7話 オリンポス十二神3(アフロディテ、ヘパイストス、ハデス、ポセイドン)
今回は今までと比べてとっっっても長いです。
短編が1つ書けてしまうのではというくらいの文字数がありますが、ご了承ください。
銭湯から女性が出てきた。
綺麗すぎる。
人間の域を越えた美貌。いや神だったわ。
それはもう、思わずこう呟いてしまう程に。
「......き、きれ「アフロディテさん、聞きました? この子僕より幸運値高いんですよ」」
......おい。
ヘルメスの野郎。人が見惚れてる時に。更には思わず「き、きれいだ」って呟いている最中に。なに筋違いな事いってやがる。
ヘルメスが手招きしている。
「なんてことを言ってるんだ!?」
ヘルメスが小声で、且つ迫力のある声で言う。「なんてこと」って何だよ。「きれい」って言っただけだぞ?
「どういう意味だ? 人が見惚れてる時に余計なことを言ったんだ。答えようによっては今この場で異能の力を試すことになるぞ?」
「アフロディテさんに『きれい』って言おうとしただろ?」
「それの何が問題なんだ。実際綺麗じゃないか」
「アフロディテさんに『きれい』って言うのが駄目なんじゃない。『ヘラさんとアテナさんには言ってないのにアフロディテさんに言う』のが駄目なんだ」
大昔、トロイア戦争と呼ばれる世界中を巻き込む戦争が起きたそうだ。
ある日、ある女神の結婚式が開かれたそうだ。そこへ招待されなかった不和の女神エリスがそれに憤り、宴席に金のりんごを一つ投げ込んだらしい。
誰がそれを食べるか、という話になった時、その場にいた一人が「最も美しい者に」と書かれている事に気付いた。
そしてヘラ、アテナ、アフロディテがこのりんごは自らに相応しいとして名乗り出た。だがりんごは一つしかないので3人は争いはじめる。
ここからトロイア戦争にまで発展したんだとか。
......え、俺って戦争の引き金引きかけてたの?てか神の影響力凄いな。
「結局、人間の中で最も美しい男と言われるパリスに『誰が最も美しいか』の判断を任せるんだ。これが後に『パリスの審判』と呼ばれる出来事。結局りんごはアフロディテさんが勝ち取ったんだけど、噂では『自分を選べば最も美しい女を与える』と言ってパリスを買収した、という話もあるんだ。僕はアフロディテさんはそんなことしないって信じてるけどね」
パリスの審判か。地球でも聞いたことあるな。ルーベンスの絵が有名だよね。
「と、に、か、く、トロイア戦争の原因を作ったのはエリスだとしても、それからは3人の内一人だけの美貌を褒めるのは基本的にタブーなんだよ」
あ、危なかった......。
「どうしたの? ヘルメス? コーキくん?」
「あ、いや、別になんでもないですよ」
「そう? ならいいんだけど。じゃあ、早速自己紹介するね。私は愛を司る美神アフロディテ。よろしくね」
美神か。通りでこんなに綺麗な訳だ。
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アフロディテ 女
種族 神族
職業 ―
レベル12210
HP 155900/155900
MP 195220/195220
物攻 69820
物防 69170
魔攻 81200
魔防 81420
敏捷 75721
幸運 5000
〈スキル〉
鑑定 偽装 気配察知 状態異常耐性15 HP自動回復14 限界突破
─魔法─
四大魔法10 無魔法9 魅力魔法
─ユニーク─
アイテムボックスα
〈称号〉
オリンポス十二神 愛を司る女神
────────────────────
〈愛を司る女神〉...愛を司る女神に与えられる称号。
「それじゃぁ恩恵をーーほいっと。ごめんね。私の異能はあんまり役に立たないかもだけど」
《恩恵〈アフロディテの寵愛〉を獲得しました。異能〈アフロディテ〉を獲得しました》
〈アフロディテ〉...スキル〈魅了魔法〉を得る。全ての生物に好かれやすくなる。異性に頼み事をすると高確率で承諾される。
おお、これは女の仲間ができたら渡そうかな。重要な人物って男が多いからな。ギルドマスターとか国王とか。
「では、次に行こうかの」
「え? もうですか? 私まだコーキ君に会って5分くらいしかたってないんですけどー」
「着いてくればいいじゃろ」
「あ、そうですね」
そしてまた転移する。
銭湯の次はどこだろうか。旅館かな?お土産屋さんかな?それとも帰りの電車かな?って温泉旅行かよっっ!!
