★誰も選べない
誰かを選ぶなんてできない。
ラフィ、ムートン、リオン。
三人ともケンにとっては大事な彼女達。
――ああ糞ぉ、マルゴの奴! 最後の最後に罠張りやがって!
誰にするか? やはりずっと一緒にいたラフィか?
いや、真っ直ぐな愛情を伝えてくれたムートンにすべきでは?
リオンとは正直に向き合うと決めた。
――どうする? 俺は誰を選んだら……!
「ケンさん、凄く悩んでますね。なんか可愛いですよ?」
ラフィはクスリと笑い、
「だねぇ。いつもは強気な癖に、こういう時って子供みたいに戸惑いますよね、ケンさんって。こういう初心なところ、ギャップがあっていいんですけどね」
ムートも笑みを浮かべてそう云った。、
「ガキ! ケン、餓鬼ー!」
リオンはぴょんぴょん跳ねながらそう叫ぶ。
「ああ、わりぃみんな。こんなときばっか決められなくてよ……」
肝心な時に優柔不断な自分に、ケンは苦笑いしか浮かべられないかった。
「でもそんなみんなに優しいところこそ、わたしたちが好きになったケン=スガワラですよ!」
と、ラフィの笑顔に救われる。
幸福は絶頂を迎え、ケンは改めて彼女達の存在にありがたみを感じるのだった。
「「「ケンさん!」」」
ラフィ、ムートン、リオンは一斉に飛び出し、ケンへ飛びついてきた。
ケンは大きく腕を開き、彼女達を優しく抱き留めた。
「必ず幸せにする。だから絶対に帰って来よう。またここへ、俺たち四人で!」
明日はこの世界の命運をかけた最終決戦。
しかし恐れることはない。
ケンには彼女達が、そして彼女達にはケンがいるのだから。
式場は万雷の拍手に包まれ、彼らを祝福する。
――必ず帰る。そして彼女達を幸せにする。必ず!