★リオンを選ぶ
子供だと思い勝手に遠ざけようとしたリオン。
しかしグレモリー迷宮で彼女の内に秘められた悲痛な想いの叫びを受けて、ケンの気持ちは変わった。
この子が彼のことを思うならば、彼もその想いに応えたい。
「リオン、来てくれ」
「えっ……?」
リオンはまさか、といった顔でケンを見上げた。
「リーちゃん、行って!」
「行っておいで、リオンちゃん!」
ラフィとムートンに背中を押されて、リオンはよたよたと前へ出される。
すかさずケンはリオンの身長まで屈んだ。
「……あう~……」
恥ずかしさと戸惑いの間で、リオンは揺れ動いているのか、ケンから視線を逸らしていた。
だからこそ彼女を安心させるべく、華奢でまだまだ成長の余地の残る、幼い肩を抱く。
リオンは一瞬、ビクンと身体を震わせた。
「リオン、俺のこと好きか?」
囁くように問いかける。
リオンは視線を逸らしたまま、僅かにコクリと頷く。
いつもの元気がない。もしかすると仲間外れにするのが可哀そうで、今この場に呼ばれている。そうリオンが思っているのではないかとケンは思う。
――そんなことは無い。俺はきちんとリオンとも向き合うって決めたんだ。
もはやこの期に及んで本当のことを口にしないなどもっての外だった。
恥ずかしかろうと、情けなかろうと、ケンはリオンに対して思っていたことを包み隠さず、全て伝えると心に決めていた。
それを伝えることは自分のためでもあり、リオンのためである。
だからこそケンは口を開いた。
「正直に言うよ……俺もリオンのことが好きだ。でも自信が無かったんだ。お前の好きが本当に俺のことを好きって気持ちなのか。ただ恩を感じて、勘違いしてそう言ってるだけなんじゃないか。そんな勘違いを利用して、お前の大事な気持ちを汚しちまうんじゃないかって」
何を言い訳がましい、小難しいことを言ってるんだろうと内心、苦笑するケン。
するとリオンは柔らかな笑みを浮かべて、
「恩じゃない」
「えっ……?」
「僕、ケン好き。強くて、優しくて、カッコいいケンが好き。ラフィとムーが感じてる同じ好き。だから自信持つ。大丈夫、僕の気持ち本物。嘘じゃない」
熱い思いがこみ上げる。目の前にいるのは少女じゃない。
これからも愛し、守ってゆきたい大事な女性。
ケンはリオンへラフィやムートンへ抱くのと、まったく同じ感情を抱き、胸を焦がした。
「だから僕待つよ? ケンが勇気をもって僕を受け入れる、その日まで!」
「ありがとう、リオン」
にっこり笑顔のマルゴは真っ赤なリングピローをケンとリオンの前へ差し出す。
二人はそれぞれ指を手に取って、左手に薬指に嵌めて行く。
ムートンは優しい笑みを浮かべて、ラフィは目を煌めかせていた。
ケンはリオンの小さな肩を抱いて、頬へ優しくキスをする。
そしてリオンも同じようにケンの頬へ、まだ未発達な唇を添えてきた。
「いつかこの続きして、ケン!」
「ああ、必ずだ」
「あう! 約束! あーとか、うーとかする!」
幸福は絶頂を迎え、ケンは改めてリオンの存在にありがたみを感じるのだった。
「「「ケンさん!」」」
ラフィ、ムートン、リオンは一斉に飛び出し、ケンへ飛びついてきた。
ケンは大きく腕を開き、彼女達を優しく抱き留めた。
「必ず幸せにする。だから絶対に帰って来よう。またここへ、俺たち四人で!」
明日はこの世界の命運をかけた最終決戦。
しかし恐れることはない。
ケンには彼女達が、そして彼女達にはケンがいるのだから。
式場は万雷の拍手に包まれ、彼らを祝福する。
――必ず帰る。そして彼女達を幸せにする。必ず!




