3話 テンプレなクラス転移
やっと転移まで書けました。
あーるこー あーるこー わたっしはー げんきー
俺は今、学校へ向かっている。久しぶりの学校だ。憂鬱だぜ!
「あっコーキ!入院してたんでしょ?大丈夫?」
「おお、ユーナ。久しぶりだな。心配かけてごめんな」
「全然いいよ。ていうか幸運の神に愛されてるコーキが重症な訳ないって信じてたし」
「お、おう」
ユーナに話しかけられ、その後は一緒に登校した。てか運が良いのは認めてるけど、幸運の神なんているのかね。
一ヶ月病院に居たけど、この辺は全然変わんねぇな。当たり前か。あっ、あそこ工事おわったんだ。へぇ、「コンビニエンス・ベーカリーカフェ」ね。コンビニなのかパン屋なのかカフェなのかハッキリしろよ!責任者出てこい!
なんて下らない事を考えている内に教室についてしまった。
「教室に入るのも久々だなぁ」
「あ、コーキ、気を付けてね」
「? 気を付けて? 何に? まぁいいや」
ユーナに意味のわからない忠告をされたが、取り敢えず入る。
ガラガラガラ
「おっ航希じゃねーか!てめぇこの野郎!なに事故ってやがる!俺の知り合いでお前の他にVRMMOの抽選当たったやついねぇから一ヶ月もお預け食らったんだぞ!どう落とし前つけてくれるんだ!」
「いってぇお前いきなり殴りかかってくんじゃねーよ!VRMMOの件は悪かったけどよ、こちとら骨折が治ったばかりなんだぞ?優しくしろ!」
なるほど。ユーナの忠告を無駄にしてしまった。ったくこのバカはなんでいつもいつもこんなに元気なんだよ。
しかしVRMMOについては完全に忘れていたな。早いとこ買いにいかなくては。
「そ、そうか。お前骨折してたのか。悪い。まあ治ったんなら良かったよ」
「お前良かったよって、心配してくれてたのか?」
「べ、別に航希の事が心配だった訳じゃないんだからねっ!VRMMOが楽しみだっただけだからねっ!」
「え、何その急なツンデレ。キモい。とりあえず生ゴミ食え」
「酷くない?ねぇ、俺泣いちゃうよ?」
泣きながら生ゴミを食ってるシュンを無視して席に座る。机の中に無造作に入れられているプリントの束を整理しなくては。
「おい土谷。お前挨拶も出来ねぇのかよ。トモダチだろ?」
「「「そうだそうだ!!」」」
「! は、はい! ごめんなさい! おはようございます寺田クン!」
「うるせーよ話しかけんな土谷の分際で」
「「「話しかけんな!!」」」
「ご、ごめんなさい!」
「またやってるよ寺田のやつ。ほんと朝から気分が悪くなるような事しないでほしいよね」
もはやいつもの光景となっているいじめにユーナが溜め息をつく。
いじめられているのは土谷陸。中肉中背で身長も体重も運動神経も学力も平均という、これ以上ない普通なヤツだ。
それに対していじめてるのは寺田将暉といって、筋肉質で身長高め、もちろん運動神経も良い不良だ。
いつも寺田はとりまきの奴らと一緒に土谷をいじめている。そして毎回思うがとりまきの奴らの小物臭が凄い。
「そうだ、おい土谷。いつものやつ持ってきたよな?」
「ごめんなさい、千円札しかなくて......」
「はぁ?なら親の財布から取るなり盗むなりいくらでもやりようがあるだろ?舐めてんの?」
「寺田君、いつもいじめはやめろと言っているだろう?土谷君も大人しく従っているから付け上がっちゃんだよ。ほらほら二人とも席について」
今二人の間に割って入ったのは我がクラスの委員長、統皇凰雅。勇猛果敢、眉目秀麗、質実剛健、気宇壮大と、褒める為の四字熟語が全て当てはまり、常に4、5人の美少女を侍らせている名前に恥じない主人公っぷりだ。
特に名前。「統皇凰雅」ってさ、初見で「すめらぎおうが」って読める人居んの?いや居ない。断言する。入学式でも、事前に読み方を教えられてるはずなのに「とうおうおう...失礼いたしました。すめらぎおうがくん」って言われてたもん。
「ちっ統皇か。わかったよ。おい土谷、次忘れたらわかってんだろうなァ?」
「ひぃっ わ、わかってます!」
「寺田君」
「へいへい、わかってますよ委員長さん」
