目覚め前
「では、そろそろお暇します」
それに、そう、と静かに婀瓏孅は応じた。
「お茶とお茶菓子を御馳走様でしたと、皐詠舞祷さんにお伝えください。大変美味しかったです」
言いながら、また一口茶を啜る。
「判ったわ。悪かったわね、突然呼び出して」
感謝を込めて、僅かに頭を下げる。
それを受け、図讖戯も一層にこやかに笑った。
「いえいえ。またお薬でも貰いに来ますよ」
薬を貰いに来たことなど一度もないだろうに。そう思うと、また婀瓏孅はくすりと微笑んだ。
それからふと、図讖戯は思い出した様に先程の木の板を婀瓏孅に差し出した。
「あ、そうでした。このお守りは迷子の彼女に渡してあげてください」
広げた手の上に、先程触れた軽い木の板が戻ってくる。
それを受け取りながら、まだルルノには見せない方が良いかも知れないと思った。
「ん、判ったわ。袋にでも入れて首にでも提げさせようかしら」
首からお守りを提げたルルノを思い浮かべ、二人は短く口元を綻ばせた。そして笑いながら、図讖戯も婀瓏孅の考えに肯定をして頷いた。
「それでは、また」
そう言ってから残ったお茶を飲み干して湯飲みを置くと、夢が覚める様に図讖戯の姿は消えてなくなってしまった。婀瓏孅も自分のお茶を飲み干し、盆を持って台所へと歩いていく。その表情は晴れ晴れとしていた。
ルルノが目を覚ますのは、この翌日のことであった。




