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花々咲乱(かかしょうらん)  作者: 相上いろは
第3話~既往繙く~
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情報屋

「先生。お茶をお持ちしました」


 どれ程の時間が経ったのかは意識していなかったが、気付けば横に皐詠舞祷が立ち、茶と茶請けを乗せた盆を婀瓏孅の横に置いていた。


「ん。ありがとう」


 その言葉を聞くと、皐詠舞祷は頭を少し下げてから去っていった。

 縁側で一人になると、ぼうっと空を見上げ、風を深く吸い込む。それから大きく息を吐いてから、思い出した様に口を開いた。


「まだるっこいやりとりは省くわね。あの人間のことを聞かせて」


 誰もいない自分の隣に、婀瓏孅は問い掛ける。すると、横で風が少し強く吹いた。


「おや。この茶菓子は上等なものですね。有り難いですね。あなたは良い物を用意してくれるから嬉しい限りです」


 と、婀瓏孅と茶の乗った盆を挟んだ位置に、どこからともなく現れた髪の長い男が腰を下ろす。

 着ている着物には、半分には春を、もう半分には秋を彩る花々の模様が描かれている。女物の様に艶やかなものであったが、この男はそれをほとんど違和感なく着こなしていた。


「これに見合うだけ、あたしの知る範囲のことをお教えしますよ」

「あなたが相変わらずの甘党で助かるわ。図讖戯(としんぎ)


 突然現れた男に驚いた様子もなく、婀瓏孅は会話を進める。

 男の名は図讖戯という。それで生計を立てているわけではないが、所謂情報屋である。

 細い目でにこにこと笑っているが、これは機嫌が好いというわけでもなく、この男はこの表情しか持ち合わせていない。


「えぇ、変わりませんでしょうとも。ですが、婀瓏孅さんは人の子を飼うなんて、随分と変わったことをしておいでで」


 図讖戯は悪戯っぽく笑いながら、穏やかに言葉を続けていく。


「過去を知りたいなんて、よほどのことじゃあないですか?」


 楽しそうな図讖戯に、婀瓏孅ははぁと小さく息を吐く。


「初めてなのだから、用心もするでしょう。飼ったことなんてないのだから」


 こちらも同様に、けれど少しばかり薄く笑う。


「そうでしょうね。そうでしょうとも。希な状況だと思いますよ」


 うんうんと頷いて見せてから、けれど、と指を立てた。


「とはいえ、境遇に気の毒だと思いこそすれ、生まれや育ちが特別変わっている子というわけではないですよ」

「あら、そうなの?」


 その言葉に、きょとんとした顔で応じる。

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