29話 二人目の奴隷
予想外の命乞い。
もうこの魔族の男を殺すのはほぼ決定しているのだが、こうも派手に命乞いされると殺しにくいよなぁ。
「殺さないで下さいぃ。妻と娘がいるんです...」
おい、そんなこと言われたらこっちが悪者みたいじゃんかよ。
「コーキ、殺さねぇのか? なら俺がやるぞ」
「ストップティムス。話くらい聞いてやろうよ」
無理矢理やらされてたとか言ってたよな。嘘ならすぐボロが出るだろうし、本当なら少しくらい助けてあげてもいい。
心理学の本とか読んだことがあったけど、確か嘘かどうかは目を見たらわかるんだよな。
他にも、嘘をついていたら落ち着きがなくなるから手遊びとかをし出したり、眉間にしわがよったりするって事だった気がする。
俺は半分パニックになっている魔族の男に、落ち着いてもらうよう声をかける。
「すぐには殺さないから一旦落ち着いてよ」
「は、話を聞いてくれるんですか...?」
「聞いてやるから落ち着けって」
「わ、わかりました、ありがとうございます...」
本当にちゃんと話を聞いてもらえるとは思っていなかったのか、戸惑う様子を見せる。
と、こいつの名前はなんて言うんだっけ。さっき鑑定したけど種族のところしか見てなかったから名前わかんねぇな。
改めて鑑定するか。
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アノス 122歳 男
種族 魔族
職業 秘密捜査員
レベル28
〈スキル〉
潜伏 暗視 身体強化2 剣術3
─魔法─
無魔法3 火魔法2 水魔法3
〈称号〉
魔王の奴隷
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アノスか。122歳の割りにレベルは低めだな。......魔王の奴隷!?
「おい、魔王の奴隷ってどういうことだよ?」
「な、なぜそれを知っているんですか!?」
「鑑定スキルだ。それより奴隷ってどういうことだ」
「......長くなりますが、説明させてもらいますね」
そうしてアノスは語りだした。
アノスの話は要約するとこうだ。
魔族の中にも人族と対立する者もいれば共存しようとする者もいる。
対立する者が大多数だが、アノスとその家族は人族との共存を望んでいた。
比較的人族領に近い場所に住んでいたアノスは、魔族と人族の争いに巻き込まれることもなく平和に暮らしていた。
しかし、ある時その平和は破られた。
突如、絶対的な力を有した魔族、すなわち魔王が誕生したのだ。
魔王が現れると人族との争いは活発化し、アノスもその争いに兵士として参加させられそうになった。
アノスはそれを拒んだが、家族を人質にとられ、無理矢理奴隷契約を結ばされて働かされているのだという。
そして、まさに今、その任務中だったという訳だ。
《〈真実の瞳〉を獲得しました》
なんだなんだ、またなんか獲得したぞ? 〈真実の瞳〉って、どこかで聞いたことがあるような......。
《ゼウスが持っていたユニークスキルです。相手の言っていることが本当か嘘かわかるスキルです》
ゼウス? ......ゼウス?
《はい》
神が持ってるユニークスキルを、心理学がどうとかいう浅い知識で嘘を見分けてたら獲得しちゃったってこと?
《はい》
oh my god......。なんかゼウスに申し訳ない気分になってきたよ。。。
また簡単にすげースキルを手に入れてしまったショック(?)から立ち直ると、アノスの方に向き直る。
「なるほど。嘘を言っているようには感じられなかった。因みに、なんで盗賊に扮してまでここに来たんだ? 何かの調査とか?」
「このアジトの近くにあるキオス王国で、勇者召喚が行われたとの情報がありまして。勇者は魔王様の敵になり得る為、調査を命じられました」
「あー、もう魔王は勇者のことしってんのか」
「はい」
そっか...。その割にこちら側は魔族のことを知らないな。
そうだ! 良いこと思い付いちゃった♪ 俺やっぱ天才だわ~。
「じゃあ奴隷契約の上書きするね。ちな拒否権ないから」
「え、は、え!? 上書き...なんてできるんですか!?」
「普通はできないけど、俺は特別だからできるのよ。上書きしたあと偽装して、鑑定しても〈魔王の奴隷〉ってみえるようにする。簡単に言うと魔王軍へのスパイってことだね」
これは俺が魔王より格上の存在じゃなきゃ出来ないし、あとは魔法の原理に介入できる実力と知識が必要な行為だ。
でも、我らがエンシーさんにかかれば奴隷契約の上書きなんてちょちょいのちょいよ!
てことで、お願いしまーす。
《わかりました》
アノスの奴隷紋に手をかざすと、そこからとても目映い光が。
光が収まると、、、光が収まっても奴隷紋の様子は変わっていないな。
これでできたのか?
《できました。ステータスを確認してみてください》
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アノス 122歳 男
種族 魔族
職業 秘密捜査員
レベル28
〈スキル〉
潜伏 暗視 身体強化2 剣術3
─魔法─
無魔法3 火魔法2 水魔法3
〈称号〉
コーキの奴隷
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おー、ほんまや...。すげー、流石エンシーさん。。。
「本当に上書きしたのですか...? 魔王様ではなく、えっと...」
「コーキだよ」
「コーキさまの奴隷に...?」
「うん、そうだ。晴れて奴隷になったわけだし、〈鑑定〉に〈アイテムボックスα〉、〈取得経験値100倍〉と〈必要経験値1/10〉も共有しとくか」
「ち、ちょっと待ってください! 急にスパイと言われても、何をしたらいいのか...」
「このまま帰ってもらって、今まで通り任務をこなしてもらえればいいよ。魔王側に何か動きがあったら念話で教えてもらえれば。それと安心して。アノスの家族は俺が守るから」
「わ、わかりました...」
こうして俺、コーキの奴隷にまた一人、魔族のアノスが加わりましたとさ。
「流石はコーキだね。まさか奴隷の上書きなんてできるとは思わなかった」
「ホントですよ! どれだけ手の内を隠してるんですか!」
「ふっふっふ、褒めても何もでないぜよ?」
「(ぜよ...?)」
まぁ俺じゃなくてエンシーの手柄なんだけどね。
あれ、でもエンシーも俺のスキルだから俺の手柄か?
んー、でも、エンシーは機械的なスキルじゃなくて人格があるから俺の手柄っていえるのか?
まぁいいや、俺の手柄ってことにしとこ。
一件落着といった感じであいあいとしていると、それまで黙っていたティムスが口を開いた。
「...あそこの縛られてる女、どうすんだ?」
......あ。忘れてた。
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コーキ
〈スキル〉
─ユニーク─
真実の瞳new




