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第131話 三人の殿下は05


 冬の朝方。


 暖かい布団の中でミズキは眼を覚ました。


 ぬくぬくとした動物繊維の布団は熱を逃がさず第二の肌と言っても差し障りのない防御性を得ている。


 基本彼は寝ることが好きだ。


 ときには講義の出席よりその場の睡眠を大事にする傾向にある。


 その意味では単純に偶然の結果だが。


 なにせ講義があろうと起きないときには起きないのがミズキだ。


 天蓋付きのベッド。


 キングサイズ。


 そこで、


「むに」


 と目を開く。


 白銀が飛び込んできた。


 こちらに真摯な視線を向けている。


 幼女だ。


 白銀の髪と瞳。


 美少女の範疇だが……、


「デジャビュ?」


 そんな思い。


 どこかで見た顔。


 が、思い出せなかった。


 白銀の髪は丁寧に梳かれて美しく、白銀の瞳はミズキのものと相似する。


 ミズキの場合は銀ではなく純白だが。


 いつの間にやら潜り込んでいた美幼女。


 同じベッドで朝を迎えるとなれば、


「つまりそういうことか?」


 とも思うが、


「俺は其処まで浅慮かね?」


 とのアンチテーゼも浮上する。


「…………」


 白銀の少女は起伏に乏しかった。


 この場合は性的な意味で。


 少女ではなく幼女。


 先述した様に幼い子どもだ。


 さすがに手を出せば不名誉は避けられない。


「誰だ?」


 問う。


「…………」


 ギュッと抱きしめてくる幼女。


「…………」


 名乗りもしなければ弁明もしない。


 ただ頬が染まっている。


 何かしら思うところもあるのだろう。


 大慌てで使用人が駆け込んできた。


「ドライ殿下!」


「…………」


 部屋には三人。


 ミズキ。


 幼女。


 飛び込んできた使用人。


「…………」


 空気が凍った。


 温度とは別の意味で。


「…………」


 スッとメイド服の袖から暗器が取り出される。


 使用人は護衛を兼ねているため、武闘も修めてはいる……らしい。


「えーと?」


 それはまぁミズキには意味不明だろう。


 使用人は、


「ドライ殿下」


 と言った。


 白銀の幼女を見る。


「…………」


 コックリと頷かれた。


 アイン殿下とツヴァイ殿下の妹御。


 つまりドライ殿下だろう。


 当然そんな御方と一緒のベッドで朝を迎えれば……それは地位的にも政治的にも繊細かつ剛胆な力学が働いてしまい。


「死ぬ覚悟は出来ていますね?」


「別に」


 無情。


 というより、


「危機感が無い」


 が正確だろう。


「…………」


 スッと暗器が飛んできた。


自己固定セルフフィクシング


 宣言するミズキ。


 とはいえ魔術の宣言ではない。


 そもそもミズキは風の属性だ。


 土の魔術は使えない。


 単純に、


「無敵」


 ということがバレないために、嘘の宣言をかましただけだ。


 魔術によって弾かれる暗器。


「お前がドライか?」


「…………」


 コクコクと頷かれる。


 幼女の髪が揺れて雪色の光を反射させる。


「よしよし」


 頭を撫でると、


「…………」


 気持ちよさそうに目を細めるドライだった。


「この鬼畜……!」


「何もしていない」


「何をぬけぬけと!」


「なんならドライの腹かっさばいて確認しろよ。誰もいませんから」


 両手を肩の位置まで挙げるミズキ。


 降参のポーズだった。


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