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第138話 三人の殿下は12


 袖通りのいい衣服に着替えるミズキ。


 何時もの制服やもこもこセーターとは縁が無い。


 ことほどさように自己の望まない方向に向かってかっ飛ばして行っている気がするのは決して錯覚でもないだろう。


「お似合いですミズキ様」


 感激した様な使用人の言。


 所謂、


「貴族然」


 とした衣装。


 丁寧に誂えられた糸と布の複合物。


 それがミズキの着ている衣服だ。


 金色を基調とした王族由来の衣。


「もうどうにでもしてくれ」


 そんなことさえ思う。


「わお」


 とはアイン。


「綺麗ね」


「恐悦至極に存じます」


 無論皮肉だ。


 通じるかどうかはこの際知ったことじゃないとしても、アイアンクローの一つはやっても罰が当たらないんじゃないかと思索に耽ってしまう程度には、彼は現状に納得の欠片も抱いていなかった。


「こんな可愛い子が男の子なわけがない!」


「それもどうよ?」


 最後のはミズキの思念だ。


「動きにくい」


 事実だ。


 何層にも重ねられた衣服。


 実は魔術陣が織り込まれており、場合によっては、


「最悪を回避する」


 その機能が付与されている。


 特定の宮廷魔術師による魔力の補填も万全だ。


「だがなぁ」


 とはミズキ。


「別に生きてるならソレで良いだろ」


 と前提を破綻させることを思う。


「可愛い!」


 アインが抱きつく。


「暑い」


「恋の温度ですね!」


 こうなると海の国に置いてきた……かしまし娘に何と言うべきか……あるいは例ふべきか?


 場合によっては麦の国が滅ぶ。


 それほど危険な三人娘だ。


「にしても」


 ミズキはとりあえず妄念のかしまし娘を追い払い、


「お前も趣味悪いな」


 飾り気のある衣服を纏ったアインを批評する。


「駄目ですか?」


「金がかかれば良いってもんでもないだろ」


 それは事実だ。


 真実とも言える。


「でもパレードですから」


 それもまた事実だった。


「何に巻き込まれたんだろな?」


 ミズキのテーゼ。


 というか不安。


「まぁいいじゃないですか」


 バシバシとミズキの肩を叩くアイン。


「殿下?」


「何?」


「ウザい」


「はぅあ!」


 乙女心にはキツいボディブロー。


 ゴフッと形而上で喀血して、そこそこ育っているふくよかな脂肪を見せつけるように仰け反ってショックを表わしてみせる。


「ミズキは私のこと……嫌いですか?」


「別に」


「好きですか?」


「……………………別に」


「何で間があるんですか!」


「別に」


 そんな二人だった。


 そこに、


「…………」


 煌びやかな衣服を纏ったドライが入ってくる。


 着替えの部屋だ。


 時間は正午で、食事は終えている。


「…………」


 ドライはミズキを見て、


「…………」


 赤面した。


「…………!」


 ギュッと抱きしめられる。


「ロリコン」


「不名誉だ」


 アインとミズキの応酬だ。


 とりあえずの体裁は整った。


「パレードねぇ」


「今更ですよ」


 電撃的にミズキの噂は広がっている。


 それを拝謁するのが王都民の意志。


 サボタージュも縁の内だが、


「仕方ないか」


 ミズキは吐息をついて諦めた。


「今更でもあるしな」


 それもまた事実だろう。


「何がでしょう?」


「…………?」


 アインとドライには分からないことではあるが、


「気にするな」


 端的に否定してのける。


 ここで「ネタばらし」も得策ではない。


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