閑話 クリスマス
主人公が異世界に転移される前のお話です。
※三人称視点 神界にて
ガイアが下界の様子を見て寛いでいる。
『ヘルメス、今大丈夫かの?』
『ガイアさん? ええ、大丈夫ですが』
『ちょっと神殿に来てくれんかの?』
『はぁ。わかりました』
ガイアの前に転移陣が現れ、そしてヘルメスが現れる。
「なんですか?」
「ヘルメスよ。今日はイエスの誕生日じゃったな?」
「ああ、なるほど」
ヘルメスが面倒くさそうに顔を顰める。
「確か、今年で2018歳じゃったか?」
「いえ、2022歳だと思いますよ?」
ガイアが「そうじゃったか」と納得したように頷く。
「何日か後に召喚される勇者の故郷である日本では、妾らが『イエス・キリスト』と呼んでいたからそう呼ぶようになったんじゃったな」
「ハハハ、懐かしいですね」
そこで、ヘルメスが思い出したように問う。
「それで、そんなこと言うために呼び出したんじゃないでしょう?」
「そうじゃったそうじゃった。お主にはイエスに何か贈り物、所謂誕生日プレゼントを渡して欲しいんじゃ」
「やっぱりそうでしたか。何を渡せばいいんです?」
「そうじゃなぁ。イエスは信者の事をいつも想っておるからのう。寄付金なんてどうじゃ?」
「アハハ、彼は喜びそうですね」
「ならそれで決まりじゃ。千万ヘル、いや、地球ではドルじゃったな。各教会に十万ドルずつの寄付を頼む」
「各教会ね......。わかりましたよ」
「これは骨が折れるなぁ」ヘルメスはそう思いつつも立ち上がる。
「飛んで行くのも疲れるし、ソリに乗っていくか」
ヘルメスは神界に住むトナカイにソリを引かせ、夜の空を駆けていった。
その日のヘルメスの格好は、偶然かはたまた必然か。赤いコートに赤のズボン、そして赤の帽子だった。
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※コーキ視点
メリークリスマス!!
今日はクリスマスだ! シュンとユーナが家に遊びに来るんだ! やったね!
ピーンポーン
誰か来た。
「しもしもー? どなたですかー?」
「コーキ! 俺だよ俺。寒いからさっさと開けてくれ」
「あー、すみません、ウチではオレオレ詐欺は受け付けてないんですよ。俺の友達にバカなヤツがいるんで、そいつにやったらどうですかね? 電話番号はXXX―○○○ーーー」
「うるせーオレオレ詐欺じゃねーよシュンだよシュン! しかもそれ俺の電話番号じゃねーか!!」
「なんだよシュンかよつまんねーな」
「つまんねーってどういう意「ガチャ」」
このまま放置して凍死させるのもそれはそれで面白いが、死体を遺棄するのが面倒くさいのでやめとこう。
ガチャ
「ふぉー暖けぇ。生き返るわー」
外の風が入ってきて寒いな。
「早く入れ。室温が下がる」
「おっ、悪い悪い」
シュンが入る。リビングまで走っていくと、ソファーにダイブする。こいつ人の家に招かれてるってこと忘れてんじゃねーだろうな?
「シュン、チキン買ってきてくれたか?」
「おう、買ってきたぞ。行列が凄かったわー。ほい、これレシートな」
「うげぇ。結構高いんだな。チキンって。ほら、これチキン代」
その時、またインターホンが鳴った。
「もしもーし、私だよ私。外寒いねー」
「あ、ユーナか。今開けるね」
「お前、俺の時と扱い違い過ぎるだろ!!」
後ろで雑音がしてたが無視する。
「はぁー暖かいねー。生き返るー」
「お前シュンと同じような反応だな」
「なん......だと......。」
「おーいユーナー。聞こえてるぞー。俺と同じ反応したことに大分ショックを受けてる気がするんだが、気のせいだよなー?」
「なんか雑音がするな」
「ええ。雑音ね」
「ねぇ酷くない? 俺泣いちゃうよ?」
泣いている雑音の発生源を無視して、ユーナをリビングに招き入れる。
「はい、これケーキね。別にお金払わなくていいのよ? 私の奢りってことで」
「いや、俺が買ってきてくれって頼んだんだから俺が払うよ」
本当はケーキもシュンに買ってきて貰おうと思ったのだが、ユーナが良いケーキ屋さんを知っているようだったのでユーナに任せていた。
「おっ、結構デカイのに安いな。見た目もいいし。これで美味かったら最高だな」
「ふふーん、そうでしょう? 結構美味しいのよ?」
それは楽しみだ。
「ほらシュン、チキンの包装を開けてくれ。えーとそうだな。この皿に載せてくれ」
俺はケーキを冷蔵庫にしまう。
