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人助けしまして

「···それでお姉さんを助けてってどういう意味なんですか?」

「うん···実はね···」

「ちょーっと待てーいウルー、この体勢はおかしいと思わんのかーい?」

「え?なにがですか?」

「なんでこの子あたしの膝の上にいんのよ···」

「お姉ちゃんにこうやってたから」

「あ、じゃあしょうがないね」

「徹あんたちょっと頭出せ」


 クエストから帰ってくるなり次にあたし達に飛び込んできたのは一人の小さい女の子、その子に頼まれたのはお姉さんを助けることって···あたし達さっき帰ってきたばっかなんだけど、そりゃあ徹があの酔っ払いを投げ飛ばしたのは事実よ?でもやったのは徹なわけであたしが投げ飛ばしたわけじゃないし


「···っつつ、何も殴る必要無いでしょ···」

「顔が腹立つ」

「それが理由!?」

「ま、まぁまぁ二人とも、先にこの子の話を聞きましょうよ」

「それもそうだね」

「···ウルの方はやなの?」

「お姉ちゃんの方が落ち着く」

「···」

「···あーほらほら、幼女に断られたからって泣きそうな顔すんじゃないわよ···」


 ···簡単にまとめるとしばらく前に出稼ぎに出たこの子─メルのお姉さんが戻らず街で話を聞いたらクエストを受注しダンジョンに向かったっきり帰ってきていないらしい、さっきの受付にも聞いたら戻ってきておらずペンダントからの応援要請もきてないみたいで、···てかあのペンダント応援要請とかできるんかい


「···そんであたし達に助けを求めたのね」

「うん···あの強かったおじさんにも頼んだんだけどお金が無いと受ける価値がないって言われて···」

「弱いくせによく言うわねぇ」

「さっちゃん何もしてないじゃん···」

「···それでメルさんのお姉さんが行ったクエストってなんですか?」

「よくわからないけど深緑ランクのクエストだったと思う」

「深緑ランクっていうとちょうど私達が受けられるようになったクエストですね」

「ほーん」

「···それじゃあ早速行こうか」

「!!!お兄ちゃん行ってくれるの!?」

「そんなの聞いて行かないなんてできないよね、話を聞く聞いてるとそのお姉さんが心配だし」

「今から行くの?」

「行くでしょ、ほら二人とも準備して」

「と、トオルさん?」

「あぁー···徹昔から頼られるの好きなのよね、それだからコミュ障になったっていうか···お人好しだからコミュ障になったのよね」

「···そうなんですね」

「···まぁ行ったげるわ、それで?どこのダンジョンに行ったの?」

「受付のお姉さんから聞いたらトルネ遺跡だって···」

「トルネ遺跡ってまた高難易度ですね···」

「そうなの?」

「えぇ、···確かその遺跡で出ていたクエストも一個のみ、黄緑ランクにしては難易度が高すぎてそれ以上のランク持ちの冒険者でも未だにクリアができないクエストなんです」

