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第101話 乙女の恋慕は凍らない17


「ただいまセロリ!」


「お帰りなさいませ殿下」


 いつもの寮部屋。


 ミズキとセロリと……それから暫定的なギフトの宿り木にもなっているのはこの際どういったリアクションをとるべきか。


 無論お忍び様のウールキャップと伊達眼鏡は外しているので、シルクのような白い髪と、情熱的な朱い髪が露出していた。


「疲れた」


 ベッドルームの寝床に倒れ込む。


「お茶を淹れよっか?」


「そうしてくれ」


「何が良い?」


「ハーブティー」


「はいはい」


 カフェインは取りたくなかった。


「ミーズーキっ!」


 ジャンピングハグ。


 ミズキの寝床に向かってルパンダイブのギフト。


「格好良いですねミズキは」


 言い尽くされた言葉。


 しかも色んな女子に。


 ギフトはその一人だ。


 大河の前の一滴……は言い過ぎだが。


「寝かせろ」


「眠れない夜になりますよ?」


「自慰くらいは出来るだろ」


「にゃあごう!」


 不満らしい。


 不機嫌な子猫の如く。


 しばらくそうしていると、


「あの……ミズキちゃん……」


「へぇへ」


「お茶が」


「ありがとな」


 蒼色の髪を撫でる。


 赤面。


 紅潮。


 恋する乙女は業が深い。


 そんな彼女からティーカップを受け取ってハーブティーの芳香を楽しんでアロマテラピー的な弛緩。


「ん」


 スッとすする。


「どう?」


「美味い」


「良かった」


 心底から安堵したのだろう。


 心を解きほぐす様なセロリだった。


 それがまた一々萌え。


「本当に美味しいですね」


 ギフトも端的に言ってのける。


「恐縮です」


 慇懃に謙虚。


「ほとんどミズキの嫁だね」


「立場的に一番近いのがセロリではあるな」


「はぅあ!」


 耳まで真っ赤になるセロリだった。


 骨折を治してからコレまで。


 ミズキを支え、養ってきた。


 その時間は貴重だ。


 他の誰にも真似できないセロリだけの御業。


 ある種の魔術に頼らない世界の奇蹟。


 貴重な一瞬を何度も積み重ねてきたミズキとセロリであるから。


「ギフトは側室で良いよ?」


 既に言った言葉だ。


「お前を抱くくらいならセロリを抱くな」


「はわわっ」


「むぅ」


 狼狽えるセロリ。


 不満げなギフト。


「茶も美味いしな」


 王女殿下には出来ない技だ。


「本当に失礼しちゃう」


 ギフトは拗ねてみせた。


「だったら期待するな」


 大凡の把握は可能だ。


 そうでなければギフトの行動力の裏付けが取れない。


「セロリ!」


「何でしょう?」


「ギフトにもお茶の淹れ方教えて!」


「……構いませんが」


 蒼の視線を白の瞳に振る。


「…………」


 チラリとも感情を表わさないミズキ。


 見切っているのだ。


 要するに。


「別に大事でも無い」


 パールの双眸はそう言っていた。


 事実にとり、


「ミズキちゃんならそうでしょうね」


 もセロリの意見ではあったが。


 そんなこんなで事態は進行する。


「運命ってなんだろな?」


 最近とみにミズキが顧みるテーゼだ。


 答えを出すのは自分。


 出せるのも自分。


 焦ってはいない。


 時間は無限にあるのだから。


 とりあえずハーブティーを飲んで喉を潤すことを優先するのだった。


 我今見聞し、受持することを得たり、願わくは如来の第一義を解せん。


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