クリスマスツリーの点滅するライトを点けて、ジョージア・マイケルのクリスマスソングを掛ければ雰囲気はバッチリだ。
「ユーナは飲み物何がいい? シュンはコーラだけど」
「勝手に決めんなよ! いやまぁコーラで良いけども」
「私はオレンジジュースで」
「オッケー。俺はジンジャーエールかな」
3つのグラスにそれぞれ飲み物を注ぐ。
「それじゃあ、乾杯!」
簡単にいうと、むっちゃ美味かった。やっぱり高い肉は旨いな。
シュンががっつきすぎて今ソファーに寝てるが、あれでケーキを食べられるんだろうか。
服の下にボール入れてんの?って感じだ。
「これからケーキを食べるんだが、シュン、お前食えるか?」
「大丈夫でふ。ケーキは別腹でふ」
語尾が完全にデブのそれなんだが。
「ケーキの前に、私から二人にクリスマスプレゼントがありまーす!」
「俺もあるぞ」
「俺もでふ」
シュンもか。意外。
ユーナからのプレゼントは、Tシャツだった。季節感皆無なんだが、暖房の利いた室内では関係ないか。俺のは灰色の無地のTシャツ。胸ポケットがあるヤツだ。地味なTシャツが欲しかったから丁度良い。シュンのは黒地に白い骸骨が描かれたTシャツ。なんというか、イタいな。でもシュンには良く似合ってる。ユーナ、ナイスチョイス!
シュンからは意外に、マグカップを貰った。鳥が描かれていて、中々に洒落ている。
「お前、よくこんな洒落たモノ買えたな。見直したよ」
「なんか言葉に刺がある気がするんだが...。まぁそれ、母さんが選んだんだけどな」
シュンは元々、駄菓子を買う予定だったそうだ。それがお母さんに見つかって、これはないと。しかもクリスマスにふ菓子はないと。猛反対され、結局お母さんが選んだものをプレゼントにしたそうだ。シュンはシュンのままだった。良かった良かった。
「それで、ボツ案のふ菓子がここにあるんだが、要るか?」
「要る」
「お、おう」
実は俺、ふ菓子が大の好物なんだ。でもまぁ、クリスマスプレゼントにふ菓子貰ったら流石に引くけどな。
「最後は俺だな。俺からは、宝くじだ」
「宝くじ? 一枚だけ? まぁ、ありがとう......?」
そりゃそうだよな。普通宝くじ一枚だけ貰っても戸惑うよな。でも俺は普通じゃない。俺は今まで、宝くじを買ってきて損したことはないのだ! 下手したらこいつら、成金になる可能性まである。
「そうか! そういえばお前だもんな! ありがてぇ。最近小遣い減らされたんだよ!」
ふっはっは。感謝したまえ、感謝したまえ。
ケーキを食べ終わって、暫くソファーに持たれかかって寛ぐ。
「ふぁー。腹一杯になったら眠くなってきたわ。コーキ、泊まっていいか?」
「いいぞ」
「まぁそうだよな......え? いいの?」
「いいよ別に。布団はあるし。ユーナも泊まるだろ?」
「え? わ、私? じゃ、じゃあお願いしようかな......」
「二人とも携帯持ってるだろ? ちゃんと家に連絡入れとけよ。それと布団は自分で敷けよな」
二人とも家に電話を入れている。
「ねぇ、今日コーキの家に泊めてもらうから、お母さんに伝えといてね。え!? 違うから、そんなんじゃないって! シュンも居るし! 3ぴ...何バカなこと言ってるの? 明日帰ったら覚えてなさいよ!」
ユーナが弟に連絡をしている。ユーナのお母さんは友達とご飯を食べに出掛けているらしい。それにしても、一体何の話をしているんだろう。
シュンはもう布団に入ってしまったが、俺はまだ眠くならない。テレビでも見るか。
「速報です。今夜7時頃、全国のキリスト教の教会に全身赤い服で身を包んだ男が1000万円の寄付をするという事が起きました。周辺住民の方に話を伺いますと、空を飛ぶソリを見たとの証言も複数確認されています。サンタさんは実在したのでしょ「高木アナ、子どもが......」失礼いたしました。サンタさんが今年も来てくれたのでしょうか」
アナウンサーが絶対にやってはいけないミスを犯した。
それにしても、不思議な出来事もあるもんだなぁ。
俺が二人に渡した宝くじは、二つとも500万円分が当たったそうだ。
シュンは10万円を残して他全部、親に没収された様子。
「なんでだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
イエスキリストは紀元前4年に産まれたらしいです。
日本で「イエスキリスト」と呼ばれているのは、ギリシャ語が由来とされています。諸説ありますが。




