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第119話 麦の国は危険がいっぱい05


「あー……温かい」


 今日も今日とて馬車は行く。


 王都目掛けてえんやこら。


 ミズキは茶を飲んでいた。


 一応水筒に魔術陣が刻まれており、紅茶の温度を調整できる。


 茶葉も水も不足無く。


 前者はホテルのサービス。


 後者は魔術の恩恵だ。


 真水に関するなら無尽蔵に魔術で調達できる。


 魔力消費もリーズナブルだ。


 で、相対固定も未だ健在。


 これは護衛を瞠目させた。


 先のミズキの魔力供給が未だ途絶えていないのだ。


 どれほどの魔力量か?


「まぁさほどでも」


 紅茶を飲んでのんびりと当人。


 別に褒められたくてしているわけでもないので、賞賛は軽やかに意識の下流へとどんぶらこっこ。


 昼頃に一つの村に着いた。


 街と街を繋ぐ中継地点。


 そこで昼食と相成る。


 河川に近い位置取りの牧歌的な村。


 麦畑と牧場がだいたい支配している土地。


 宿屋で食事だけ提供して貰う。


 熱々のチーズを纏ったパン。


 葡萄のジュース。


 川魚の串焼き。


 世俗的だが、立派な料理だ。


 有り難く頂き、予算経費で護衛が支払う。


「それでは」


 とのところで異変が起きた。


「大人しくしろ」


 武器を手に持った武闘派集団。


 山賊様御一行が村に現われる。


「…………」


 ミズキはホケッとソレを見ていた。


「白髪白眼のアルビノ……」


 ミズキを不躾に観察する山賊たち。


 護衛騎士が割って入った。


「山賊風情が陛下のお客に仇なすか!」


「お前らみたいに税金にあぐらを掻いて贅沢している連中に言われたくねえんだよ!」


「ご尤も」


 最後の発言はミズキだ。


 生まれが王族と言うだけで贅沢できる。


 生まれが貧困と言うだけで凍死できる。


 場所と時間が少しずれるだけで、子どもの立場は千差万別。


 ミズキが子作りをしない一因だ。


 あくまで側面の一つでしかないが。


 根拠としては薄弱だが理由としては立脚している。


「というわけで死ね」


 そして死んだ。


 ミズキではない。


 護衛騎士でもない。


 襲ってきた山賊だ。


 弱者に対する暴力で王属の騎士を討てるという考えが度しがたい。


「であれば」


 考えすぎかも知れないが、ミズキはとりあえず予防線を張った。


「――術式拡散システムディフュージョン――」


 魔力は何時もより少し多め。


 大体自分とその周囲を守る程度。


 が、コレが功を奏した。


 第二幕があったのだ。


 火球が襲った。


「おそらくだが」


 とはミズキの意見。


火球ファイヤーボール


 ではなく、


太陽ザサン


 だろうとのソレ。


 無論ミズキの術式拡散を打ち破れる道理も無いが。


 が、こうなれば話は別だ。


「高度に政治的な問題だな」


 魔術師は国の都合で動く。


 山賊をスケープゴートにして魔術で纏めて暗殺。


 であれば原因は政略に移る。


 無論魔術師が山賊稼業に目覚めた可能性もないではないが、


「誰かの意志で魔術師が策謀している」


 の方が自然だ。


 太陽の進行方向に視線をやるが、誰も居なかった。


 宣言も聞こえなかったので、距離を取っていたのだろう。


 なお、


「ミズキが邪魔」


 は十全に受け取った。


 ミズキが思うことは一つ。


「面倒は嫌いなんだが」


 それだけ。


 襲撃のソレでは無く、治癒魔術の本質のネタバレについてだ。


「なんだかなぁ」


 空を仰ぐミズキ。


「何故自分が暗殺されねばならないのか?」


 テーゼだ。


「そこまで恨みを買っただろうか?」


 とは棚上げだ。


 事実ミズキは麦の国に対して致命的な損益を与えている。


 他人事ではない。


 当人は自分を被害者と宣って豪語していたが。


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