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第135話 三人の殿下は09


「湯加減はどうですか?」


「良い感じだ」


「ようございました」


 扉越しの会話だ。


 その辺の分別はアインにはあるらしい。


 曰く、


「夫と為る人にも結婚前に裸体は晒せませんので」


 とのこと。


 そこまで分かっていながら好意を示すのは王族としてどうなんだと思わないでもないのだが、ここで逆説ツッコめばむしろ弊害を浮き彫りにしてしまう可能性まであるので、あえて彼は知らないフリをした。


 チャプンと湯に浸かるミズキ。


「結局お前が次期国王で良いのか?」


 ミズキは扉越しにそう尋ねた。


「ええ」


 どこか確信持ってアインは答える。


 首肯したが、扉越しな物でミズキには見えない。


「ツヴァイはあんな感じですし」


「だな」


 そこら辺は弁えている。


「ドライも人が良いので」


「なんかなぁ」


 懐かれ具合を思い出す。


 白銀の髪と瞳の鮮烈さは容易に忘れること能わず。


「一緒に寝たんですよね?」


「寝ただけだがな」


「ですか」


 苦い感情が混じっていた。


「何か?」


「いえ……その……」


 アインは言う。


「ドライも可哀想な子なので」


「贅沢できる身分でか?」


「ですね」


「…………」


 皮肉も通じないらしい。


「金色の髪と瞳を持って産まれてこなかった忌み子です」


「色が重要か?」


「基本的に麦の国の王族は金色が通念ですので」


「さいか」


「色々と下に見られて苦労されているんですよ」


「苦労……」


 チャプン。


「お前が王様になって立場を守れば良い」


「ですね」


 苦笑いが透けて見えた。


「で」


「は」


「お前は俺と一緒に寝るのか?」


「婚前交渉はしませんよ」


「生憎だったな」


「え?」


 ポカン。


「するんですか?」


「しない」


「強姦とか……」


「一国と争う真似は避けたい」


「ドライとは?」


「何も無い」


「ならいいのですけど」


「結局お前は何なんだろうな」


「?」


「王族の筆頭を暗殺……まぁ聞かない話じゃ無いが……」


「単純に邪魔なんでしょう」


「であるな」


 浴場のへりに肘をつく。


 ミズキは背伸びした。


「ミズキ様は私と結婚しますよね」


「生憎だったな」


 またその言葉。


「心に決めている人でも?」


「今は居ない」


「後日は?」


「予定もない」


「では私でも……」


「俺は卑屈だからな」


「?」


「下に見られた方が落ち着くタイプだ」


「宮廷魔術師には……」


「なりません」


「それでいいので?」


「海の国の納税者だ」


「その辺は交渉でどうとでも出来ますが……」


 ピチョン


 湯面が跳ねる。


「権力が苦手だ」


「ですか」


 嘆息。


「結局」


 ミズキが湯船で肘をつきながら言う。


「誰がお前を陥れてたんだ?」


「目下捜索中です」


「だよなぁ」


 調べて分かるならミズキが呼ばれもしなかったろう。


 何か裏が在るにしても、


「面倒事は避けたいんだが」


 それもミズキの思念だった。


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