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第159話 光あれと申すなら影もあれと申す者04


「みゃあよう」


 新年会に向けて飾り付けと催し物の準備。


 楽しそうな都民だが、陰りは隠せない。


 魔人の出没。


 それが心的外傷なのだろう。


 血が出ないが息苦しい。


 酸素の供給が滞る。


「二度も三度も起きない」


 そう宣言できれば良いが、


「魔人注意報」


 とエルダー陛下の名で発令が出された。


 当然だ。


 此度の魔人が人為の延長線上であるならば、第二、第三は起こりうる。


 ので、


「こういうことか」


 ミズキは一人、もこもこセーターを着て冬の街を歩いていた。


 ザクザクと雪を踏みつぶす。


 アインは留守番。


 王属騎士が護衛に回っているので心配は余りしていない。


 此度の魔人が術式を持つなら、術式拡散システムディフュージョンで無力化も可能だ。


 で、


「どっちが狙われているのやら」


 と惚ける様に呟くミズキだが、


「嫌な汗をかくなぁ」


 程度には危機感も持ち合わせている。


「そもそも」


 とは原点回帰。


 最初の言葉はジュデッカだ。


「麦の国に来て欲しい」


 これに、


「是」


 と答えただけだ。


 当人は観光旅行のつもり。


 というか必要経費持ちで無料旅路のつもりだった。


「はあ」


 もこもこセーターの袖から手を出して息を吹きかける。


 体温が気体となって手を温める。


 雪。


 シンシンと降る。


「まずルナティックに襲われたのが有り得ない」


 そこで気付くべきだった。


 何某かの陰謀に。


太陽ザサン


 の奇襲はソレを裏付ける。


 であればその時点で逃げ帰れば状況は切迫していないはずだ。


「袖擦り合うも……か」







「ミズキ!」


「…………!」





 金色と銀色の髪の美少女。


 アインとドライ。


 二人と知り合い、縁を結ぶ。


「アインには泣いて貰うとして」


 物騒なことをミズキは言う。


「問題は」


 辺りの殺気には気付いている。


「――術式拡散システムディフュージョン――」


 とりあえず防御の姿勢。


「――――」


 狂気に満ちた集団がミズキを囲って襲い、風に触れるとバタバタ倒れていく。


「何がしたいんだろうな?」


 いい加減こっちの戦力を勘案しても良さそうなものだが。


 そうこうしている間にも、


「――――」


「――――」


「――――」


 狂気に満ちた人間は襲ってくる。


 特に脅威も覚えない。


 術式拡散に触れてバタバタ倒れて行くのみ。


「しっかし」


 大量の狂人を前にすれば、


「相手方の技量が分かるな」


 魔力のキャパシティが優れているのは否定できないだろう。


 魔力は体力から練られる。


 ここで不等価交換が行なわれるが、これを加味しても、


「中々根性のある奴」


 とのミズキの評価は実に正しい。


 単純に能力としての運用効率で言えばエネルギーロスが最も少ないのが魔術だが、それでも完全では無く人間としての限界は備わっている。


「自分が手前に出ないのも強みだな」


 襲ってくるのは狂化した人間だけ。


 その根幹は正体を見せない。


「別に良いんだがな」


 相手方の思考はクリアに伝わっている。


「術式拡散を維持して疲弊したところを叩く」


 それだけ。


 魔術師同士なら真っ当な戦術だ。


 如何せんミズキが真っ当ではなかったが。


「すんません。ココアを一つ」


 喫茶店に入ってココアを注文。


 だらける様に一服。


 無尽蔵の体力は尽きることを知らない。


 治癒魔術の一端だ。


 ソレと知る襲撃者でもないが。


 爆発音が鳴る。


 王城の方だ。


「敵は本能寺にあり」


 嫋やかにココアを飲む。


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