「ちなみにあんたのお姉さんのランクってなんなのよ」

「白だよ」

「白···って!!!上から五番目じゃないですか!!!」

「そんな人が苦戦するクエスト···」

「あんたやるっつったんだからやんなさいよ?」

「いややるけども」

「それじゃあ私応援要請の受注をしてきますからトオルさんとさっちゃんさんは出る準備をしてギルドの外で待っててください」

「買うものは?」

「特に無いですね」

「りょー」

「···それじゃあ行ってくるから、君は此処で待っててね」

「うん···気をつけてねお姉ちゃん達···!!!」


 ···ウルに諸々の手続きを任せ、あたしと徹は言われた通りギルドの外で待つ


「···っとに徹ってば昔それで人付き合い苦手になったの忘れたの?」

「いやそうなんだけどさ、やっぱりあそこまで必死に助けを求めてるのに見過ごせないじゃん」

「そんなこと言って···それであんな目にあったの忘れたわけじゃないでしょ!?」

「それでも···誰かがやらないといけないなら僕が全部受け止める」

「···っとにお人好しなんだからもう!!!」


 それからしばらくして···


「お待たせしました二人とも!!!」

「遅い」

「こればかりは時間がかかるんですって···」

「行くとこどこだっけ?トルネ遺跡だっけ?」

「はい、トルネ遺跡はここから南西に50kmほどの位置にありますからまた馬車に乗っていきましょう」

「テレポート使えないの?」

「使えますけど魔力の消費がすごいので」

「あっそう」

「···さっちゃん、それはゲームだけだからね」

「うっさい徹、あたしの考えてたことを言うな」


 ···馬車に揺られること約五時間


「···二人とも見えてきましたよ」

「あれが···何遺跡だっけ?」

「トルネ遺跡ね」

「そーそーそー、···またこれ地下に潜ってくタイプのダンジョンなのね」

「まぁ遺跡だもんね」


 トルネ遺跡、道中ウルに教えてもらったそこはかつて魔法が一番最初に使われた記録が残る文明都市だったらしい、都市だからそれなりに広く当時としては珍しいものだった地下シェルターを導入している、概要を見せてもらったら蟻の巣みたいに複雑な造りになっているみたい


「···これのどこにいんのよ」

「それを探しに来たんだって」

「ウルー、クエストの内容なんだっけ?」

「クエストの内容はトルネ遺跡を根城にしている盗賊団を壊滅させろっていうものですね」

「それでランク下から二番目っておかしいんじゃないの?普通そういうのってもっと強くなってから頼むでしょ、誰よそのクエスト依頼したやつ」

「それが···書いてないんですよね」

「依頼主不明の明らかに難易度を間違えてるクエストか···さっちゃん、ウルさん、気をつけていかないとダメだね」

「そうですね」

「···って言うんならあたしの後ろに隠れんな!!!」

「盗賊団って事は人なんでしょ?話通じないじゃん···」

「ハナから話さない人間がとやかく言ってんじゃないわよ!!!ほら!!!先陣切れ!!!」

「えぇー···」


 馬車から降りてのトルネ遺跡の第一印象は苔むした岩造りの建物がたくさんあり遺跡にしては随分と綺麗に残ってるってーか···遺跡ってもっとこう···崩れてるようなもんじゃないの?


「この場所が遺跡と呼ばれるようになったのはつい最近のことなんで···」

「ウールー、あんたまた人の頭ん中読んだわねー」

「あっ···」

「それより最近って?」

「この遺跡が見つかったのはつい去年なんです、王家の学者が魔法の起源を辿っていたんですが歴史はわかってもこの遺跡の場所まではわからなかったんです、それが一人の冒険者によってたまたま発見され、発掘調査もおこなったんですが、いつの間にか盗賊団がこの場所を根城にしだし調査チームは全員その盗賊団に···」

