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第117話 麦の国は危険がいっぱい03


 山賊が襲ってきた。


 どう考えても愚行だ。


 基本的に王家の馬車は最上級の護衛がつく。


 それも三人も。


 四頭立ての馬車でスペースは広く取られ、帯剣している魔術騎士三人が警戒する。


 その意味でこの不幸はかなりの無謀蛮勇にも近しく、およそ関係ないとは言え天におわす何者かも同情をくべるだろう。


「くあ」


 欠伸。


 ミズキにしてみれば脅威とも呼べないらしい。


 実のところ驚いてもいる。


 馬車には魔術陣が刻まれていた。


 冷暖房完備。


 それから信じ難いことに相対固定アポジットフィクシングまで。


 魔力を流して馬車全体を相対固定でガード。


「どこまで無茶苦茶だ」


 との意見。


 魔術陣は神話言語の謳歌を記号化した物だ。


 当然、強力になればなるほど魔術陣に必要な刻印のスペースをも場所を取る。


 冷暖房や生活の補助程度の魔術陣はミズキの寮部屋やカノンの宿舎にもあるが、ソレとコレとは比較にならないだろう。


 中級魔術の陣とも為れば多少なりとも場所をとる。


「何か?」


 とのミズキの問いに、


「魔術陣研究の最先端技術です」


 護衛騎士は誇らしそうに語った。


「はあ」


 ぼんやり納得。


 閑話休題。


 御者の馬の扱い巧みで、狼狽える馬をなだめて落ち着かせる。


 矢が襲ってきたせいだ。


「では失礼」


 騎士の一人が飛び出す。


 防御魔術をすり抜けて。


「?」


 眉をひそめるミズキだが、とりあえずは高みの見物。


 魔術騎士一人で山賊の相手。


 が、足し算が通じない。


 十人程度の山賊に、相対するは護衛の一人。


 山の中。


 天頂には太陽。


 鮮やかな青と、コケの匂い。


 それらを血臭が塗りつぶした。


 相対固定の維持には魔力が要るため、御者並びに護衛の騎士は魔術師だ。


 攻撃魔術をぶっ放して山賊相手に無双する。


「ま~そ~なるよな~」


 自殺行為も良いところ。


「さて、では」


 一人、生かされた山賊を見る。


 無事な一人だ。


「一人だけ残した。その意味は分かるな?」


「あ……う……」


 青ざめた顔で騎士を見やる山賊。


「何者の命令だ?」


「知らねえ!」


 山賊は叫んだ。


 抵抗……とは違う。


 本当に知らないのだろう。


 聞くに姿を隠した人間から大金を貰って、


「王家の馬車を襲うように」


 と頼まれたらしい。


 嘘で無いことを体に聞いて、それから殺す騎士。


 山賊は全滅した。


 治安維持も騎士の立派な仕事だ。


 商人が安全に行商を出来る用に努める必要がある。


「で、結局何なんだ?」


 もこもこセーターのミズキが事情を尋ねる。


「何なのでしょう?」


 それはまぁ有益な情報が無いためピースの欠けたパズルも同然で、簡潔に言って今此処で思惑しても無聊の慰め程度だろう。


「想定内としては……」


 騎士の一人が言う。


「反逆者でしょうか」


 要するに反王族主義。


「ネオコンか?」


「一番有力ですね」


「他には?」


「正常主義者」


 それもまたあろう。


 魔術はこの世界にとり軍事力の裏付けだ。


「あるいはアイン様の都合を批判する者……」


「えーと……」


 少し嫌な汗。


 ミズキとしては他人事で無い。


 要するに、


「麦の国の第一子アイン王女殿下の都合」


 はイコールで、


「殿下を健常に戻す可能性たる治癒魔術師の排除」


 であるわけだ。


 当然この場合の治癒魔術師はミズキでラストアンサー。


「俺が狙われてんのか?」


 そういう結論にもなる。


「可能性の一端として」


 空はこんなに青いのに。


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