ふぅ。何やってんだろう俺。
景色が変わってここは......、
「鍛冶場?」
「そうじゃ。ここには火と鍛冶を司る神が居てのう」
扉を開ける。
モワァァッ
生温い風が。
「暑いなぁ」
「そうじゃな。ヘパイストスー、今おるかー?」
ガイアが呼ぶと、奥から髭を生やした厳ついおっちゃんが出てきた。
「なんだー? 客かー?」
「そうじゃ」
「なんだよみんな揃って。おっ、誰だそのガキは」
「幸運値の高い人間を探していると言っていたじゃろう? 彼がその子じゃ。寵愛を与えて欲しくての」
「そいつがわしらと戦うっちゅう奴か。なんだよ連れてくるなら先に言っとけよな」
「念話しても答えなかったのはお前さんじゃろう?」
「そうなのか? 悪ィ悪ィ。鍛冶の方に熱が入っちまってたわ。今回の勇者召喚で聖剣持ちが何人か居てな。それを打ってたんだ」
念話?聖剣?
「念話ってなんだ?」
「言ってなかったかの。妾ら神は信頼できる者同士なら念話で会話できるんじゃ」
「正確には信頼値50以上、ね」
ガイアの説明にヘラが補足する。念話ねぇ。便利だな。確かに初対面の筈なのに「君がコーキ君か」とか「あなたがコーキね」とか言われてたな。あれはガイアがみんなに念話で俺の事を伝えてたのか。
「そうじゃ。お主とも念話できるようにしとくの」
そんなことが出来るのか。
《スキル〈念話α〉を獲得しました》
〈念話α〉...言葉を発さずに会話できる。有効範囲は無限。一度念話した相手に〈念話〉を与える。
〈念話〉...言葉を発さずに会話できる。有効範囲は無限。
「妾らが使っておるのは神固有の力だからの。人間に与えることはできんのじゃ。代わりに上位互換ともいえるそのスキルを与えておいた」
『聞こえるかの?』
『おお、聞こえるぞ。こんな感じなんだな』
頭の中というより、耳の中というか体の内側で直接音が発してる感じというか。リモコン操作型のスピーカーを飲み込んでスイッチを入れたらこんな感じだろうな、っていう感覚。
「聖剣はなんだ?」
「勇者にしか使えない剣だよ。クロノスの恩恵を受けた巨人族が聖剣を真似て作ったのが魔剣だ」
へぇ。
「まだ仕事の途中なんだ。ちょっと待っててくれるか? その間は向こうにある剣やら防具やらを見ていてくれ」
おっちゃん(仮称)が指さした方を見ると、沢山の武器や防具、魔道具らしきものが飾られていた。
「私達の武器や防具はほとんどヘパイストスが作ったのよ」
とアテナ。そうなのか。改めてみんなの装備品を鑑定してみよう。
ゼウスの雷霆(別名ケラノウス)
分類 槍
レア SSS
備考 刺すと感電死させる 槍先から雷を放つ
ヘルメスの杖(別名カドゥケウス)
分類 杖
レア SS
備考 魔法の威力10倍 威力制御不可
アテナの盾(別名アイギス)
分類 盾
レア SS
備考 攻撃無効
アポロンの弓
分類 弓
レア SS
備考 命中率増加 アルテミスの弓と共に使うと命中率100%
アルテミスの矢
分類 弓
レア SS
備考 命中率増加 アポロンの弓と共に使うと命中率100%
レアってなんだ?