「···まぁでも、盗賊団だけって理由じゃなさそうだね」

「え?」

「盗賊団だけってならそこまで苦戦するはずないよ、盗む事には特化してるだろうけど殺すような技術は持ってない、戦闘においては冒険者の方が有利のはずだよ」

「···言われてみればそうですね」

「それでもこのクエストはクリア出来ないってなると手強いのは盗賊団じゃなくてこの遺跡そのものなんじゃないかな」

「遺跡って、じゃあ徹は遺跡がは冒険者を殺してるって言いたいの?」

「ここは魔法の起源になってる場所なんでしょ?魔力を感知できない冒険者には魔物以外の危険もあるじゃん」

「そ、そういう事ですか···」

「···それと多分その盗賊団も壊滅してると思うよ、それが確認できないからこのクエストはずっとクエストボードに貼りっぱなしなんだよ」

「···」

「···まぁ、あくまで予想なんだけどね」


 ダンジョンの外観を見ただけで徹の口から出たクエストの概要とダンジョンの構造、こっちの世界に来てから徹は人が変わったかのようによく喋るし適応もしている


「···あんた普段からそういう風にハキハキ喋んなさいよ」

「無理言わないでよ···」

「じゃあこのダンジョンには魔法系のトラップがたくさんあると」

「うん、それを頭のいい魔物が仕組みを理解して何度も何度も設置してるんだと思う」

「ほーん、じゃあ徹にはかなり不利なダンジョンってわけか」

「まあそうなるね」

「···となるとこのダンジョンでは私とさっちゃんさんが重要な役割というわけですか」

「···ちょい待ち徹、だったらメルのお姉ちゃんはどうなのよ、上から五番目っていうんだから相当な実力持った冒険者なんでしょ?」

「それはまだ分からないけどトラップにかかって出られなくなったか」

「··だとしたら急ぎましょう、いくら実力があったとしても命の危険があります」

「そうだね、さっちゃん行くよ」

「あ、ちょっと!!!あんた前に行ったら危ないんじゃ···」


 ザワッ···


「!!!徹!!!しゃがんで!!!」

「え?わかった」スッ···


 シュンシュンシュン···カカカッ!!!


「っどぉっ!?」

「これがトラップ···!?」


 徹が遺跡に足を踏み入れ用途した瞬間に感じたもの、それと徹の頭に向かって伸びる黒い光のようなもの、それが危険なものと判断できるまでそんなに時間はかからず徹にそこを避けるように叫ぶ、徹がその場にしゃがんだ瞬間その頭上を木の槍みたいな物が物凄い速さでや横切り反対側の岩の壁に突き刺さった


「···っとにあんた魔力無いんだから先陣切んじゃないわよ!!!」

「さっきさっちゃんが先陣切れって言ってたじゃん!!!てか木が岩に刺さってるよ!?」

「魔力付与された木の矢ですか···流石魔法の起源の地ですね」

「···ねぇウル、あんた徹に向かって伸びる黒い光みたいなん見えた?」

「え?いや···見えないですけど···」

「···じゃあこれもあたしの能力なのかね」

「へ?」

「なんでもないわ、徹あんた後ろからついてきなさい、あたしが前行くわ」

「え」

「···なによ」

「いや、珍しいこともあるんだなって思って」

「"ボール"」ボッ

「あっつ!?ちょ···それ本物の炎じゃん!!!そんなの人に向けて撃ったらダメだって!!!」

「やかましい!!!ウル!!!あんたも前よ!!!」

「は、はい!!!」




 地下に向かって広がっているダンジョンなだけあって階段がやたら多い、しかも一つだけならまだ良かったけどその階段が複数あってウル曰く正解のルートは一つしかないみたい、こんなんよく作ったわね古代人は


「軸から伸びているような感じじゃないんだね」

「ですね、まさに迷宮と呼ぶべきなんでしょうね」

「ぶっ壊して進みたいぃ···」

「まだ調査進んでないんだから壊しちゃダメでしょ」

「戦いづらいわね···」

「···まぁ魔物もそりゃ住み着くよ、人の手が及ばないもん」

「てかあんた武器どうすんのよ」

「どうしよっかなぁ···前は木の棒でなんとかなったけど、···んー最悪魔物が持ってたらそれ使おっかな」

「···あんたの場合それが出来るから怖いわよね」

「なんでよ···」

「···!二人とも···!伏せてください···!」

「なによウル、あんた急に···」

「いいから伏せて···!!!」

「ったく、女神が何にビビって···」


 ズゥン···!!!


