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WALK  作者: 01(まるひと)
2/6

もう一人のメンバー

 現状は、


「なんで私誘われなかったんだろー」

「怪奇に突っ走って、蹴散らしちゃうからだろ」

「夏希だっておんなじじゃん!」

「夏希は言えば聞く。優華は言ってもあんまり聞かない。以上。証明終了。QED」

「ひどいっ」


 優輝と優華の二人が円卓を囲んでいた。


 優輝の方は学校の課題か、ノートをペンでつついている。

 優華の方はタブレットで怪奇のニュースを漁っている。


 ノリさんを含めた本部の面々は、夏希・正美・正哉の育成という名目で外へ出ている。監視兼補助がノリさんと麗奈というわけだ。

 普段麗奈と行動を共にしている優華は、ノリさんに「優華と優輝は留守番だ」と言われたことに対して不満を垂れていた。

 なぜ留守番かというと、先ほど二人が話していた通りだ。ならば、優輝も留守番と言い渡されたか。


 優華が余計なことをしないように?

 快活な彼女の行動が予測できないかつ、何をするかわかない以上そういう理由もあるとは思うが、彼女も彼女で高校生の身だ。至らないところは優華の自覚するところではあるが、それと同じくらい教養は行き届いてる自覚もある。優輝もノリさんも優華に限らず、本部のメンバーは学生の平均水準に行き届いているのは認めているため、そういう理由ではない。


 否、一人を除いて、か。


 優輝が本部へ留守番を言い渡された理由は、(優華が余計なことをしないように)ではなく、(本部のもう一人のメンバーが余計なことをしないように)だ。


 ここ数日、本部の集まりに参加せず、円卓に空席を残していた男。


「あァ? テメェらだけか。ノリはどうした」


 長身の男が不愛想を振りまいて会議室へと入ってきた。

 短い薄緑の髪を搔き、目つきの悪さを主張する三白眼で席に座る二人を睨むのは、怪奇討伐対策本部の8人目。本豪風真(ほんごうふうま)だ。

 加えてこの男は、ノリさんと優輝に次ぐ本部初期メンバーであり、問題児でもある。


「あ、風真ひさしぶりー」

「しばらく見なかったが、なにしてたんだ?」

「テメェらがちんたら野郎どもを殺してる時間に、俺は数十倍野郎どもをぶっ殺してたんだ」


 優華が控えめに風真へと手を振り、優輝がノートから目を離さずに風真に話しかける。

 そして風真の反応に、優輝は眼を(みは)った。


「どうした。ずいぶん上機嫌だな」


 普段は「うるせぇ」「黙れ」とシャットアウト。取り付く島もない風真の反応に、優輝は驚いたのだ。心なしか優華は嬉しそうにしている。


 驚いている優輝の言葉に、風真はまたも「あー」と前置きして会話に応じた。


「テメェらとは違って、何日も外に駆り出されてたからな。しばらくここにゃ顔出さねぇ」


 いつも来てないじゃんという指摘もあるようだが、その言葉を聞いた優輝と優華は違う意味で顔を見合わせた。


「風真」

「あぁ?」

「ノリさんが風真戻ってきたらでかい任務があるから、って言ってたぞ」

「殺すか」


 優輝の言葉を聞いて、声のトーンを三段階ほど落として、風真は指を鳴らした。


「ちょちょちょっと待ったっ! どこ行くの?」

「殺す」

「場所、私たちですら聞いてないけど」

「あァ?」


 今にも走り出しそうな風真に向かって、優華が静止の声を呼びかける。

 その声に向かって風真は「うるせぇよ」と悪態をつき、


「どうせあのうるせぇ場所にいんだろ」

「え?」


 風真にはなにが聞こえるというのか。

 風真には、雷の音が聞こえていた。

 晴天の空に走る雷の音が。


 会議室に風が吹いた。

 優輝と優華を置き去りにして。


 

 数十分後に、風真の怒号と共にノリさんが笑いながら本部に戻ってきた。

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