4話 母なる地母神とステータス
今回は結構長めです。
シュン達は転送されたのに、俺だけ白い空間に残されてしまった。
「おい、ガイアとか言ったな。俺だけ残されたんだが、あんたのミスか?」
ガイアと名乗った老婆に尋ねる。神様に対してタメ口なのもどうかと思ったが、ひとり取り残されたということに少しばかりイラついていたのでしょうがない。
「いやミスではない。お主に話したいことがあってのう」
「ああ、そうですか。すみません」
「ほっほっほ。別に敬語で話さなくてもよいのじゃぞ?」
「そうか。ではお言葉に甘えて」
俺に話したいこと?なんだろう。
「それで、俺に話したいことってなんだ?」
「単刀直入に言う。お主には世界を救ってもらいたいのじゃ」
お、おう。としか言えないなぁ。簡潔すぎてわからん。ってか勇者召喚だろ?元々世界を救う為に喚ばれたんだよな?
「勇者召喚っていうぐらいだから、魔王とか邪神とかを倒すために喚ばれたんだよな?」
「そうじゃ。じゃが真の敵は魔王ではない。魔王はあくまで手下なんじゃ。お主のいう邪神のような存在が魔王の上におる」
「じゃあ魔王は他の勇者が倒し、俺には邪神を倒せというのか?」
「妾たちと協力してな」
妾たち?神様と一緒に戦うのか?
「なんで俺が選ばれたんだ?特別な力とか何もないぞ?ちょっと運が良いだけで。それに昨日まで骨折して病院にいたんだが」
「ほっほっほ。『ちょっと運が良いだけ』と申すか。まぁ良い。その話をする前に、お主がこれから行く世界について説明させてくれ」
これから俺が行く世界『ガイア』は、所謂剣と魔法のファンタジー世界だそうだ。
複数の種族がいて、大きく分けて人族、亜人族、魔族の3つ。
亜人族をさらに細かく分けると、エルフ、ドワーフ、ケンタウロス、獣人族、巨人族の5つ。
人族と魔族が対立していて、エルフ、ドワーフ、獣人族、巨人族の中のキュクロプスが人族に、キュクロプス以外の巨人族が魔族に味方している。そしてケンタウロスは中立の立場らしい。
それぞれの種族の特徴を挙げるとこんな感じ。
エルフ...魔法が得意。寿命が長く、1000~2000年ほど生きる。美形で背が高い。耳が尖っている。
ドワーフ...力が強く、鍛治が得意。背が低いのが特徴。
ケンタウロス...腰から下が馬、腰から上が人間という、半人半馬の種族。知力に優れ、弓が得意。寿命が長く、1000~2000年ほど生きる。
獣人族...耳としっぽが生えている種族。犬人族は犬耳、猫人族は猫耳、といった具合で、種族によって耳としっぽが異なる。敏捷に優れ、戦闘が得意。
巨人族...「巨人」の名に相応しく、体長は約十メートルもある。知力に欠けるが、圧倒的に力が強く、鍛治が得意。
ファンタジー世界なだけあって、ステータスの概念がある。〈スキル・鑑定〉か、ステータスボードというホワイトボードのようなものにステータスを写し出す魔道具がないと自分のものでさえステータスは見れないようだ。
スキルにはレベルがあるものがあり、、レベル1が初心者、レベル2~3が中級者、レベル5~6が上級者、レベル7~8が超上級者、レベル9が人外で、レベル10が神、だそうだ。
魔法は無魔法、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、光魔法、闇魔法、回復魔法、空間魔法、主従魔法、召喚魔法、生活魔法、蘇生魔法、魅了魔法、の14種類あるらしい。
通貨の単位はヘル。商売を司る神ヘルメスが由来。鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の五種類の通貨があり、
鉄貨=100ヘル=100円
銅貨=1000ヘル=1000円
銀貨=10000ヘル=10000円
金貨=100000ヘル=100000円
白金貨=1000000ヘル=1000000円
の価値がある。通貨は大陸で共通。
「なるほど。正にファンタジーだな」
「じゃろう?」
「あ、時間の単位を聞いていなかったな」
「時間の単位は地球と同じじゃ。一年365日、一月30日、一日24時間、一時間60分、一分60秒じゃ。地球と同じにした方が管理する側としてわかりやすいからのう」