《レア度のことです。F級、E級、D級、C級、B級、A級、S級、SS級、SSS級の9種類あります。SS級、SSS級のものは人間界には存在せず、SSS級のものは全部で2つしかありません。E級、D級のものが一般的で、A級になると国宝になることもあります。聖剣にはごく稀にS級のものがあります》
もう一つのSSS級ってのはなんなんだ?
《海神ポセイドンの持つ三叉の矛です》
鑑定できるか?
《できます》
三叉の矛(別名トリアイナ)
分類 矛
レア SSS
備考 矛先から水を出す
なるほどのぉ。
じゃあここに飾ってあるものも鑑定していくか。
青銅の盾
分類 盾
レア SS
備考 表面が鏡のようになっている
詳細 英雄ペルセウスがゴルゴンのメドゥーサを退治するときに使用した盾。ゴルゴンに直接目を見られると石化してしまう為、この盾でゴルゴンを映して戦ったという。
金剛の鎌
分類 鎌
レア SS
備考 不死無効
ヘルメスのサンダル
分類 靴
レア SS
備考 空中散歩
詳細 ヘルメスの使用したサンダル。翼が生えている。
アマゾンのナイフ
分類 ナイフ
レア S
備考 痛覚遮断
詳細 かつて存在した狩猟民族アマゾネスが、弓を引く際に邪魔になる右の乳房を切り取る時に使った。
パンドラの壺
分類 壺
レア S
備考 希望
詳細 かつてこの壺には、疫病、嫉妬、怨恨、復讐など、ありとあらゆる邪悪なものが封じ込まれていた。パンドラが好奇心で開けてしまい、それらが地上に飛び出してから人間はそれらの邪悪に苦しまれるようになった。慌てて蓋を締めると、中には希望だけが残った。
色々あるなぁ。「アマゾンのナイフ」の「アマゾン」ってなんなんだ?アマゾン川とかと関係あるのか?エンシー?
《アマゾンは大昔に存在した女性だけの戦闘民族です。アマゾンの語源は、右胸を切り取ることから「マゾン」=「乳房」「ア」=「~ない」という意味の言葉です。アマゾン川の語源はこのアマゾン族です。今ではアマゾン族とアマゾン川を区別するために、アマゾン族をアマゾネスと呼ぶのが一般的です》
へぇ。流石はエンシー。物知りだな。じゃあパンドラの壺ってのは?地球でも聞いたことがあるパンドラの箱ってのとは違うのか?
《pithos(=壺)と、pyxis(=箱)を混同してしまい、現在ではパンドラの箱、と呼ばれるようになりました。最後に残った希望について、様々な解釈があります。「疫病や嫉妬などの邪悪に悩まされている人々だったが、そんな中でも希望を持ち続けられた。」という前向きな解釈もあれば、「人々は、壺の中に封じ込まれ、取り出せない希望にすがって破滅の道を歩んでいく」という後ろ向きな解釈も存在します。》
深いなぁ。
「終わったぞー」
おっちゃんが一本の槍を持って出てきた。
「これが今打った聖剣だ。鑑定してみるか?」
「聖剣? 槍に見えるんだが......」
「勇者の武器の総称が『聖剣』なんだ。聖槍、聖弓、聖斧、全部聖剣だ」
ややこしいな。
聖槍
分類 聖剣
レア A
備考 魔族特効 自動修復
「銘とか付けないのか?」
「まぁそういう武器にはな。持ち主が付けることもあるし、持ち主じゃなくても、一定の人間が呼べばその名前になる。例えば持ち主が風魔法が得意なら聖剣ウインド、光魔法なら聖剣フラッシュ、みたいな感じでな」
そんなもんなのかな。
「あと、もう一つ、なんでレア度がAなんだ?」
「色々理由はあるが、一番はやっぱり持ち主との相性だな。ついこの間まで平和に暮らしてた奴らが最初からS級なんて持ってたら剣に使われちまう。それにうまく武器との信頼関係を築けたら持ち主とともに武器が成長することもある」
武器との信頼関係ね。鍛冶屋ならではの感覚な気もするけど。
「あ、そういやまだちゃんとした自己紹介してなかったな。わしは火と鍛冶を司る神ヘパイストスだ」
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ヘパイストス 35億5050万3522歳 男
