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第123話 麦の国は危険がいっぱい09


「結局何某かの陰謀なんだよなぁ」


 紅茶を飲みながらホケッと。


 今日も今日とて馬車は行く。


「反王族派……か」


「あるいは正常主義者」


「アイン様が健在で都合の悪い勢力」


 見えない敵とは戦えないということだ。


 モンスターすら従えるとなれば、


「さてどうしたものか?」


「うーむ」


 唸って騎士は天井を見上げた。


「政敵は多い方ですし」


 ジュデッカも悲しげだ。


「テロ……か」


 他に無い。


 石畳の道を通過して馬車は都市へと向かう。


 今日はそこで一泊する予定だ。


「とりあえずは王都に着いてからだな」


 言葉にせずそう思う。


 要するに弱っているアイン殿下にミズキを宛がいたくない。


 それが敵の意図。


 ミズキにとっては敵と言えるか分からないが、少なくとも邪魔なのであろう事は憶測できる。


 諦めて帰れば安全は保証されるだろうが、


「それもどうかね」


 ミズキにも都合はある。


「しかし」


 ポツリ。


「馬車丸ごと破滅させるのは控えているのか?」


 要するに、


「ミズキを亡き者に出来ればそれで良し」


 なのだろう。


 無論、馬車の魔術陣が相対固定を具現していることも一因だろうが。


 こと馬車に乗っている限り、相手方の思惑は進められない。


 本来、土属性の防御魔術を突破するのは容易ではないのだ。


 ミズキは先に魔人の防御魔術を下級魔術で突破したことがあるが、アレは例外中の例外といえる。


 単純に、


「怪物染みている」


 との評価だ。


 覚えている人間はミズキの他にいないが。


 その点を鑑みて、相対固定を展開している限りでは襲撃しようにも徒労に終わる。


 だからこそ迎えが王族専用の馬車だったのだろうが。


「はふ」


 紅茶を嗜む。


「宮仕えも大変だな」


 護衛騎士への皮肉だ。


「陛下あっての我々ですので」


「でっか」


 特に反論もない。


 あまり権威に重きを置いていないミズキだ。


「わけわからん」


 が常。


 理解していないわけではないが、そもそも必要が無いので軽んじる。


 言ってしまえばそれだけだ。


「いっそ見捨てれば良いんじゃなかろうか」


 とも思うが、


「結局そうはならないんだよな」


 一人嘆息。


「何か思い煩うことでも?」


「それを聞くか普通」


 太陽ザサンで襲われたのだ。


 どう考えても陰謀に巻き込まれた側だ。


 しかも相手はモンスターまで手懐けていると来た。


 言葉にするなら、


「恨みはないが死んでくれ」


 と宣われた様な物だ。


 ミズキの特性上……死ぬのは無理でも相手方の嫌がらせも王都に近づくだけ正比例で激しくなるだろう。


 それを喜べるほど苦労大好き人間ではない。


 むしろ無精者。


 対極にあると言って良い。


「都市です。少し遅いですが間に合いましたね」


 騎士が言う。


 最上級ホテルまで馬車で移動する。


 王族専用の馬車。


 都民は萎縮し頭を垂れる。


「…………」


 ミズキの口がへの字に歪む。


 王族と言うだけで畏れ入る。


 その卑屈さが不愉快だった。


 まして馬車はともあれ乗組員はさほどでもない。


 ミズキ。


 ジュデッカ。


 御者と護衛。


 それだけ。


「何が面白いんだか」


 皮肉の一つも出ようという物。


 ある娯楽が言っていた。


「国家が分裂して個人になるのではなく個人が集結して国家となる」


 であれば国民あっての国家だろう。


 何故そこに優劣が出来るのか?


 ある種の命題だった。


 答えが出るのはまだ先の話だが。


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