「···何この地鳴り···!?」

「だいぶデカイね···」

「···どうしてこのダンジョンに···!?」

「どうしたのよ」

「···この地鳴りを起こす魔物はあそこにいます」

「···!?」


 ウルが指さした先にいたのは無数の触手を持った六足歩行するとてつもなくデカい魔物、見るからにヤバいのがわかる···けどウルあんた女神なのに何をビビる必要があんのよ


「···ウルさん、あの魔物は?」

「···通常このような遺跡ダンジョンには生息していない高討伐レベルの魔物、テンタクルズです」

「···なんであんな気持ち悪いのばっかいんのよ」

「···まぁ確かに僕から見てもあいつはヤバイってのはわかるよ」

「とにかくテンタクルズに気づかれないように行きましょう」

「わかった」

「バトったらダメなの?」

「テンタクルズの触手には神経毒があるので刺されると厄介です、一応私解毒魔法を覚えてますけどこの先の為になるべく戦わないように行きましょう」

「わかった、さっちゃん大声出さないでね」

「なんであたしに言うのよ」

「一番声出しそうだし」

「ほんとぶっ飛ばすわよ」


 言われた通り触手の化け物に気付かれないように息を殺して進む


「···ウル、この状況で言うのもなんだけどさ、あんた気配消すような魔法とかないの?」

「···ありますけど」

「あるならなんで使わないのよ」

「すみません忘れてました···」

「ほんとあんた女神なんだからしっかりしなさいよ!!!」

「さっちゃん静かにしてってさっき言ったばっかじゃん!!!」

「···!!!」

「···ねぇウルこれってもしかして···」

「もしかしなくても···」

「オォオオオオン!!!」シュルシュルシュル···

「···に、逃げてぇぇぇぇぇっ!!!」

「ひぎゃあああああああああああああああああああ!!!気持ち悪いいいいいいい!!!」

「···」カランッ

「徹!!!あんたぼさっとしてないで···」

「···ウルさん回復よろしくね」

「えっ···」


 タンッ···


「···」グッ···ブンッ


 ズババババババッ···!!!


「···(シュタッ···)···よしっ」ブンッ

「(バララララッ···)オォオオオオン!?」

「んなっ···!?」


 触手の化け物に気付かれ逃げようとしたら徹はその場に落ちてた木の棒を握りしめて化け物に立ち向かった、毒のある触手に臆することなく木の棒を振り回し着地して持ってた木の棒を降った瞬間化け物に着いていた触手の九割が切り落とされた


「···さっちゃん、ウルさん、炎出せる?」

「え···えぇ···」

「早く!」

「言うてあたしまだ"ボール"ぐらいしか···」

「"ネオパイラー"!!!」

「!!!」


 ゴォオオオオオオオオッ!!!


「オォオオオオン!!!!?」

「!効いてる···!」

「やっぱりね」タンッ

「徹!」

「···らァ!!!」ブンッ···

「(ズバァッ)···ォ···オ···オ···オ···」


 ズズゥン···


「(シュタッ)···思ったより苦戦しなかったね」

「え、···えぇ、そうですね···」

「嘘ぉ···」


 つい数分前まで手強いから避けて通ろうとした化け物をいとも簡単に倒してしまった、というか···徹の頭の中どうなってんのよ


「···トオルさん、どうして···?」

「なんとなく、かな」

「なんとなくで倒せるもんじゃないでしょ···」

「そうなんだけどさ、なんかいけんじゃないかなって」

「···魔力が無いのにどうして弱点がわかったんでしょうか」

「なんとなく燃えやすいんじゃないかなって、ほら、触手だらけだから」

「···それだけでいけるもんなの?」

「まぁいいじゃん、これで探しやすくはなったんだから」

「確かにそうですね、では急ぎましょうか」

「ほら、行こさっちゃん」

「···なんか癪に障るわね」

「なんでよ···」


 ···こっちに来てから徹があたしよりも目立ってんのが癪に障るけどその分はあとにとっとけばいいのか


 テンタクルズを倒して遺跡の奥深くまで入るが、そのお姉さんらしき人物がいるっていう気配は全く感じない


「···だいぶ深くまで来たけど一向に見つからないね」

「ですね」

「···それよりあんた達に一つ言いたいことがあんだけど」

(ですか)?』

「あんた達足下に転がってんの見て何とも思わんのか!!!ヒィヤアアアッこっちにも落ちてる!?」

「さっちゃん落ち着いて」

「落ち着けるか!!!」


 ···遺跡だからなのか奥に進めば進むほど足下に増える白い粉、その粉が更に奥に進めば塊となりまた奥へ進めばその粉の正体がわかる、鎧や服を着たもの、矢が突き刺さっていたのか穴の空いているもの、それがこのダンジョンにやられた者達と気づくまでにそう時間はかからなかった


