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第126話 麦の国は危険がいっぱい12


「外は寒いな」


 もこもこセーターを着ても、刺す様な冷気は慣れる物でも無い。


 寒さも脅威ではあるが、


「――――」


 それ以上に別の脅威が発生していた。


 人だ。


 都市の住人が襲いかかってきた。


月狂条例ルナティック?」


「天然魔術ではなかろうがな」


 虚ろな瞳。


 剣呑な殺意。


 嘆息。


「とりあえず防御魔術で身を守ってろ」


「先輩は?」


「叩きのめす」


 そこに躊躇は一寸もなかった。


 襲いかかってくる人間を端から対処するミズキ。


 人体構造の把握に長けている必然、その運用は最適化される。


 老若男女が襲ってくるが、適確に躱し、防ぎ、気絶させる。


「大丈夫なんですか?」


「ああ」


 とそこまで言って、


「――術式拡散システムディフュージョン――」


 ちょっと力を込めて術式拡散を放った。


「案の定……か」


 バタバタと倒れていく一般人。


「ほえ?」


 とジュデッカ。


「狂化の魔術か」


「月狂条例ですか?」


「名前までは知らんが効果は相似するだろうな」


 ミズキの知っているゼネラライズ魔術には該当しないが、ワンオフ魔術なら有り得ない話でも無い。


「要するに生物を狂わせて使役する魔術……」


「便利だな」


「先輩が言いますか」


 ジト目。


 ほとんどの狂化された住民を気絶させて、ミズキたちは馬車で護衛と合流した。


 火事の最中だが、ミズキの魔力供給が持続して、炎は少しも触れていない。


「どうします?」


「もうすぐ王都だっけか?」


「ですね」


「じゃ、先を急ぐか」


 そういう事になった。


「ホテルは?」


「犯人を捕まえて弁償させれば良いだろ」


「犯人……」


「警察の仕事だな」


 どこまでも我関せずなミズキである。


「狂化の魔術を人に向けるとは!」


 とか、


「命を惜しんで手を出せない……!」


 などのロマンチシズムとは無縁である。


「右の頬を殴られたら?」


 と問われれば、


「叩きのめす」


 で終わる感想。


「しかし馬車は温かいな」


 冷暖房完備。


「しかしこんな……」


 とは護衛の懸念。


 何かと言えば人の狂化だ。


 それがミズキを狙う以上、王都でも再発する可能性は高い。


 術式拡散でどうにかなりはするが、そも都市が混乱に陥るというのが憂慮されるべき事柄だろう。


「大変ですね」


 といけしゃあしゃあなミズキだが。


 その術式拡散を持っているため、あまり脅威でもないらしい。


 それを言えば、


「そもそもミズキにとっての脅威とは何なのか?」


 という話でもあるのだが。


「先輩は何でへっぽこって呼ばれてるんですか?」


「キャンペーン」


 本当にソレだけ。


 治癒魔術の限界は確かにある。


 サラダのドラゴンブレスで軍隊を一蹴されたら、そもそも治癒魔術で一人一人修復するにも時間はかかる。


 それが魔術師の鬼札……ワンオフ魔術となれば、それは確かにへっぽこだ。


「ま、やられる前にやるのが魔術戦の基本だしなぁ」


 ホケッと茶を飲みながらミズキは言う。


「うーん……?」


 ジュデッカは思案せざるを得ないらしい。


 ミズキの心理は分からない。


 が、それ以上に学院の通念が理解し難かった。


 ぶっちゃけるなら、


「ライオンをネズミと言い替えれば噛まれても死なずに済むのか」


 という銀河商人の御言の葉を借りる形と為る。


「猫と虎の子を見誤る事なかれ」


 もまた事実だろう。


 既にミズキは子でもないが。


「言わせときゃ良いのさ」


 ミズキは卑屈であるから下に見られた方が安心するタチではある。


 馬車は進む。


 とりあえずは王都に向けて。


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