届けられた荷物
「ルルノ、何が見える?」
問われてから、一旦セクタの方を見て、再度駆け上ってくる荷車を確認をする。
「二頭の牛と、それに引かれた荷車が見えます」
その答えに、間違いないなと一人納得したセクタが頷く。
「ルルノ、箒を片付けるぞ。荷物が来た」
言いながらセクタはルルノの箒を取り上げて仕舞いに行く。その後ろ姿を追いながら、婀瓏孅の言った荷物の受け取りというものがこれなのだと、ようやく気が付いた。
轟音は徐々に近付き、やがて門の前に飛び出す様に二頭の牛と荷車が躍り出た。それには、鯉の滝登りを思わせる爽快感があった。
牛と荷車がその勢いをどうにか殺し、門の付近に派手に、けれど緩やかに止まる。
ルルノは、止まったそれを見て目を丸くした。真正面に来て初めて、その荷車には少女が乗っており、二頭の牛を手綱で操っていたのだと気付いたのだ。牛と荷車がまるで一つの生き物の様に猛々しく動いているので、誰かが乗って運転しているということが思い付かなかった。
「よう、羚馳さん。お疲れ様です」
手綱から手を放して一息吐いた少女に、セクタが声を掛ける。
「こんにちはっす」
羚馳と呼ばれた少女は元気に挨拶を返し、荷車から軽やかに飛び降りてセクタの前に立った。
「ふぅ。うちの牛も結構頑張ったんすけど、結局日が随分と昇っちゃったっすねぇ。やぁ、申し訳ないっす」
空を見上げながらそう言うと、二頭の牛の背を撫でる。
羚馳と言う少女は、見た目なら年の頃は十八程だろう。容姿は人間のそれとほとんど違わなかったが、額の左右から突き出た一対の小さくも雄々しい角が、自分は人間でなく鬼であると誇らしげに語っていた。
人懐っこく笑う深い黒目に、頭の後ろで結った長髪。そして個性的な衣装。白衣に緋色の袴というその恰好は、まるで巫女装束のそれであったけれど、白衣には袖がなく、袴は股のある一般的な物であったが、裾丈が膝を隠す程度までしかない。少女は、そんな奇妙に変形した巫女装束を纏っていた。この装束、破れてそうなったという様子ではないので、恐らく意図してこの様な変わった形に作られた物なのであろう。
セクタと羚馳が話しているようなので、ルルノは二人から少し離れ、二頭の牛の顔を眺めていた。片方は一つ目で、片方は頭が二つある。どちらも普通の牛ではなく妖怪である。それが珍しいのでしげしげと眺めていると、二頭の牛はどこか恥ずかしそうに目を逸らした。だが、興味はあるのか、時折ちらりとルルノを見る。




