第152話 原因も結果もミズキ次第10
カチャカチャと食器が謳う。
ミズキとアインとドライは夕食を取っていた。
ミズキの客部屋で。
会食を頑なに拒むので、致し方なくこんな処置。そもそも食事にプレッシャーを持ち込む理由の方が彼には不条理だ。
「一緒に寝ようね?」
「お前はほんにホッとするな」
「?」
「こっちの話だ」
嘆息。
「警察の方はどうだった?」
「何も」
「トカゲの尻尾……か」
「泣いて英雄を斬る……ですね」
「単なる消費物だろ」
魔術師に言われたくなかろうが。
戦争。
戦力。
即ち国力の裏付けだ。
「で、結局対処療法となれば……」
「釣りですね!」
「何で嬉しそうなんだお前?」
「ミズキの格好良いところが見たいのです! ていうかミズキはつよつよですよね? それなのに消極的ですし!」
瞳にハートマーク。
「まぁいいんだが」
別段急を要することでもない。
命を狙われるのは不本意だが、
「殺意には殺意を」
もまた等価交換。
現象としては理不尽の域。
泣き寝入りするタチでもないのでコレはよろしい。
「なんかもういっそ王族の血を途絶えさせれば万事解決な気がするんだが。いや正味な話……」
「ミズキが国民に殺されますよ?」
「バレない様にやれば良い」
「むー……」
「…………」
半眼のアインとドライだった。
そこに、
「ミズキ!」
バンと扉が開かれる。
ミズキはパスタをフォークでクルクル巻いていた。
「聞いたぞ! 姉様とドライを危険にさらしたそうだな!」
「姉様には死んで貰うとはどの口が言ったかね?」
「そんなこと言ったの? ツヴァイちゃん」
金色の合わせ鏡。
「う……」
たじろいで、
「それはあくまで姉様が助からなかった場合を想定しての……!」
「王位を譲ってくれとも言ったな」
「あ~……」
これはアインも聞いている。
「…………」
ドライは淡々とコース料理を食べていた。
此方は此方で大物だ。
「お前様の方は大丈夫か?」
「大丈夫だぜ!」
「それもそれでなんだかな」
此処まで清々しいと一周回って疑う気が無くなる。
さっきまでの思案が馬鹿らしくてしょうがない。
「で、結局何の用事だ?」
「俺様の騎士になれ」
「却下」
二文字で破却。
「王属騎士にしてやる!」
「要らん」
「宮廷魔術師か?」
「要らん」
「軍務尚書!」
「働かなくて生きていきたい」
「だったら食客で雇ってやる!」
「何故食いつく?」
「騎士長をあしらったと聞いてな!」
「あー……」
「それほどの戦力ならば申し分ない!」
「…………」
パスタをアグリ。
「どうせ海の国とは休戦だ! 麦の国で存分に力を振るえ!」
「自分でヤレ」
ミズキは何処まで行ってもミズキの様だ。
「俺様の命令が聞けないのか!」
「まず」
疲労。
「食事中に大声出すな」
アインが責める様な目で睨んでいる。
「あ……ぐ……」
「ツヴァイちゃん?」
「何でしょうか姉様」
「お静かに」
「む……」
「せめて産まれる場所と時間が違えば」
無い物ねだりではある。
「どういう意味です姉様!」
「そう言うところ」
「ぐ……っ!」
「席を作るか?」
「そうしてもらおう!」
そんなわけで国王直系の王子三人と異邦人でテーブルを囲む。
およそ自分がいったい那辺に陣取っているのか……それすらも今の異邦人にはよくわかっていなかった。




