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第143話 原因も結果もミズキ次第01


「にゃああ」


「…………」


 黄金と白銀の瞳が闇の中。


 月光を反射して艶やかに彩る。


「脱ごっか?」


「いらん」


「…………」


「追随するな」


 白銀の子猫……ドライの凶行を止める。


「……?」


 その視線は、


「脱がなくて良いの?」


 と語っていた。


「みだりに淫らな女性は嫌いだ」


 かしまし娘とかかしまし娘とかかしまし娘とか。


 何となく九連続のくしゃみが幻聴出来た。


「何はともあれ寝るぞ」


「にゃあです」


「…………」


 キングサイズのベッド。


 客間の寝室。


 夜の照明を落として、ベッドに三人。


 色々と言い訳の出来ない状況ではあるも、ことここにおいてミズキの観念には諦観の装い新たに纏われて、しかも状況的にエルダーの肯定すら聞こえてきそうな勢いでもある。


「何だかな」


 ドッとベッドに倒れ伏す。


 中央がドライで川の字だ。


 疲れていたのか。


 ドライは速やかに寝息を立てていた。


 落下が早い。



 寝付きが良いのは褒められたことだ。


「で」


 と挟んで反対側。


 金色の髪と瞳。


「ありがとうございます」


「何がよ?」


「私とドライちゃんを助けてくれて」


「俺じゃなくて衛生兵に言え」


「お昼のパレードの奇蹟。アレ、ミズキでしょう?」


「衛生兵だろう」


 ――少なくとも自分は何もしていない。


 そんな主張。


 もちろん事実は改ざんしたのだが、ミズキの持つ今更な能力は在る意味大きな説得力となって場に落ちる。


「毒矢が刺さって致命傷だったんですよ」


「よくたすかったよなー」


 棒読みだった。


「私もドライちゃんも死ぬ寸前でした」


「だな」


「衛生兵は王属騎士の外に待機してた。狂乱した市民相手でゴタゴタ」


「まぁその隙を突かれたわけだから」


「うん。そこはわかります」


「なら良いだろ」


「けど何でですかね?」


「ご不満でも?」


「全く記憶が無いんだけど……どうしても論理の飛躍はミズキの処理能力に辿り着いちゃうんです。おかしいのはわかってます。事実の記憶から拾い集めるに……本気で意味不明の極致なんですけど、それでもミズキの能力が関係したい」


「…………」


 論理の飛躍。


 海の国のギフト殿下も所有している能力。


 王族とも為るとその辺は鋭敏になるのか?


「ミズキは何もしてない。何もしませんでした」


「実際にしてないしな」


「そうなんですよ。ただ……」


「ただ?」


「その時確かに私とドライちゃんはミズキに抱きついていました」


「火傷するぞ」


 火属性魔術とは縁が無いが。


「ミズキに抱きついていて、毒矢が刺さって、何も起こってないのに無事で……こうなると因果が結ばれていません」


「…………」


 ですよねー。


 運命分解ディスデスティニーは在ることを無かったことにするだけなので、記憶の捏造はまた別の技術が要る。


 例えば幻属性の一つなど。


 ミズキには無理筋だ。


「となると」


「なると?」


「ミズキが私とドライちゃんを治癒魔術で救って、皆の記憶を弄った……。そうは考えられませんか?」


「何を根拠に」


「ですから論理の飛躍です」


 女って怖いなぁ。


 ミズキの本心は正に其処だった。


 ギフトにしろアインにしろズカズカと人の秘密に立ち入ってくる。


 嫌ではないが、鬼札ジョーカーは隠しておきたいところ。


「そんな魔術があるなら俺は王族になっとるわ」


 乗っ取りも容易いだろう。


 要するに、一人一人丹念に記憶捏造で誤認させれば世界皇帝になれる。


「む」


 呻くアイン。


 ドライの白銀の髪を梳きながら自身の予測の穴を覗き見ているらしい。


 納得と不納得は当人の問題として、


「元より最後まで惚けきるハラ」


 ではあった。


「馬鹿なことを考えていないで寝ろ」


「どうします」


「お休みだ」


「ありがとうございますね」


 だから俺じゃ無い。


 そう言わなかった。


 沈黙は金だ。


 その程度の駆け引きはミズキとて持ち合わせている。


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