフロン伯を椅子に縛り付け、自身も別の椅子に座った。


 前後逆に座り、背もたれに腕を安置する。


 気分的にはあまりよろしくもあらず……ついでにこんな尋問をして意味があるのかも悩みどころ。


 部屋は客間。


 ミズキに宛がわれた場所だ。


「二人きりで話がしたい」


「不潔です」


 とはアインの言。


 殴り飛ばそうかとも思ったが体裁が悪いので止めておいた。


 で、ミズキとフロン伯の二人きり。


「何故に謀反を?」


「何の話だ」


「役者には向いてないな」


 冷や汗が出ている。


「使用人を使って毒を盛ったのはお前か?」


「…………」


「是……か」


 溜め息。


「何故死なぬ?」


「色々ありまして」


 全く説明になっていなかったが、する気も無い。


 ある意味で彼の魔術特性は嫌な意味で政治的にすぎる。


「誰の差し金だ?」


「…………」


「少なくとも背景はある……と」


「…………!」


 黙してもバレては黙っている意味が無い。


「お前は娘が居たな」


「…………」


「で、ツヴァイと結婚させるハラか」


「…………」


「そこまでして権力が欲しいかね?」


「…………」


「なるほどな」


 だいたい分かったらしい。


 フロン伯が黙っていても意味なく背景を探る。


「で、お前はどうやって魔人になった?」


「魔人?」


「あー、そっか」


 先の件でもそうだが、魔術による魔人化は、その時の記憶を保持しないらしい。


「お前に処置を施した人間も覚えていないのか?」


「何の話だ?」


「すっ惚けているなら大したもんだ」


 すくなくとも兆候は読み取れない。


「とすると相手は……」


 政治のレベルでは無い。


「のか?」


 首を傾げてしまう。


 本当に魔術で魔人化が可能なら、王都はそのまま火の海だ。


「遠慮しているのか?」


 あるいは、


「他に思惑があるのか?」


 少し思考の袋小路。


「私はどうなる?」


「死ぬな」


「そうか」


 わからない話でも無いらしかった。


「苦痛は無いからその辺は安心しろ」


「今回のことは私の独走だ。できれば家族には無事を保証して貰いたいのだが」


「知らん」


 少なくともミズキの領域ではない。


「そう……か。そうだろうな」


 諦観が表情筋を支配する。


「お前自身はツヴァイを王位に?」


 それでは矛盾する。


 では何故ドライと内通したのか?


 そこが疑問だ。


 さすがにドライとてツヴァイに玉座を預ける真似はしないだろう。


 毒。


 と言えばアインからしてそうだった。


 では毒に長けたドライがツヴァイ信者の背中を押す。


「ホワイ?」


 意味不明だった。


 となるとやはり政治レベルでは無いのか?


 ある種のプロパガンダの結果か?


「フロン伯は神を信じているか?」


「魔術がその証拠であろう」


「だよなぁ」


 そこにミズキも異論は無い。


 ただ少し策謀する何者かが不気味ではあった。


 どうするよ?


 そう思った瞬間、


「――――」


 閃光がミズキとフロン伯の眼を焼いた。


 炎塊が突然部屋に撃ち込まれたのだ。


 声を発する暇も無い。


 爆発。


 熱と音と光とが乱気流と化し荒れ狂う。


 ミズキの客間は一気に吹っ飛んだ。


「あー……」


 とりあえずは無事なミズキだが、


「…………」


 さすがにフロン伯には辛かったと見える。


 こんがり焼けていた。


 窓があった場所から空を見る。


 射線上には何も無かった。


 誰も居なかった。


「いい加減にしろよ」


 そんな愚痴も出ようという物。


 場の混沌さ加減でいえばかなりのもので、熱風吹きすさぶ廃屋と化した部屋の中でこの世の不条理を叫びたくなるミズキだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 黒幕不明!解散! フラン伯がこんがり焼けた( ´Д`)y━・~~
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