「へぇ。それで、最初の話に戻るが、なんで俺なんだ?」
「それはお主のステータスを見れば一目瞭然じゃ。ちょっと待っての、今〈スキル・鑑定〉を渡すからのう」
そう言うとガイアはおれに向かって手を向けた。
「譲渡」
ガイアの手から光が放たれ、俺に吸い込まれる。暖かい飲み物を飲んだ時のような、体の芯が暖まる感覚をおぼえた。
「これでお主も〈鑑定〉が使えるはずじゃ。『鑑定』と頭の中で唱えてみるのじゃ」
「わかった。因みに平均ってどれくらいなんだ?」
「一般人のレベル1の平均数値は10じゃな。勇者の場合は300くらいじゃぞ」
鑑定。そう念じると頭の中に文字が浮かんでくる
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海馬航希 16歳 男
種族 人族
職業 学生
レベル1
HP 500/500
MP 250/250
物攻 500
物防 450
魔攻 250
魔防 265
敏捷 300
幸運 5000000
〈スキル〉
鑑定
─ユニーク─
(全知) 言語理解 取得経験値10倍 アイテムボックス
〈称号〉
異世界人 勇者
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ふむふむ。HP500ね。物攻も500か。魔攻は少なめか。ふむふむ。
......。見間違いか?ゴシゴシ(目を擦る音)。
............は!?幸運500万!?やっば。チートじゃんチート。だからあんなに宝くじ当たったのか。
「これでわかったじゃろう?お主は神をも凌駕する運の持ち主なのじゃ」
「わかった。わかったよ。でもいくら運が良くても邪神には勝てないだろう?」
「実はのう、幸運の数値に関しては妾ら神がいくら頑張ったところで上げることができないのじゃ。レベルアップしても幸運だけは絶対に上がらない。他の数値は〈成長率増加〉なり〈身体強化〉なり〈魔力増強〉なり渡せばどうにかなるんじゃが」
「なるほど。幸運値の高い奴を探してたら俺が見つかったということか。」
「そうじゃ」
あと、〈鑑定〉はわかるが他の4つのユニークスキルはなんだろうか。
「なぁ、ユニークスキルが4つあるだろ?あれはなんだ?」
「鑑定してみたらわかるとおもうぞ」
なるほど。せっかく貰ったんだもんな。では早速、鑑定!
〈全知〉...あらゆる知識を持つ人格を所持できる。
〈言語理解〉...世界『ガイア』の公用語を話す・読む・書くことができる。
〈取得経験値10倍〉...魔物を倒したり、訓練したりした時に得られる経験値を10倍にする。パーティーメンバー、主従魔法で契約した対象にも効力を発揮する。
〈アイテムボックス〉...異空間に物を保存できる。内容量は無限。ただし生物は保存できない。
じゃあ称号も鑑定するか。
〈異世界人〉...異世界から召喚された者に与えられる。スキル〈言語理解〉を得る。
〈勇者〉...神に勇者と認められた者に与えられる。スキル〈取得経験値10倍〉、〈アイテムボックス〉を得る。
なるほどなるほど。
「なぁ、〈全知〉ってスキル、なんでかっこがついてるんだ?」
「それは、ここでは効力を発揮しないスキルだからじゃ」
なるほど。多分ここは、次元の狭間的な空間だもんな。
「なぁ、〈アイテムボックス〉って生物は保存できないんだろ?」
「そうじゃが?」
「なぁ、それって、薬草とかも保存できないってことか?」
「いや、薬草とかの植物は保存できる」
「そうか、でも虫は保存できないだろ?」
「その通りじゃ」
「なぁ、なら植物型の魔物は保存できるのか?」
「いや、保存できない」
「じゃあ食虫植物はどうなんだ?」
「保存できるぞ」
「なぁ、保存できるものと保存できないものの区別ってどうやってつけるんだ?」
「..................」
「なぁ、教えてくれよ、なぁ」
「..................」
「おーい、ガイアさーん」
「めんどくさい子だね。これでいいじゃろ」
そう言うとガイアはおもむろに手を俺に向け、
「譲渡」
光が入ってきてまた体の芯が暖まる感覚をおぼえる。
「鑑定してみるのじゃ」
鑑定!
