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第147話 原因も結果もミズキ次第05


「しかしあなたも化け物ですね」


「失礼な」


「いえ、言葉を選び間違えましたね。失敬」


 クスリと騎士は笑った。


 木製の小手と木剣。


 ミズキは相変わらずのフリーハンド。


「四十名強を相手しながら汗一つかかないとは。魔術の恩恵ですか」


「良く気付いたな」


「おや? 本当に?」


 実際に本当だ。


 ミズキは治癒魔術を自分自身にかけ続けているため、体力の損耗とは縁が無い。


「理解できない奇蹟。即ち神の御業だろ?」


 創造神プログラマーの意地悪。


 それが魔術であるのだから。


「なるほど」


 騎士はクスリと笑った。


「肉体練度も突き詰めれば魔術と拮抗しうると」


「さほど自慢できる芸でもないがな」


 ヒラヒラと手を振る。


 まさか、


「本当に魔術で体力を補填しています」


 とは言ってやらないミズキであった。


 口から先に生まれてきた子どもだ。


「剣は使えないのですか?」


「覚えが無くてな」


 基本的に無刀が主流。


 使えないわけではないが、大凡武器と縁が無い。


 そもそもが魔術師だ。


 どちらかと云えば信服を寄せるのは魔術の方。


 とはいえ治癒魔術以外の魔術を未だ使っておらず、尚且つ治癒魔術も使っていない様に見せかけてもいる。


「化け物」


 その評価も妥当だ。


「では参りましょうか」


「何時でもどうぞ」


 言葉の終わりと同時に騎士が加速した。


 一歩。


 二歩。


 それだけで超高速。


 素早い体術に剣の術理が乗る。


 薙ぎ。


 ミズキはバックステップ。


 騎士は更に加速。


 刺突。


 狙いは喉。


 皮一枚で避ける。


 ギリギリ……ではない。


 意図してのことだ。


 完全に前倒れになった剣を掴んで握りつぶす。


 メキィと木剣がへし折れた。


「…………」


 唖然とする見学者。


 アインとドライも此処に含まれる。


 ほぼ同時に膝蹴りが騎士の腹部に埋め込まれる。


「が……はぁ……」


 十全に勁が練られた一撃。


 硬気功も修得しているので、実は木剣程度なら躱す必要も無いのだが。


 ソレを言えば治癒魔術大前提なので意味の無さでは五十歩百歩


 閑話休題。


 体をくの字に折り曲げる騎士。


 謳歌。


 宣言。


「――突風ブラストブロウ――」


 強風が騎士を吹っ飛ばす。


 壁に叩きつけられ意識を失った。


「メディック」


 ポツリとミズキが呟く。


 衛生班が騎士を連れて行く。


「他に挑戦者は?」


 背伸びをして体を解しながらミズキが問う。


 王属騎士が一方的にやられたのだ。


 誰が敵うというのか。


「ではわしがやろう」


「おや」


 人体構造に精通している観念、挑戦者の肉体に惹かれて声が漏れた。


 研ぎ澄まされた刀を本身で抜いた様な苛烈さ。


「騎士長殿……」


 ポツリと兵士の一人が呟く。


「…………?」


 ミズキが男を指差して、アインに説明を求める。


「王属騎士の隊長です。王都では対一戦闘なら最強ですね」


「それは見れば分かるけど」


 ムキムキボディはイヤンな感じ。


「不足かね?」


「暇潰しにはなるな」


 不敵はミズキも同様だ。


「では楽しませて貰おう」


 騎士長は武具も防具も着けず、ミズキ同様フリーハンドで臨んだ。


「いいのか?」


「無の境地……そこに至った身なら分かるであろう」


 達人は獲物を選ばない。


 ましてリーチの短い武器ほど速度が出て強くなる。


 ではリーチの最短は?


 答えは簡単。


 素手。


 これに尽きる。


「では始めようか」


 騎士長から武威が発せられた。


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