「···このダンジョンの犠牲になった先人達よ、どうか安らかに眠れ」

「···前に行ったマルウ渓谷よりもよっぽど難しいんだね」

「いやぁあああ呪われる!!!絶対呪われるわこんなん!!!」

「落ち着いてって、···ウルさん、これ見ておかしいと思わない?」

「···確かに、まだ形が残ってるものはわかりやすいですね」

「何がよ」

「骨にまでこんな切り傷普通入るかな、このダンジョンにいる魔物でここまで鋭利な武器を持った魔物いるかな」

「···さっきのテンタクルズでしょ?あと雑魚のスライムだったり···」

「しかもこの傷相当な力でやらないと入らない位置の骨に入ってるし」

「···まさか···」

「ウル?」

「···いや、なんでもありません、急ぎましょう」


 そうして進んだり引き返したりを繰り返しながらダンジョンの奥まで辿り着いた、···けど


「···どこにもいないね」

「虱潰しに行ったのよね?なんでいないのよ」

「わからないけど···」

「···それにしても奥に行けば行くほど多くなってくるね、先人達の死骸」

「···これ動き出したりしないわよね?」

「···まさかね」

「とにかくこれ以上は進めませんし一旦戻ってみましょうか」

「···そういや徹の言った通り盗賊団なんて一人もいなかったわね」

「途中にいた布の服を着た死骸が多分そうなんじゃないかな」

「あっそう、で、どうやって戻んの?脱出専用の魔法とかあんの?」

「ありますけどあくまで私達は応援要請で来たんですから当事者を探さないと、まだ見落としているところもあるかもしれないですし」

「そうだね」

「えぇー···また戻んのー···」

「早くあの子のお姉さんを見つけないといけないですし」


 そうして戻ろうと階段の方に踵を返した時だった


 ···カタッ


「!」

「徹?どしたの?」

「···どうやらさっちゃんの言った通り普通の死骸ってわけじゃなさそうだね」

「は?」


 カラッ···カラッ···カタカタカタカタッ


「ひぃ!?」

「···ウルさん、これも魔物かな」

「みたいですね、死者が魔物化するというのは聞いてはいましたが現物を見るのは初めてです···!」


 物音と共に一斉に動き出した先人達の死骸、映画で見た事ある死者がひとりでに動くというのを今目の前で見ている


「···さっちゃん、炎で鞭みたいなの作れる?」

「鞭って···形をイメージすればいいんだっけ!?」

「はい!」

「なら···鞭···鞭···」


 ボゥッ!!!


「っしできたァ!!!」

「じゃああとさっちゃんお願い!」

「おるぁああああああ!!!天に帰れェえええええええええええ!!!」ブンッ···


 ボォオオオオオオッ!!!


「···っよし」

「何その掛け声」

「気色悪いのよ!!!骨だけならまだしもちょっと残ってるやつもいるし!!!」

「とにかくここを出ましょう、緊急脱出で···」

「···いや、まだいる」

「え···?」

「どこじゃぁああああ!!!天に帰したるわぁあああ!!!」

「さっちゃんちょっと黙って」

「あ?」

「···」スッ···


 ···ザッ


「二人とも階段まで走れる?」

「え、一応まだ体力あるけど···」

「全速力でこのフロアから出よう、今ので起こしちゃったみたいだよ」

「何を···」

「いいから走って!!!」

「なんかよくわかんないけど、ウル!!!走るわよ!!!」

「は、はい!!!」


 何かの気配を感じとった徹が初めてあたし達に命令をくだす、向こうでは説得力の欠片も無い徹の命令は今この場では物凄い説得力がある


「···で、あんたは一体何を感じたの!?」

「魔力とかそういうのじゃないんだけど明らかに魔物のものじゃない殺気がね」

「魔物のものじゃないってどういう事ですか!?盗賊団は魔物化してますし!」

「···これは最悪の可能性なんだけどさ···」

「もったいぶってないでとっとと話せ!!!」

「···さっきウルさんが言いかけた可能性と多分一致してると思うけど···」


 徹が話を続けようとした時


「···!トオルさん!!!」

「!」スッ···


 ガキィイインッ!!!