〈アイテムボックスα〉...異空間に物を保存できる。内容量は無限。異空間の中の環境を個別に設定できる(時間停止、時間加速、冷凍、冷蔵、保温など)。また、魔物や動物の死骸を入れると解体を、水と必要な材料を入れるとポーションを自動で作ることができる。魔道具や武器、防具などの作成はできない。
おお、進化してる。「ただし生物は保存できない。」が消えて新しい機能が増えてる。
「なんでポーション作れんのに武器作れないの?」とかって聞きたいけど機嫌損ねて元に戻されたら嫌だし止めとこう。
「もうスキルについて聞きたい事はないな。では、幸運以外の数値を上げる為のものを渡すぞ」
「これから強いスキルを渡してくれるのか?」
「ああ。取り敢えず、いくつかのスキルとオリンポス十二神の寵愛を渡すのじゃ」
オリンポス十二神の寵愛?ナニソレ。
「オリンポス十二神の寵愛、というのは、最高位の恩恵の事じゃ」
今、世界『ガイア』を管理している神はガイアの他に十二柱いて、その総称を「オリンポス十二神」というらしい。
神は人間(人族、亜人族、魔族の総称)に恩恵を与えることができる。その恩恵は加護、祝福、寵愛の三種類があり、影響は寵愛>祝福>加護の順に大きいそうだ。
「オリンポス十二神の寵愛って、十二柱の神様から一つずつ、計12個の恩恵を貰うってことだよな?そんな簡単に渡していいものなのか?」
「そうじゃな、加護は一年に二、三度くらい、祝福は50年に一度くらい、寵愛は一度も渡したことはないな。あ、いや、何千年か前にアテナがヘラクレスに渡してたような気がするのう」
「え!?それって11個は俺が初めてってこと?え、いいの?」
「いいんじゃよ。お主には妾らと共に戦ってもらうんじゃ。備えあれば憂いなし。念に念を入れるに越したことはないんじゃ」
そうか、そういえば邪神と戦うんだった。
「そういえば邪神ってどんな奴なんだ?弱点とかもあるだろうし、敵軍の兵の数とか、いつから戦争が始まるのかも知りたいんだが」
「あやつの名はクロノス。時を司る巨神じゃ。あの戦争。ティターノマキアーと呼ばれているんじゃが、ティターノマキアーの起こる前は、今のようにオリンポス十二神がガイアと地球、両方を管理している訳ではなかった」
当時は、地球をオリンポス十二神が、レア(ガイアの当時の名称)をクロノスたちティターン十二神が管理していたそうだ。
しかし、レアだけでは満足できなかったティターン十二神は、地球のオリンポス十二神に奇襲をかけ、地球の支配権をも奪おうとしたらしい。
戦力的にはティターン十二神の方が圧倒的に勝っていたが、奇跡的にオリンポス十二神が勝利を修め、戦死した者を除くクロノス、アトラスの二柱を冥界の奥深くに封印した。
そして管理する神が居なくなったレアの管理も務め、『レア』を『ガイア』に変えたんだとか。
「『この世界はクロノスではなく妾の物だ』と主張する意味を込めて『ガイア』って名前にしたんじゃが、今考えると本当に失敗じゃったわい」
一年前、クロノスらの封印が解けた。クロノスは魔王を生み出して魔王は下界(地上)を、自らはオケアノスとアトラスと共に神界を攻めようと企んでいるんだとか。
「俺は一回下界に行くんだよな。戦争が始まるのはいつなんだ?戦争が始まるまでに鍛えてこないといけないんだろ?」
「五年後には攻めて来ると思うぞ。冥界の最奥に封印したからな。いくらクロノスといえど封印が解かれたばかりで冥界を出られるはずがないからのう」
「あのさ、下界は魔王が攻めてくるんだろ?人間なら歯が立たないとしてさ、神なら瞬殺できんじゃないのか?」
「できる。じゃが妾ら神は下界に降ると力が急激に弱ってしまうのじゃ」
「下界にはあまり干渉できない、みたいな感じか」
「その通りじゃ。あ、お主は下界にいようと神界にいようと力はそのままじゃぞ。なんなら五年間力をつけてる間、ついでに魔王倒してくれても構わないんじゃぞ」
「勇者の仕事を奪っちゃったら悪いんでね。あ、俺も勇者か。じゃあ、気が向いたらってことで」
一回下界に行くのはいいとして、五年間で神に匹敵する力をつけられるかね。最高に自信がないんだが。
......あれ?俺以外の勇者って随分前に転送されたよな?俺いなかったらシュンとかユーナあたり心配してるんじゃね?
