表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花々咲乱(かかしょうらん)  作者: 相上いろは
第0話~花咲く道の先~
6/95

ただいま

「さ。て。そろそろ上がろうか。ルルノもぼちぼちお師様に挨拶しなきゃでしょ」

「はっ! 忘れてました」

「お風呂ってそう云うとこあるよねぇ」

「ありました。先に出ますね」

「あぁ、私も出るよ」


 ぽかぽかと芯まで温まり、ついつい気が緩んでしまう。


「あんまり待たせると、お師様がお風呂入って来ちゃうかもだしね」

「それは申し訳ないですよ」


 笑い合って、戸を開け、脱衣所に入る。するとそこには、着替えを籠に入れて、今まさに着物を脱ごうとしていた女性が立っていた。


「あら」


 女性は、もう出てしまったのか、という顔で二人を見る。


「……わぁ、ほんとにお師様来た」


 その女性こそ、この屋敷の主、婀瓏孅(あろうせん)という妖怪であった。


「あ、先生。えーっと……もう一回入った方がいいでしょうか?」

「うーん、それも良いかなと思ったけれど、いいわ。部屋で待っているから、着替えたら来なさい」


 そう云うと、着替えを持ち直し、婀瓏孅は自室へと戻っていった。

 その背を見送ってから、二人は顔を見合わせた。


「お師様も焦れてたね。早く往ったほうが良さそうだ」

「ですね。あぁ、歩いて帰ってきたこと怒られるでしょうか」

「怒られるだろうねぇ」

「怒られますかぁ……」


 ルルノは肩を落とした。

 二人は身体を拭いて、てきぱきと服を着る。そして廊下に出ると、卦籤は自室へ、ルルノはそのまま、婀瓏孅の部屋へ向かった。

 部屋の前まで来ると、声を掛けてから、そっと引き戸を開ける。

 部屋の中では、婀瓏孅が腰を下ろし、お茶を啜っていた。


「先生。ただいま戻りました」

「良く戻りましたね。さぁ、お茶でも飲みなさい」

「ありがとうございます」


 飲んだお茶は、身体の内側からじんわりと癒やされるような、滋味に富んだ味わいだった。


 お茶を飲んで一息吐く様を、婀瓏孅はジッと観察していた。


「大きくなったわね。あなたがここに来て、もう十年ほどになるのかしら」

「えっと、たぶん、そのくらいでしょうか」


 拾われて、育まれて、もうそのくらいだろうかと、ルルノは感慨深く思った。


「随分と逞しくなったものね」

「そう、でしょうか」

「そうよ。歩いて帰ってくるのだもの」

「……まことにもうしわけございません」


 ルルノが頭を下げると、ふふふと、婀瓏孅は楽しげに笑っていた。


 この少女がこの屋敷に来たのは、かれこれ、十年ほど前。少女が十歳にならない頃のことであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