あの寺田を黙らせるとは、流石は我らが委員長。まあ、大方寺田も統皇ズハーレム員にグチグチ言われるのが嫌なだけだろうけど。あれはうざかったな。統皇に逆らうとハーレム員がグチグチグチグチうるさいんだわ。
「なんで統皇クンに逆らうの?」「統皇クンが正しい事を言ってるのがなんでわかんないの?」「統皇クンが正しくて、あなたが間違ってるの」「あなたの為を思って注意してくれたんだよ?統皇クンの善意を踏みにじるつもり?」
あれは鬱陶しかったね。あれから我がクラスでは「統皇には逆らわない」が暗黙の了解になった。担任も含めて。
それから暫くして、朝のホームルームが始まった。
「ーーーーよし、これで取り敢えず担任からの連絡は終わりだ。他に何か伝えたいことがある奴はいるか? 居ないようだな。それじゃーーッッ!?」
担任の声はそこで途切れた。なぜなら教室の床全体に大きな魔方陣のようなものが現れたからだ。
生徒の反応は様々だ。
「な、なにこれ!?」
「異世界召喚キタ━(゜∀゜)━!」
「めっちゃ光ってんだけど!」
「きゃー!統皇クン助けてー!」
「ちょっとアンタ、どさくさに紛れて私の統皇クンに抱きつかないで!」
「統皇クンにはあなたみたいなブスより私みたいな美人の方が相応しいの!」
「なんですって!?このまな板!!何カップか言ってみなさいよ!A?Aにも満たないんじゃないの?私が統皇クンに守ってもらうの!」
「Bカップ!勝手にAとか決めつけるなこのメス豚!お前みたいな爆乳の方が見苦しいわ!」
「へっ。まな板が意気がってんじゃないわよ」
「二人とも、喧嘩してたらその可愛い顔が台無しだよ。大丈夫。二人とも僕が守ってあげるからさ」
「「キャーー!統皇クンカッコいいーーー!!!」」
そう、こんな風に様々な......、後半関係ないね。うん。取り敢えず爆ぜろ。
「みんな落ち着いて!その魔方陣みたいなのの内側に居ない方が良い!教室から出るんだ!」
担任がそう叫び、教室の扉を開けて外に出た。
しかし、生徒の一人が外に出ようとしても見えない壁のようなものに阻まれて出られない。
「先生、なんで出られたんですか!?」
他の生徒も同じように出ることができない。
そうしている内に魔方陣から発せられる光りが段々と強くなっていき............
気付いたら真っ白で何もない空間にいた。そしてそこには高級そうな衣服に身を包んだ七、八十代くらいの老婆が立っていた。
「どこだよここ!」
クラスの一人がそう叫んだ。このあとも何人かが叫ぶと思ったのだが、予想に反して誰も何も言わない。
おかしいと思った俺は、「さっきの魔方陣はなんだったんだ?所謂異世界転移ってやつか?」と老婆に尋ねようとした。しかし、声が出ない。そして体も動かせない事に気付いた。
「妾は地球を管理している女神である、ガイアと言う者じゃ。悪いが話がしやすいようにお主らの体の自由を奪わせて貰った。簡単に今のお主らの状況を説明する。お主らは妾が管理するもうひとつの世界である『ガイア』という世界の国の一つ、キオスで行われた勇者召喚にて召喚されたのじゃ。世界に自らの名を付けるなんて、今考えれば失敗じゃった。ほっほっほ。まぁ、そういうことじゃ。色々聞きたいことがあるじゃろうが、詳しくはキオスの王族に聞いておくれ。あ、そういえばお主らには妾からスキルや恩恵、称号をいくつかプレゼントしておいた。それは後でのお楽しみじゃ。では、キオスの王城へ転移させるぞ。達者でな。」
ガイアと名乗ったその老婆は、一息にそう言うと、魔方陣を展開させた。そう、一息に、である。流石は神と言ったところか。肺活量半端ねぇ。
先程と同じように魔方陣から光が放たれ、段々とその光が強くなっていく。
そして気付いた時には先の白い空間ではなく、美しい装飾の施された王城に............、あれ?何も変わっていないように見えるんだが気のせいか?あ、ひとつ変わったといえば、周りの人の気配が無くなっていることか。
隣を見てみる。後ろを見てみる。また前を向く。
......誰も居ないんだが。
みんな転送されたのに俺だけ残っちゃったんですけど!?
登場人物の名前って考えるの難しいですね(;´A`)