種族 神族
職業 ―
レベル19950
HP 210090/210090
MP 344050/344050
物攻 92500
物防 95305
魔攻 85220
魔防 81030
敏捷 75804
幸運 5000
〈スキル〉
鑑定 偽装 危機察知 身体強化18 物理攻撃耐性12 自動回復11 鍛冶35 魔道具作成34 限界突破
─魔法─
属性魔法10 無詠唱
─ユニーク─
アイテムボックスα 神器作成
〈称号〉
オリンポス十二神 神々の鍛冶屋 火を司る神 鍛冶を司る神
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〈神器作成〉...神器を作ることができる。
〈神々の鍛冶屋〉...神の使う道具を作った者に与えられる称号。
〈火を司る神〉...火を司る神に与えられる称号。
〈鍛冶を司る神〉...鍛冶を司る神に与えられる称号。
「いつかお前さんの武器も作るかもしんねぇ。それまでにわしの武器に見合う実力を付けられればだけどな、はっはっは」
豪快な笑い方をするねぇ、ヘパイストスのおっちゃん。
「ああ、そん時はよろしくな」
「おっと、恩恵を渡すのを忘れていた」
《恩恵〈ヘパイストスの寵愛〉を獲得しました。異能〈ヘパイストス〉を獲得しました》
〈ヘパイストス〉...スキル〈鍛冶〉を得る。火を自由に操ることができる。物を加工したり造ったりするのが上手くなる。
鍛冶ね。おいおい自分で武器を作ったりしてみようかな。
「それでは次に行くぞ」
とガイア。
「次は、ーーーー冥界じゃ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「グルルルルルルル」
「グルウォォォォォォンッッ!!」
「グロォゥ グルゥ」
いきなり火の玉が向かってきた。
アテナが俺たちの前へ出て、盾を構える。
そういえばその盾攻撃効かないんだっけ。っていうか......
びっっっっくりしたぁぁぁーーー!! 何?いきなり?
見れば首が3つある黒い大きな犬が此方を向いて唸っている。
恐竜くらいの大きさだ。
「妾じゃ。この犬っころを鎮めろ」
ガイアがデカイ犬の近くに立っている兵士のような格好をした者に言う。てか犬っころて。
「!? が、ガイア様! 失礼しました。冥界には何のご用で?」
「門を開けてくれ。ハデスに会わせたい客がおる」
デカイ犬の後ろにはデカイ犬より更にデカイ、デカイ門があった。デカイデカイうるさいな。
ギシギシギシ
おおー。如何にも「門が開く音」って感じの音が鳴っております。
中は膨大な空間。赤黒い土の上に建物が建っており、漆黒の河が流れている。青白く若干透けている人間、白骨化した人間、ローブを着た人間、パッと見れば普通だが良く良く見ると胸に大穴が空いている人間、など、様々な人々が生活していた。平たく言えば幽霊、スケルトン、リッチー、ゾンビ、である。もっと簡単に言うとアンデットだ。
しかし、案外普通に生活してるのな。だけど門から俺らが入ってきたのに全く気にしてない様子だ。
《冥界に居る者は基本的に自我がありません。規則的な生活を淡々と行っているだけです》
そうなのかぁ。
「ではハデスの館へ行くぞ」
ガイアが示した方には、大きな館が。
途中、漆黒の河があったが、ガイアが土を操り橋を作ったので濡れずにすんだ。
あの河の水ってなんなんだ?絶対に普通の水でないことは確かなんだが。コーラかな?コーヒーだったらやだな(←コーヒーブラックで飲めない人)
《ステュクスの河といいます。河の水を浴びると、激痛に襲われます。精神が並外れて強い者は激痛を耐えきった後、不死身の肉体を得ますが、そうでない者は痛みにより死んでしまいます。なお、この時は痛覚遮断系のスキルは効力を発揮しません》
不死身になれた人は居るのか?
《歴史上一人だけ存在します》
お、誰だ誰だ?不死身ってことは今も生きてるってことだよな?会ってみたい!
