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鯖物語(仮)

作者: 会津さつき

 これは、今より少し前の出来事。

 そう、いわゆる昔話なのである。

 時は遡ること数百年、時代の名を江戸と申す。武蔵の国よりほど近い、相模国にて起こりし出来事。

 そう、それは·····1人の鯖との出会いだった··········。




 そう書かれた原稿用紙を、俺は呆れるように見つめた。そして、それを後輩に突き返した。

「なんだ、この変な始まりをした物語は」

 全く持ってその通りだ。初めの4行は良しとする。時代小説を書きたいのだろうと推測する事が出来るが、ラストの5行目を目にした時。俺はその文章に殺意すら覚えた。

「なんだよコレ!時代小説になると思ったら、鯖との出会いなんて。ましては1人の鯖だぞ? 単位がもう訳わからんし……」

 1人の鯖ってのも気になる。一体どんな生命体なのか、ものすごく気になる。

「もう、先輩のモンスタークレームには困ったものですよ·····」

 いや、俺からしたらお前のその歪んだ想像力に一番困るよ。

「ってよりも、原稿はここで終わってるけど。この後はどうなるんだ?」

「ほよ? う〜ん·····」

 彼女は少し悩んでから、その関東平野の様に残念な胸を張ってこう言った。

「決めてない!」

 その言葉に俺は絶句したね。開いた口が塞がらないってのはこういう事を言うんだなってのを初めて実感したよ。いや〜良い経験をしたな〜。なんてくだらん事は言ってられない。

「さてはお前·····プロットも考えずに書いたろ··········」

 小説というのは、まずはプロットと呼ばれる基盤を作り、そこに物語や展開を肉付けしていくんだが·····。こやつはノープランで作ろうとしている。極稀にノープランで書くプロ作家もいるが、それは特殊な例だ。中の人の想像力が凄いとだけ言っておこう。

 しかし、ただでさえプロットを書かない彼女に呆れてる俺に、さらに彼女は満面の笑みで追い打ちをかけてきた。

「はい! なんかこの前見た夢を書いてみようかなって!」

 夢ってな·····それに内容も内容だぞ··········。

 鯖が擬人化される夢と言うのは、大抵おかしな話だが。最近だと細胞が擬人化される世の中だ。もしかしたら鯖も擬人化される事だって··········いや、絶対に無いな。なんせ需要がねぇ·····。

「じゃあ、聞くが。その夢の内容は覚えてるのか?」

「夢·····えっと·····そんな覚えてないです!」

 覚えてないのに小説化しようとしていたコイツを、俺は今すぐに処してやりたいぜ。

 しかし、アイデアとしては悪くは無い。正直気になる内容だ。

「書く気はあるのか?」

 こんな状況だ、一応確認しとかなくちゃな。

「書く気はありません!」

 即答だった。どれくらい早いか? そうだな。俺が彼女に聞いてから1秒も経過しなかったね。いや〜流石の俺もびっくりだよ〜。って、アホか俺!何真面目に考察してるんだよ!これは大変な事態なんだぞ!


 はぁ·····。それにしてもこいつには驚かされる。こんな奇想天外な行動でいつも俺を困らせる。その反応を楽しむ彼女。一体こいつは何を企んでるんだ··········。

「先輩? どうかしました?」

「お前な…」

 呆れる……こんな後輩が我が文芸部に入部して早半年が経過した。入部してすぐは真面目だった彼女も、だんだんとこんな調子になって……。だがしかし、なぜかこうやって馬鹿にされるのに抵抗が無い。

 それ即ちどういう事かって?

 答えは簡単だ。

『完全にコイツのペースに流されてる』って事だ。

 ついこの間だって、深夜に通話で雑談するし。俺の秘密についてしつこく聞いてくる所だってある。

 正直言っちゃえば面倒だ。しかしながら、その面倒ってのがまた良いんじゃないかって。

 現に、通話してる時も楽しいし……。

 今こうやって、言い合いをしてるのも楽しい。

 つまらん時間ならば、俺だってこんなのしないさ。

 今頃、文芸部幽霊部員として活動し続けるだろうし、極力コイツとの接触は控えるだろう。

 だが、俺はそうしてない。何故か?

『コイツと居る時間が楽しいから』

 愚問だったかもな。


「先輩、何ボケーっとしてるんですかっ」

 気付けば後輩が俺の脳天を後ろからチョップで攻撃している。

 後ろを見ると、気持ち背の小さな後輩が。俺を見つめている。何か聞きたそうにしているその顔を、俺は見つめながら答える。

「なんでもないよ」

「えぇ〜! 嘘だ!絶対なんか考えてた!」

 教えろ教えろと連呼する後輩を後ろに、俺は殺意すら覚えたあの原稿を手に取る。


「そういや、さっきっから気になってたんだが。この『しめ鯖っさー』ってのなんだ?」


 後ろを振り向く。そこには小悪魔な笑顔をした後輩がいる。そして悪魔の囁きの如くこう言った。


「秘密です♪」



~END~


最後まで、本作をお読みいただきありがとうございます。

本作は友人に依頼されて作成致しました。簡単な内容になってしまい申し訳ございません。


また、この場を借りて今後の活動についてご案内致します。

来年より私は受験シーズンを迎え、進学に向けて勉学に勤しむつもりでいます。

つきましては投稿頻度が大幅に低下する場合がございます。

只今執筆中の物語は大きく分けて4つ程ございます。投稿できる範囲で、更新並びに投稿が出来ればと思います。

詳しい情報につきましては、当サイトの報告の場とTwitterを用いて連絡を致します。あと暫くお待ち下さい。


では、私はこの辺で失礼致します。

ご愛読ありがとうございました。

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