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第144話 原因も結果もミズキ次第02


 パレードの奇蹟。


 それは王都民を激震させた。


 ミズキはいつも通り。


 部屋の魔術陣に魔力を送り込んで暖房を起動。


 茶を飲みながら雪景色を見ている。


 海の国と山を越えて北方へ。


 国家中央だが、海が遠く雪は珍しくない。


 そんな中で、


奇蹟師ミラクラー


 の都市伝説が流行っていた。


「なんじゃらほい?」


 紅茶を飲みながら尋ねると、


「私とドライちゃんを救った奇蹟の徒を指すらしいです」


 クスクスと朱色の唇をつり上げるアイン。


「…………」


 ドライの方は紅茶を飲みながら沈黙。


 失語症かと疑ったが、案外そうでもないらしい。


「抱いたら喘ぎ声を上げてくれるか?」


 と問うと、


「…………」


 真っ赤に恥じらってコクリと頷かれた。


 当然使用人が暗器を取り出して返り討ち。


 今日も麦の国は平和だ。


 そもそもドライが国の王女で、その手のネタがシャレになっていないという深刻なパラドックスは存在するも。


「後は方々の国境紛争が無ければな」


 海の国の方はあまり心配していない。


 大国の矜持として履行するだろう。


 というかそうしないと政治的に追い詰められる。


「名前も無い無貌の勇者」


「コズミックホラーじゃねえんだからよ」


 こっちの世界にもあるらしい。


「外なる神より創造神プログラマーの方が強いです」


「信じる信じないはこの際人の自由だしな」


「はい。奇蹟師の正体を誰かと信じるのも人の自由です」


「さいですかー」


 特別表情筋も動かさない。


 基本が無精で面倒くさがり。


 人より下に見られて安心し、罵倒されれば冷静になれる。


 当然英雄扱いは御免だった。


 牛車に乗ることさえ渋ったのだ。


 一応テロ対策に同行せねばならなかったため、渋々一緒に乗っただけ。


 結果は散々。


 テロに巻き込まれ、こっちの不手際で毒矢を穿たれる。


 治癒の再現無さをバラし、それを隠すために脳処理がオーバーフローする謳歌を唱えて運命分解ディスデスティニーまで行使した。


 踏んだり蹴ったりとはこのことだ。


 かなり真面目な話で。


 そもそも究極魔術はソレ一つ覚えるだけで、人格が破壊されかねない謳歌を必要とする。


 歌を謳おうもんなら図書館の貯蔵量でも足りないだろう。


 ミズキの場合は特例だが、他にもゼネラライズ魔術の究極に至っている術者はいるはずだ。


 彼ら彼女らがいかな脳演算を奔らせられるのか?


 人体限界と比較検討するに、とてもおぼつかない領域と言える。


「それでミラクラーさん」


「馬鹿にしてんのか?」


「じゃあかっこ仮って付けますから」


「かっこ笑でもいいぞ」


「捻くれてますね~」


「お前が言うか」


 運命分解で無かったことにしたはずの記録……事実を予想と予測の棒高跳びで乗り越える逸材だ。


 まぁ配置とタイミングと能力の機微で言えば、


「一番簡単な納得の仕方ではあるな」


 鼻で笑ってそう言ってやるミズキだった。


 他の予想も出来ないのか。


 そう侮辱する。


 意地が悪いが、元より生まれつき三回転半で生まれてきた子どもだ。


 この程度の応酬は別段苦でも無い。


 親が王都の銀行マンだというのに自分は一体何をしているのか?


 金本位制の世界でなら金と書類の交換が銀行の役目で、つまり書類が金銭の代わり……要するに貨幣の初歩と言える。


 もともと金と譲渡書類の交換が大陸の貨幣制度を支えているので、レアメタルの産出は経済に於いて大動脈となり、貨幣の裏付けとしても作用し、その上で国家の運営に一枚噛んでもいるのだ。


 そこまで経済に詳しくなくとも、


「まぁその内、銀行が国を運営し出すな」


 はミズキの予想の範疇だった。


 何はともあれ金を保有しているのが銀行であれば、経済力で最も強い組織と相成るのだ。


 閑話休題。


「で、その奇蹟師かっこ仮に何を求めてるんだ?」


「認めるの?」


「話が進まん」


 牛歩の如く。


「デートをしましょう」


「嫌だ」


「何でです?」


「寒い」


 本当に。


 ただそれだけ。


 雪は大好きだが、それ以上に寒波が嫌いだった。


「新年まではこっちに居るんでしたよね?」


「学院に居ても暇でな」


 かしまし娘と距離を取るのは良いリハビリになる。


「アインとドライを囲んでおきながら何を言うか」


 というのが使用人の通念だが。


 南無八幡大菩薩。


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