《いえ、その人は亡くなりました》
な、何故だ!?
《それはーーーー》
なるほどねー。だからあそこの名前はああいうのか。
俺がエンシーとそんな会話をしていると、ハデスの館へ着いてしまった。
「ハデスの部屋へ案内してくれ」
「な!? ガイア様!? 畏まりました! 今すぐ案内致します!」
門番の男に連れられて、一つの部屋の前へやってきた。
門番の男がノックをする。
「ハデス様、いらっしゃいますか? お客様がおいでです」
「何? 客だと? わかった、今出よう」
中からダンディーな声が。
「お、ガイアじゃないか。こんなところへ何の用だ? まあ入れ」
「久しぶりじゃの。会わせたい坊主がおっての」
扉が開くと、黒髪に黒髭のダンディーな男が出てきた。
ガイアが俺について説明をする。
「コーキ、私は三大神の一人、冥界を支配し、生と死を司る神ハデスだ」
「三大神?」
「世界を構成する四大要素、大地、天空、海、冥界を支配する神の内、大地を支配する女神ガイアを除いたゼウス、ポセイドン、そして私が三大神とよばれている」
へぇ。なんか格好いい(小学生並みの感想)。
それでは三大神が一柱、冥界の支配者ハデスを、鑑定!
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ハデス 49億2530万3382歳 男
種族 神族
職業 ―
レベル33502
HP 388940/388940
MP 453000/453000
物攻 100000
物防 99242
魔攻 100201
魔防 104218
敏捷 90056
幸運 5000
〈スキル〉
鑑定 偽装 危機察知 身体強化25 物理攻撃耐性10 自動回復21 限界突破
─魔法─
四大魔法10 蘇生魔法15 主従魔法 無詠唱
─ユニーク─
アイテムボックスα
〈称号〉
オリンポス十二神 冥界の支配者 生と死を司る神
────────────────────
〈冥界の支配者〉...冥界を支配する者に与えられる称号。アンデットを操ることができる。
〈生と死を司る神〉...生と死を司る神に与えられる称号。
「兄さんは戦争において最も強いとされてる神なんじゃ」
「兄さん?」
「ハデスはわしの兄で、ポセイドンは弟なんじゃ」
「そういえばそんなこと言ってたな。それで、なんで最も強いとされてるんだ?」
「兄さんは冥界の支配者。よって死者を操ることができるんじゃ。つまり、敵の兵が死ねば死ぬほど味方の兵が増えると言う訳じゃな」
なるほど。敵を殺せば味方として復活させることが出来るということか。
............それってまるで......、
「まるで将棋だな。 ......何でもないです」
「スマートフォンは持って行かせんぞ」
「いや何で知ってんだよっ! 別にスマートフォンとともに異世界行く気ないから!」
「ともに」を平仮名で書くのがポイントです。......じゃなくて!
「何の話をしているんだ?」
「何でもないです。ごめんなさい」
「では早速、恩恵を渡そう」
《恩恵〈ハデスの寵愛〉を獲得しました。異能〈ハデス〉を獲得しました》
〈ハデス〉...スキル〈蘇生魔法〉を得る。冥界からアンデットを呼び出すことができる。アンデットを操ることができる。ハデスの兜を召喚できる。
「ハデスの兜」...漆黒の兜。被ると姿はもちろん身に付けているものも全て消える。この時、被った者が発する気配、音、匂い、全てが消え、触れない限り絶対に認識できなくなる。この兜の半径100メートル内に存在するアンデット系の魔物は全て灰になる(ただし自らが呼び出したものは除く)。
アンデットを全て灰にするって強すぎないか?