「っ···!!!」


 頭上から降ってきた一つの影、その影を木の棒で弾く徹だけど勢いがあったために少し後退りしている


「···」

「···っ」ブンッ···

「···」バッ···シュタッ

「徹!!!」

「···やっぱり、どうりで()()()()()()わけだよ」

「帰ってこない···ってあんた何言って···」

「···深緑ランクのクエストにしては上級ランク持ちの冒険者がクリア出来ない理由、それがまさか···」


 ザッ···ザッ···


「···メルさんのお姉さんが黒幕なんて···!!!」

「はぁ!?」

「あの人で間違いなさそうだよ、ほらペンダント持ってるし」


 徹に襲いかかってきた影、その正体が探していた人物だなんて···


「そりゃあどんなランク持ちの冒険者が来ても上から五番目のランク持ちのあの人と戦ったら負けるよね」

「負けるよね···って、何をそんなお気楽に言ってんのよあんたは!!!」

「···あれは魔物化してるんでしょうか···?」

「いや、魔物化してるんならさっきのヤツらみたいになってるはずだし何より力と身のこなしは相当鍛えられてるよ」

「···となると寄生されてるんでしょうか」

「寄生?」

「その名の通り魔物に操られる事です、魔物に操られてしまえば自分で抜け出す事は不可能、自我も失われますから救援要請もできない状態になってしまうんです···」

「そんなんどうすんのよ!どうやってメルのお姉さん助ければいいのよ!!!」

「···助け出す方法はただ一つ」


 ダンッ!!!


「っ!!!」サッ···


 ギィンッ!!!


「···」

「···っ!!!」ブンッ

「···」サッ···


 バッ···トッ···シュタッ


「···」

「···寄生された者を気絶させ、寄生元を叩かなければなりません···!!!」

「···白ランクを···気絶させる···!?」


 交戦する徹を見てもわかるけど間違いなくメルのお姉さんは強い、それをまだペーペーのあたし達が気絶させる···!?


「徹!!!逃げるわよ!!!あたし達の手に負えるもんじゃ···」

「···」

「トオルさん!?ここは一旦体制を整えて···」

「···」スッ···

「トオルさん···?」

「···ウルさん、寄生元どこだか見える?」

「えっ?えっと···」

「···まぁいいや、見つけといて」

「わ、わかりました!!!」

「···少し本気出そうかな」

「!!!」


 徹が好戦的になっている、普段喧嘩する時とか昨日···もう一昨日か、その時あのむかつく冒険者を投げた時とかも好戦的になる事は無い、コミュ障の徹は他人と一緒にいる事も緊張してできないけれど今の徹はやたら好戦的にメルのお姉さんを見ている


「···木の棒でいけるかな···大丈夫か」

「トオルさん気をつけてくださいね」

「···」

「···」


 ダンッ···ギィンッ!!!


「···」グググッ···

「···」ミシミシミシッ···

「···」コォオオオ···

「···」サッ···


 ガッ···


「···」

「···っ」バッ!

「!!!」サッ···

「···(ニヤッ)」ブンッ


 ガンッ!!!


「!?」

「···っし、当たった···!!!」

「···トオルさんすごい···白ランクの冒険者と対等にやり合ってる···」


 ···確かに徹は喧嘩最強だ、でもそれは喧嘩だけであって戦闘···それも武器を使ったものは初めてのはず、しかも徹は木の棒で相手は鉄の剣という圧倒的なハンデが着いている、いくら喧嘩が強く相手が女だろうとこっちでの実力の差は歴然だ


 それでも徹は対等にやり合っている


「···あんたほんと···なんなのよ···!!!」

「···ウルさん場所わかった?」

「はい!寄生元は左の脇腹付近です!!!」

「···じゃあ鎧を剥がさないとダメかな、さっちゃん魔力付与ってできるんだっけ?」

「えっ?できるけど···」

「じゃあお願い、鎧砕けるほど硬くして」

「砕ける程って、あんたそれミスったらあの人が危ないじゃない!!!」

「大丈夫、絶対失敗しないから」


 ここまで真剣な顔をする徹を見たのは、幼馴染みのあたしでさえも見るのは初めてだ


「···あぁもう!!!絶対ミスんじゃないわよ!!!」

「当然···!!!」

「"硬化付与レベル5"!!!」

「···」ダンッ!!!