「随分前に他の勇者転送されたよな?俺って行かなくて大丈夫なのか?」
「今更なにを言っているんじゃ。今下界の時間は止まっているから大丈夫じゃ」
良かった~。神様ってそんなことできんのか。すごいな。もし俺がクロノス倒したら神格化して貰おっかな(そんな簡単なことじゃない)。
「それじゃ、これから神界へオリンポス十二神から恩恵を貰いにいくんじゃが、何か聞きたいことはあるかね?」
「えーと、そうだ、ガイアのステータスを見てみたいんだが、鑑定していいか?」
「そんな事か。別に構わないぞ」
「あざす」
それでは早速~、鑑定!
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ガイア 50億2650万3002歳 女
種族 神族
職業 ―
レベル25000
HP 250000/250000
MP 280500/280500
物攻 96050
物防 82240
魔攻 100350
魔防 91840
敏捷 56200
幸運 5000
〈スキル〉
鑑定 偽装 危機察知 思考加速11 身体強化22 攻撃耐性10 自動回復9 限界突破
─魔法─
四大魔法25 無魔法12 空間魔法 主従魔法 召喚魔法
─ユニーク─
アイテムボックスα 完全記憶 支配者
〈称号〉
母なる地母神 神々の親 大地の支配者
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す、すげぇ。50億年も生きてんのか。あ、でも地球を作ったんなら当たり前か。取り敢えず気になるものだけ鑑定していこう。
〈攻撃耐性〉...スキル〈敵性魔法耐性〉〈物理攻撃耐性〉〈状態異常耐性〉の複合スキル。
〈自動回復〉...スキル〈HP自動回復〉〈MP自動回復〉の複合スキル。
〈限界突破〉...スキルレベルの限界を超え、いくらでもレベルが上がるようになる。
〈四大魔法〉...火、水、風、土魔法の複合スキル
〈完全記憶〉...一度覚えたものは絶対に忘れなくなる。
〈支配者〉...自分より格下の存在を支配下に置くことができる。
〈母なる地母神〉...世界を作った女神に与えられる称号。
〈神々の親〉...神を産んだ者に与えられる称号。
〈大地の支配者〉...大地を支配する者に与えられる称号。大地(土)を自由に操ることが出来るようになる。
流石神様だな。本当にこんなのに近づけるのだろうか。それもたった五年で。だってこの人50億年生きてこれなんだよ?ガイアの10億倍の早さで成長しなくちゃいけないんだから。本当に途方もないよね。
「見終わったかの。いち早く妾に近づけるように頑張るのじゃぞ。ほっほっほ」
「は、はい。ありがとうございます。頑張ります」
「ほっほっほ。じゃ、早速寵愛を貰いに行こうぞ」
きっと今の俺の顔は、ゲッソリしていると思う。これから五年間、どれだけハードなスケジュールになるのか予想がつかない。
やっとタイトルにある「オリンポス十二神の寵愛」が出てきました。