「ハデスの兜ってどんな物なんだ?」
俺がそう問うと、ハデスはアイテムボックスから漆黒の兜を取り出した。
「これがその兜だ。被ると問答無用で姿が消えるからな。普段は仕舞っているんだ」
まぁそりゃそうだろうな。
「ハデスからも恩恵を貰ったことだし、次に行くぞ。最後は海神ポセイドンじゃ」
「私もついて行っていいか? ポセイドンとはしばらく会っていなくてな」
「もちろんじゃ」
Here we go!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ザパーーン
海だ。神界には海もあるのか。でも水平線が真っ直ぐだ。
「おーおーなんだよみんな揃って」
海から男が出てきた。普通の格好で。水着とかウエットスーツみたいなのじゃなく、普通の格好なのである。しかも全く濡れていない。
「さっき念話で話したろう」
「ああ、そいつが。なんかパッとしねぇなぁ」
悪かったねパッとしなくて。
「なんで海から出てきたのに濡れていないんだ?」
「そんなの俺が海を支配してるからに決まってンだろう。陸より水中の方が快適なくらいだぜ」
じゃあ水中でも呼吸できんのかな。
「俺は今海底で昼寝してたんだ。ほれ、恩恵やるからもういいよな?」
《恩恵〈ポセイドンの寵愛〉を獲得しました。異能〈ポセイドン〉を獲得しました》
そう言って海へ帰ろうとする。
「いやちょっと待てよ! ちょ待てよ! ちょまてぃお!」
「なんだよ。あ、自己紹介がまだだったか。俺は海を支配し、水と馬、地震を司る海神ポセイドンだ」
全く。とりあえず鑑定するか。
────────────────────
ポセイドン 45億9600万9325歳 男
種族 神族
職業 ―
レベル53560
HP 542810/542810
MP 599200/599200
物攻 215200
物防 214961
魔攻 316550
魔防 317000
敏捷 99950
幸運 10000
〈スキル〉
鑑定 偽装 危機察知 気配察知 縮地 威圧 暗視 思考加速14 身体強化32 攻撃耐性21 自動回復34 騎乗20 限界突破
─魔法─
属性魔法20 主従魔法 無詠唱
─ユニーク─
アイテムボックスα 水中感知
〈称号〉
オリンポス十二神 海の支配者 水を司る神 馬を司る神 地震を司る神
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〈縮地〉...視界の範囲にならどこへでも一瞬で移動できる。
〈暗視〉...光源がない場所でも周囲の様子を確認できる。
〈騎乗〉...騎乗が上手くなる。
〈水中感知〉...海や湖の近くに居るとき、10km以内の水中の環境を把握できる。
〈海の支配者〉...海の支配者に与えられる称号。水を操ることができる。
〈水を司る神〉...水を司る神に与えられる称号。
〈馬を司る神〉...馬を司る神に与えられる称号。
〈地震を司る神〉...地震を司る神に与えられる称号。
......え?強くね?
「え? ポセイドン強くね?」
「そうじゃ。こやつはいつも海にいてのう。海の魔物に昼寝を邪魔されたらすぐ倒すんじゃ。しかもこやつにとっての『邪魔』の範囲が広くてのう。1km以内に入ったら倒されてしまうんじゃ。魔物も気の毒じゃな。とにかく、毎日100体以上の魔物を倒しておるから無駄に強いんじゃ」
へぇ。異能も鑑定するか。
〈ポセイドン〉...水を自由に操ることができる。水中でも呼吸できるようになる。水辺に生息する全ての生き物と意思疏通ができる。全ての馬と意思疏通ができる。自由に地震を起こすことができる。また怒るなどして強く興奮すると地震が起きる。三叉の矛を召喚できる。
「三叉の矛」...先が三つに分かれた矛。矛先から水を出すことができる。この時の水は、海水か真水か選ぶことができる。馬に見せると、その馬は矛の所有者に忠誠を誓う。
強ぇな......。
「三叉の矛から出す水を海水か真水か選べるのにはどんな意味があるんだ?」
「そうだなぁ。例えば、相手を切りつけてから海水出すとめっちゃ染みるだろう?」
しょうもねぇ。
「あとは海水って電気通すだろ? 〈ゼウス〉と併用すれば雷の伴った水で攻撃できる」
なるほど。それは便利だな。
「真水は、嫌いな奴に飲ませれば腹を壊させる事ができるな」
ああ、真水はミネラルが少なすぎるから体が拒否反応(?)みたいなのを起こすんだよな。
「即効性の軽い毒として結構役立つぞ? 捜査とかされても毒物が見つかる訳ないし、まさか綺麗すぎる水飲んだせいだとは思わないだろうからな」
確かに地球ならともかく科学の発展してない異世界において真水なんて作れないしな。
はぁ。これでもう神界からさよならか。来ようと思えば来れるんだけど。
「コーキ、自分を鑑定してみろ」
ん?なんだ?
