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第156話 光あれと申すなら影もあれと申す者01


「寒い」


 何時ものもこもこセーターを着て王都を歩く。


「新年間近ですね」


 王都民による街改造。


 新年祭の準備は着々と進んでいた。


 おなじくもこもこセーターを着たアインが嬉しそうに横に並ぶ。


 ドライはいない。


 寝こけていたため置いてきた次第。


 ミズキはドライの瞼を開いて瞳孔を探った。


 結果放置と相成る。


「王女殿下」


「アイン殿下」


「殿下の騎士」


「ミズキ様」


 二人は道行く人に噂されていた。


 病弱の陰りが無ければ、アインは快活で軽やかな美少女であるため、冬でありながら笑顔の温度は猛暑日だ。


 惚れる男子の一人や二人は出る。


 それは男女逆転してミズキにも言えた。


「ミズキ様……」


「わたくしが怪我したら治癒してくれるでしょうか?」


 色々と幻想は持たれているらしい。


「おモテになりますね」


「お前もな」


 シニカルに二人は笑った。


 何時ものことだ。


 論ずるに値しない。


「王族は新年会で何するんだ?」


「ダンスパーティと新年の謁見、それから宴会ですね」


「王侯貴族も大変だな」


 心にも無いことを口にするミズキだった。


「ついでに婚約発表しませんか?」


「応援しよう」


「ミズキとです!」


「嫌」


 一文字で終わった。


「じゃあ周囲から固めた方が良さそうですね……」


「情報戦か?」


「ええ」


「海の国のギフト殿下が黙ってないぞ」


「えー……」


 半眼。


「海の国の殿下と繋がりが?」


「あまり気にしてないがな」


「戦争して征服してミズキを婿に迎えます!」


「できるかぁ?」


 まず国境線を守るグラス砦を突破できるかが怪しかった。


 しかもその戦力の下地であるカノンが海の国側につくという暴挙。


 一切の勝率が弾かれない。


 南無三宝。


「しかし雪か」


 シンシンと降り積もる。


 曇天から舞い降りる様に幻想を覚えるのも宜なるかな。


「珍しいですか」


「南国育ちなもので」


 肩をすくめる。


「火属性の親和性があれば爆煙で暖まれるんだが……」


「侵略行為ですよ……」


「家屋が一棟丸焼けになっても国家は崩壊しないだろ?」


「安全神話が崩壊します」


「そこはまぁ寛大な御心で」


「生きたまま灼かれますよ」


「ソレなんだよなぁ」


 思うところ在りし。


「で」


「歩いていても何なので」


 二人は喫茶店に入った。


 ミズキはコーヒー。


 アインはチョコレート。


「これからどうします?」


「新年祭の催し物を探って興味を惹く対象を選別する。コッチにも観光とか座興とかがあった方が面白いしな」


「楽しそうですね」


 アインの顔もほころんだ。


「お前は城のイベントがあるだろ」


「えーと」


「新年祭は一人で回る」


「いやん」


「何がよ?」


「デートしましょうよう」


「俺はまだ平和に生きていたい」


 かしまし娘の暴走の引き金になりかねない。


 そんな懸念は確かにある。


「ミズキはゲイじゃないですよね?」


「よく言われるが不条理を超えて侮辱の域に達してるぞ」


「むぅ」


「腐るな」


 二重の意味で。


「で、結局……」


 と会話を続けようとしたところで、


「――――」


 爆発音が鳴り響いた。


 その寸前に閃光と衝撃波と熱波が。


 最後に壊された建物が散り散りになって吹っ飛ぶ。


「…………」


「…………」


 ミズキは冷静に。


 アインは瞠目で。


 それぞれ事態を憂慮する。


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