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オリンポス十二神の寵愛~神にとってもチートな異能~  作者: 加里川 ソウダ
第二章 トロイア王国編
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挿話 勇者ユーナ

 ※橘優夏(たちばなゆうな)視点 キオス王国王城にて


 私達がこの異世界「ガイア」に召喚されてから約1ヶ月が経った。


 すっかり異世界での生活にも慣れ、この世界のルールや常識などもわかってきた。


 私達を勇者として召喚したキオスという国の王城に住んでいて、身の回りの世話などもメイドさんがしてくれるので不便はない。


 毎日の訓練は辛いこともあるけれど基本的には楽しいものだ。国の騎士や魔導士の方が丁寧に教えてくれる。私は他の人よりも魔法の適性が高いので、剣や弓などの武器よりも魔法の練習をよくしている。呪文を覚えるのが少し大変。


 こんな風に、ある意味充実している日々を送っているが、少し気がかりな事がある。

 この世界に召喚されたその日に王城から追い出されたコーキのことだ。

 なぜか私はあの時、コーキや彼を連れていく兵士を強く止められなかった。

 私は無意識にそれを責任に感じているようで、〈念話〉のスキルで連絡することも中々できていない。


 シュンのヤツは、相変わらず馬鹿みたいに活発に訓練をしている。

 元々運動神経だけは良かったからか、剣術系のスキルが充実しているようで結構強いらしい。

 でも、そんな明るい彼もコーキが居ない日々を寂しく感じていることを私は知っている。


「お疲れ様。今日の訓練はここまでよ。そろそろ夕食の時間だから早めに食堂へ行きなさいね」


 訓練をしている私達にそう声を掛けたのは、キオス王国が抱える大魔導士キルケ。


 胸まで伸びた赤い髪は天然なのかパーマでくるくると巻かれている。海外の大学で着ているようなローブ姿で、まさに魔法使いという感じだ。


 キルケ先生は国で1,2位を争う魔法の実力を持っていて、なんと〈全魔法〉に〈無詠唱〉という強力なスキルも持っている。

 魔王率いる魔族軍との戦いのために、直々に勇者に魔法を教えているのだ。


「あー疲れた~。今日のご飯なんだろうね!」

「昨日はパスタだったから、パンとかじゃないかな」

「パンかー。このお城のご飯は美味しいからなんでもいんだけどさー」


 訓練が終わり、自分の部屋へ戻ろうと歩いていると近くの女子が話しかけてきたので適当に答える。


 少し考え事をしていたので暗い声が出てしまった。


「でもユーナちゃんは凄いよね~。4種類も魔法持ってるし、今日も先生に褒められてたじゃん」

「そんなことないよ! 器用貧乏になっちゃうし、1つの魔法だけを高めるっていうのもいいと思うよ?」


 いつも通りの中身がない会話をしながら歩く。


 部屋に戻って杖を置き、少し休憩してから食堂へ向かった。


「お、ユーナ! 訓練終わったのか? 腹減って死にそうだぜまったく。オリオン先生にめちゃくちゃ走らされてへとへとだしよ」


 食堂で()いている所へ行って席に座る。

 暫くたって聞こえてきたのは、顔を見なくてもわかる、いつものうるさいシュンの声。


 オリオン先生というのは、剣や武術の先生のこと。キルケ先生と同じく、キオス王国でも五本の指に入る実力者だ。


「へぇ。試しに何も食べなかったら死ぬのかどうか実験してみたら?」

「酷くない!? どうしてコー...ユーナは俺に当たり強いんだよ~」


 別に私とてシュンが嫌いだから言っている訳ではない。

 単にストレス発...シュンはイジりやすい性格だからだ。

 シュン自身もそれが愛ゆえのものだとわかっているから、心底から「酷い」と思ってはいない。


 ......我ながら、私は頭がいい。そのため、たまにわかりたくないことも察してしまうので少し嫌だ。

 シュンはさっきコー...と、何かを言いかけた。

 恐らく「どうしてコーキといいユーナといい、お前らは俺に当たり強いんだよ」というニュアンスのことを言おうとしたのだろう。

 召喚されてから。いや、コーキが王城から追い出された時からか。私とシュンの間では、コーキの話題は自然と避けるようになっていた。


 でも、彼は絶対に生きている。そのことはなぜか確信している。

 幸運の神に愛されている、といつかコーキに言ったことがあったが、どうやらこの世界では幸運の神ヘルメスという神が信仰対象になっているらしい。

 魔法なんてあるくらいだから、本当に神が居てもおかしくはない。

 とにかく、強運と持ち前のズル賢さで、どこかで楽しく生きているのだと、私はそう思っている。

 案外、一緒に追い出された土谷と冒険者なりやって、家でも買って楽しく暮らしているかもしれない。


「隣座ってもいいか?」

「いいよ」

「さんきゅ~」


 シュンが隣に座って、また下らない話をする。


 コーキのことを考えて少し暗くなっていた心も、シュンの声を聞いているとだんだん明るくなっていく。

 その事に気付き、癪だなと小さく舌打ちをして、うざがられていると思ったのかショックを受けたシュンの表情を見て、また小さく笑う。


 情緒不安定かよ、私。


 いつか、コーキに再会した時には一言文句を言ってやろう。

 ......連絡する手段があるのにもかかわらず未だ連絡できていない私に、そんな事が出来るかはわからないけど。


 メイドさんが食事を運んできてくれる。


 今日のご飯は、パンにシチューか。

 ご飯といえば、この世界にも米はあるようで、前に召喚された勇者が伝えたのか日本食が夕食に出されることもある。食に(こだわ)りがある日本人としては嬉しい。


 合掌してご飯を食べ始める。

 うん、美味しい。


 暫くして、ほとんどの人が食べ終わったかという時間。

 私達が召喚された時にこの世界の説明をしてくれた王女様が食堂に入ってきた。


「お食事休み中失礼します。少し、私の声に耳を傾けて頂きたいのですが」


 話始めた内容は大したものではない。

 1ヶ月経ったけど調子はどうか。訓練は順調か。

 その程度のものだった。


 王女様はとても丁寧に話してくれるが、私にはそれが演技に見えることがある。

 それは私がひねくれているからという訳ではない。

 コーキが城を去る時言った事。

『それと、この国はあまり信用しない方が良い。』

 コーキは何を根拠にそんな事を言ったのかはわからない。

 でも、何か意味があるはず。

 優しい言葉をかけて勇者を利用する。これは十分ありえることだ。

 シュンにも、コーキに言われたとは言っていないが、それとなく伝えている。

 とにかく、この国の王女様の態度が演技ということは間違っていないだろう。

 疑ってかかっても損はない。コーキの言葉を無駄にはしたくない。


 王女様の話が終わり、食堂から出たのを合図にしてみんな部屋に戻る。

 その流れに乗って、私もシュンと別れて部屋へ向かう。


 お風呂に入って汗を流し、少ししてからベッドに横になった。


 翌朝、いつもの鐘の音で起こされる。


 コーキもお金を稼ぐために働くか、魔物を倒して強くなっているのだろう。


 次会った時、国の魔導士に訓練されている私が弱かったら合わせる顔がない。


 コーキにまた会えるその日を信じて、私、勇者ユーナは訓練に励んだ。

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