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第162話 光あれと申すなら影もあれと申す者07


「結局何だったの?」


 夜。


 ベッドの中。


 アインはミズキに尋ねた。


 それは先のミズキの不審さに対する疑問ではあったが、どちらかと云えば心配に属する懸念だった。


「何が?」


「食事中」


「?」


「お空とお話ししてたよね?」


「妖精と心を通じ合わせられるんだよ」


 嘘八百がペラペラと出る。


「何のお話を?」


「俺が狙われる理由」


「私の懐刀ですし」


「たしかに」


 そこからねじ曲ったのだろう。


 王族の思惑。


 貴族の思惑。


 それぞれあるらしい。


「今日会食に来ていた貴族……茶髪のオールバックはどなたで?」


「フロン伯ですか?」


「フロン伯……」


「何か?」


「多分背景の一部だな」


「っ!」


 絶句。


 さもあろう。


 貴族が王族を狙う。


 その短慮さは薄命だ。


 基本的に許されざる行為ではあるが、


「焼き討ちしますか?」


「証拠が無い」


 それも事実だ。


 というか、、ここまでやっておきながら自分が犯人だと名乗り出る方がむしろ剛毅だろう。


「どうするおつもりで?」


「誠心誠意話し合う」


 どこまでも軽薄さは拭えないらしい。


「危険です!」


「相手方がな」


「むー……」


「ってわけで訪ねてみるか」


「本丸に?」


「それは別にある」


「予想は?」


「さてな」


 ホケッと。


「お母様は大丈夫でしょうか?」


「俺は医者じゃない」


「そうではなく」


「そうではなく?」


「陰謀に巻き込まれたり……」


「今エルダーが死ねば麦の国は混乱に陥る」


 さすがにそのリスクは犯せないだろう。


「本当に?」


「お前は聡いのか鈍いのかよく分からんな」


「?」


 パレードの奇蹟は逆算できても今の会話からは何も汲み取れられなかったらしい。


 貴族がエルダーを至尊とし、その子どもを狙う。


 結果として得られる理論は、王族との共謀。


 アインは狙われる側だ。


 となればツヴァイとドライ。


 どちらかが貴族と結託したことになる。


 で、その上で自身の子どもを王位に嫁がせる。


 そういう趣旨だ。


 聞かれてもいないので説明はしないが。


「しかし」


 結論は一つ。


 たった一つのシンプルな答えだ。


「別の国の観光にしとけばよかった」


 本当にそう思う。


 まさか、


「へっぽこ」


 と呼ばれる治癒魔術一つでここまで騒ぎが大きくなるとは。


 仮に拒否した場合は陰謀が進んでいたのだろうが、


「水面の一石を投じる」


 はミズキの業だ。


「アイン」


「何でしょう?」


「お前は王になりたいか?」


「興味はありません」


「だよな」


「ええ」


 でも、と答える。


「私が長女ですから」


 王族の責務からは逃げたくない。


 そう言いたいらしい。


「明晰さはあるな」


 ミズキは苦笑した。


 ツヴァイはお粗末。


 ドライは引っ込み思案。


 であればエルダーがアインを選ぶのも必然だ。


「世の中は上手く回らんな」


「?」


 怪訝。


「少なくとも私はミズキに助けられましたよ?」


「おかげで暗殺が跋扈してるわけだ」


「そういうことになるのでしょうか?」


「他にあるまい」


 それにしても背景の深淵たるや覗き込むのも恐ろしい。


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