表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花々咲乱(かかしょうらん)  作者: 相上いろは
第12話~花の紐解く季節~
91/95

少女は微笑む

 その笑顔を見て、婀瓏孅は真剣に、これは夢なんじゃなかろうかと疑った。しかし、そうではないと思い、否定する。次に誰かが化けていると考えるが、そんな気配もないので否定。最後に、昨日の恐怖で心が壊れてしまったのではないかと疑い、その疑いを持ってルルノをじっと見た。そして、問い掛けてみる。


「あなた、どうしたの?」


 口にしてから、馬鹿なことを訊いたと思った。


「はぁ、何がでしょう?」


 想像通り、ルルノは問われたことが判らない。

 そんなルルノに、改めて問おうと色々と考えていると、婀瓏孅が訊ねるよりも早く、ルルノが言おうと思っていたことを思い出して口を開く。


「あ、昨日はごめんなさい。あと、ありがとうございました」


 ルルノは婀瓏孅に向かって深々と頭を下げる。だが、頭を下げられた婀瓏孅は、何について言われているのかさっぱり判らなかった。


「えっと。それって、何? 昨日ルルノを押し倒しちゃったことについて、かしら?」


 思い返してみるが、何か云われるとするとそれしか心当たりがない。だが、感謝される憶えはない。


「はい」


 それに対して、満面の笑顔。

 にこにこと笑う少女。しかし、何を指しているかは判っても肝心の理由は判らず、婀瓏孅は首を傾げる外なかった。これ以上深く訊ねて良いものか計りかねて、難しい顔で呻いてしまう。

 しかし、今まで一度たりと笑わなかった少女が笑うと、こんなにも違和感が強いものになるとは思っていなかった。というよりも、本気で別人なのではなかろうかと疑った程だから、相当なものである。それはそれとして感慨深かった。

 けれど、と婀瓏孅はルルノを眺める。笑顔とは花やかで好い。それに何より、笑うこと自体が悪いはずもない。なら、これは良しとしよう。そう思った途端、婀瓏孅は満足して声を上げて笑う。そんな婀瓏孅を見て、ルルノは何に笑っているのか判らなかったが、釣られてくすくすと笑っていた。

 夜が明けて、鐘が鳴り、また一日が動き始める。

 まだしばらく空を見ているというルルノと別れ、婀瓏孅は日課をこなしていく。婀瓏孅の足取りは、本人の想像以上に軽く弾んだものとなっていた。

 そして薬部屋に入った時に、婀瓏孅は思わぬ来客と出会(でくわ)すこととなる。そこには、図讖戯が立っていた。


「あら、どうかしたのかしら。あなたが自分から訪ねてくるなんて珍しいわね」

「あの少女のことで、少しばかりお伝えしたいことがありましてね」


 言われてぴんとくる。あの少女の豹変についてを、この情報屋は教えてくれようというのだ。確かにそれに、婀瓏孅は興味がある。



「そう。でも、何故そんなことを教えに?」


 問い掛けると、それを問われることが判っていた様に、笑顔を崩すこともなく理由を説明する。


「ちょっとしたご褒美なんて言うと、少し偉そうでしょうか?」


 その言葉に、婀瓏孅はキョトンとしてしまった。


「あら。なに、ご褒美なの?」

「その様なものです」


 ご褒美などと言われては、婀瓏孅も少し照れてしまう。要するに、昨日のやりとりは、既に図讖戯に知られているということなのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