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海馬航希 16歳 男
種族 人族
職業 学生
レベル1
HP 500/500
MP 250/250
物攻 500
物防 450
魔攻 250
魔防 265
敏捷 300
幸運 5000000
〈スキル〉
鑑定 思考加速1 並列思考1 限界突破
─魔法─
全魔法1
─ユニーク─
全知 言語理解 取得経験値100倍 必要経験値1/10 アイテムボックスα 念話α
〈異能〉
ヘルメス ヘスティア ヘラ ゼウス アテナ ポセイドン (アレス) (アポロン) (アルテミス) (アフロディテ) (ヘパイストス) (ハデス)
〈恩恵〉
オリンポス十二神の寵愛
〈称号〉
異世界人 勇者
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恩恵が纏まって〈オリンポス十二神の寵愛〉になってる!
「これから『ガイア』で生きていくにあたって、生きやすいようにもう少し妾からプレゼントがある」
《スキル〈偽装〉、〈無詠唱〉、〈共有〉を獲得しました》
〈共有〉...自分のスキルの一部を、パーティーメンバー及び主従魔法で契約した対象と共有できる。
「おお、ありがたい」
「偽装は必須じゃぞ? そんなステータスを見られたら騒ぎになるわい」
「わかってるって」
「空間魔法は入れておいた方が良いぞ。アイテムボックスだと知られたら勇者だとバレてしまうからの」
「そうなのか。サンキューな」
ガイアが魔方陣を展開する。
それが段々光っていき、光が収まった時にはそこは神界ではなく、綺麗な装飾が施された中世の王城だった。
......
............
..................
あれ?めっちゃ静かなんだが。周りに生徒たちいるよな?あ、シュンとユーナだ。
「おーい! シューン! ユーナー!」
返事がない。ただの屍のようだ。
あれ? なんで誰も動かないの?
その時、ガイアから念話が飛んできた。
『あ、下界の時間止めたままじゃった』
締まらねぇなぁおい!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
↓↓偽装後のステータス↓↓
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海馬航希 16歳 男
種族 人族
職業 学生
レベル1
HP 200/200
MP 150/150
物攻 200
物防 150
魔攻 150
魔防 165
敏捷 200
幸運 50
〈スキル〉
鑑定 剣術1
─魔法─
無魔法1 空間魔法
─ユニーク─
言語理解
〈称号〉
異世界人 巻き込まれた者
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第一章終了です。次回は登場人物紹介です。
ステュクスの河で不死身になった人について、気になる方がいると思います。次々回において説明します。
パリスの審判について。拙作では、
結婚式→トロイア戦争→パリスの審判
という順序だという設定になっていますが、実際のギリシャ神話では
結婚式→パリスの審判→トロイア戦争
の順番です。
実際のパリスの審判では、アフロディテだけではなく、ヘラとアテナもパリスを買収しようとしています。アフロディテは最も美しい女を、ヘラは君主の座を、アテナは戦いにおける勝利を与えると言いました。
パリスはアフロディテを選び、アフロディテは最も美しい女としてスパルタという国の王妃、ヘレネを与えます。
これにスパルタの国王は怒り、トロイア(パリスはトロイアの王子です)に戦争をけしかけました。これがパリスの審判からトロイア戦争までの流れです。
4話で触れたティターン十二神とオリンポス十二神の戦い「ティターノマキアー」やトロイア戦争、パリスの審判など、拙作の中で「歴史上の出来事」として扱っているものはほとんどギリシャ神話の出来事に由来します。作者の主観がないもの、正しいものが知りたいという方は是非調べてみて下さい。