少女は眠る
倒れた翌日には、ルルノの顔色は血の気を取り戻して、全身の発熱も大分治まった。そして三日目に当たる今日の朝には、既に健康そうな色艶となってきていた。ただ、全身が痩せているのは相変わらずなので、とりあえず意識を取り戻させてから何かを食べさせないといけない。とはいえ、今はまだ起こせない。
「子供は厄介だわ」
ルルノはまだ呻いている。それは、恐らくは体の苦痛ばかりではない。ルルノの肉体と心は、眠ることで大きな傷を受け入れようとしていた。だからそれを待たなければならないのだと、婀瓏孅は弟子に説明した。
婀瓏孅は、眠るルルノの髪を掻き上げては、優しく指に絡ませて弄ぶ。
痛んでいた長い髪は随分と切り整えられ、今では肩に付くかどうかという長さになっている。だが、この毛もまだ毛先が痛んでいるので、充分に伸びたら切ってしまおうと婀瓏孅は考えていた。
「薬も良く効いたわね。あなたの体は確かに生きたがっているわ。こんなに苦しんでるというのに」
それからしばらくルルノの髪を撫でてから、婀瓏孅はルルノの額をそっと撫でて立ち上がる。
「さてと。飼うことになるわけだし、あなたについてを調べさせてもらうわよ」
そう言うと、婀瓏孅は眠るルルノに背を向けて、自分の部屋を後にした。
ルルノがこの屋敷に連れられて来た時から、徐々に徐々に気になっていったこと。この少女が何処から連れてこられたのか。どういう理由でこの子が選ばれたのか。それを調べることにした。
最初は、多少境遇が違ったところでルルノも他の人間と大した違いはないだろうと思っていたので、別段探る必要もないと思っていた。だが、この少女の体を見ていると、もしかするとこの衰弱した少女でなければならない理由があったのではないかと、玉蟾の意図を知る為の材料になり得る可能性を考え、なんとなく探りたくなってきた。
だが、これを玉蟾に問い詰めた所で拾ったとしか言わないだろう。だから、別のツテを使い調べる。
婀瓏孅は、袖の中から鈴を出すと、それを鳴らす。大きくはない音であったが、壁に反響し続け、音は屋敷中に染み込む様に響いていった。
鈴を鳴らしてから、短い時間の内に皐詠舞祷が現れた。
「お呼びですか」
澄んだ冷気を孕む笑顔を見せて訊ねる。