「···こんな所で暴れてないで···!!!」ダンッ


 コォオオオ···キィン!!!


「(ガッ!!!ミシミシミシッ···)!?」

「···早く妹の所に帰ってあげて···!!!」


 ガッ···ドッ···ズシャァッ···


「···うまくいったの···?」

「···どうだろう、まぁでも」


 トンッ···バララッ


「寄生元は潰せたみたいだし」


 徹の木の棒が貫いたメルのお姉さんの脇腹、砕けた鎧の下には貫かれた魔物の一部がちょうど体から離れたところだ


「···ふぅ、死ぬかと思ったぁ〜···」

「それはこっちのセリフだバカ!!!何を一人で片付けようとしてんのよあんたは!!!作戦聞いてたからよかったけどあんたコレあたし達じゃなかったらありえないくらい危険な掛けなんだからね!?」

「ごめんて、それよりウルさん、お姉さんの方は?」

「···大丈夫です、かなり寄生されていたようですが命に別状はありません」

「よかった、なら目的も果たしたし脱出しよっか」

「それもそうね、こんなとことっとと出ましょ」

「待ってください二人とも、盗賊団を壊滅させた証拠を···」

「メルちゃんのお姉さんが持ってるよ、ほらウルさん緊急脱出して」

「わかりました、さっちゃんさんちょっと魔力貸してください」

「無いんかい」




 ガラガラガラ···


「···んっ···」

「お、ウルー起きたわよー」

「···馬車···」

「ほんとに大変だったのよ?あんたを助けるの」

「あなた達は?」

「私達はあなたの応援要請に来た者です、私がウル、こちらがさっちゃんさんことサユミさん、そして寄生されていたあなたを救い出したトオルさんです」

「···私は寄生されていたのか」

「まぁ自我も失われんだから当たり前よね」

「それより盗賊団はどうなったんだ!?」

「盗賊団ならあなたの手で壊滅させられてましたよ」

「そうか···」

「···」

「···トオル、私を助けてくれてありがとう」

「···」コクッ

「言葉返せコミュ障」

「いやいや、メルちゃんのお姉さん僕らよりも歳上じゃん···」

「だからってねぇ···」


 ウルの緊急脱出でダンジョンから抜け出しあたし達は一路ギルドに戻る事に、また日付変わってるけどもういいや、あんまし寝る気にならないし


「···メルを···妹を知ってるのか?」

「知ってるも何も、メルがあんたを助けてってあたし達に頼んできたからね、深緑にランクアップしたばかりのあたし達に」

「深緑!?」

「まぁ驚きますよね、二人に至ってはまだ冒険者になって二日目···もう三日目ですか」

「···さっき私は寄生されていたと言ったな?」

「えぇ」

「それならトオルはどうやって私を気絶させたんだ?」

「···」

「だから喋れっての、コミュ障発動すんな」

「えぇー···ただ普通に戦っただけだって」

「···」

「皆さんマノウハルスに着きますよ」

「やっと寝れる」

「なによ徹、もうバテたの?」

「そりゃさっちゃんあんま動いてないから眠くないだろうけど僕テンタクルズもやってんだからね!?」

「テンタクルズもか···!?」

「もうその話はギルドに着いてからにしましょう、メルさんが待ってますよ」


 本来いるはずのない魔物と魔物による寄生、その二つの現状を受け止めつつもあたし達の元の世界に戻るための冒険は続く


「メルー!!!」

「!!!お姉ちゃん!!!おかえり!!!」

「···ねぇウルさん、今思ったんだけどさ、僕らこのギルドに所属してるのはいいけど拠点とかどうするの?」

「···あ」

「"あ"って何よ"あ"って」

「すみません、その事について一切頭に入れてませんでした」

「···」

「ウルぅうううううう!!!」

「すみませんすみません!!!ほんとにすみません!!!」

「じゃあ何!?あたし達しばらく野宿か!?」


 ···GO TO NEXT ADVENTURE?

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