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第136話 三人の殿下は10


 朝。


 眼が覚めると、室内は冷えていた。


 率直に言って政治的にかなり破格な異常事態であり、ミズキにとってはむしろフィジカルよりこっちの方が問題の責として重い。


「…………」


「…………」


「…………」


 三人の沈黙。


 ミズキとアイン……それからドライ。


 川の字で寝ていた。


「…………」


 ギュッとドライがミズキに抱きついている。


 体温は暖かいが、そゆ問題でも無し。


 色々と認識の改めに必要な状況が目の前に転がっており、しかも場合によっては良心の呵責に避けようがないフィールドである。


「ミズキ?」


 丁度良く起きたアインがこめかみを引きつかせている。


 ドライは服を着ていなかった。


 幼い裸体が見えそうになっている。


 容易に毛布を除けることも出来ない。


「…………」


 ミズキはまたドライに寝て貰って、


「くあ」


 欠伸をしながら布団から出た。


「これが寝取られ……!」


「何もしとらんわ」


 とはいえ説得力はあまりない。


「やれやれ」


 窓から雪景色を見ながらミズキは部屋の魔術陣に魔力を流し込む。


 一息分の間が在って、暖房が室内を支配した。


「冷えるな」


「ですねぇ」


「…………」


 三者三様らしい。


 扉がノックされる。


「どぞ」


 端にして要を得る。


 そんなミズキの返事だ。


「失礼します」


 慇懃に一礼。


 入室してくる使用人。


「そちらにドライ殿下はいらっしゃいませんか?」


「いるぞ」


 布団を指差す。


 全裸に毛布を巻いたドライが居た。


「あ……あ……」


 使用人の目には朝帰りに映ったらしい。


「ミズキ様?」


「その疑問符が怖いんだが」


「王家に連なる御人に手を出されるならば……」


「何もしとらん」


「天地神明に誓って?」


「神様に誓ってやるよ」


 魔術師は神秘主義。


 神の秘を主義とする生物だ。


「なんなら造物主プログラマーに聞いてみろよ」


「適いません」


「だろうな」


 別に畏れ入ることでもない。


「とりあえず」


 話題転換。


「紅茶と朝食を用意してくれ」


「承りました」


 そして、


「一時失礼」


 と使用人が去って行く。


「で、お前は何なんだ?」


 ミズキはドライに視線を送った。


「…………」


 ポッと紅潮するドライ。


 白銀の瞳には恋慕が宿る。


「ミズキ様は憎い人ですね」


「それをここでいうかぁ?」


 南無三。


 そんな様子。


「とにかく」


 うさぎにつの。


「今日はパレードがあるそうですよ?」


「へぇ」


 別に興味も無い。


 そんなミズキ。


「何を仰るウサギさん」


「?」


「ミズキのためのパレードです」


「さいでっか」


 そう返して、


「…………」


 沈思黙考。


「は?」


 まぁそうなる。


「俺が何かしたか?」


「王族の第一子を快癒させましたし」


「…………」


 川の石コロコロ。


 削れ、劣り、丸くなる。


 とは中々行かないのもミズキの卑屈さあっての所業だが。


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