私も、戦う
アルバがくれたミニタオルでありがたく顔を拭いてみると……なるほど、これは酷い。社会人としてあるまじきだわ。
「もうこやつ、グレンのところに着くまで気絶させておいた方がマシではないか?」
「いや、相手はゴーストだからな、キッカの浄化がないと正直厳しい」
こっちが顔を整えている横で、ハクエンちゃんとアルバが真剣な顔で何やら話しているものだから、ちょっと聞き耳を立ててみれば、ハクエンちゃんの血も涙もない提案にアルバが真顔でそんなことを答えていた。
待ってよそれ、ゴーストじゃなかったら気絶させといた方がマシって意味だよね。二人とも割と酷くない?
「ううむ、攻略するとなると意外に厄介だな、グレンの奴め。我の牙も実態のないものにはさほど役に立たぬ」
「ハクエンは浄化の加護を授けてもらうわけにはいかないしな」
「不愉快だが、あの嫌味な賢者を呼びつけて露払いをさせるというのはどうだ?」
「それは最後の手段だろう、俺は自力でなんとかしたい。頼りっきりは信条に反する」
「わ、我とて彼奴になど頼りたくはないわ! 我はただ、つ、露払いをだな」
「だろ? ズルしねえで頑張ろうぜ」
ハクエンちゃんの頭をモフモフと撫でて、アルバがよいしょと立ち上がる。完全にハクエンちゃんを押している……アルバ凄いな。
感心してみていたら、アルバが私の視線に気づいて僅かに目を細めた。
「落ち着いたみたいだな。キッカ、そろそろ行けそうか?」
「行くわよ。浄化がないと正直厳しいんでしょ」
若干睨みつつそう答えれば、アルバは「悪いな」と悪びれもせず笑い返してきた。
「戦闘時に剣に浄化の加護さえかけてくれれば、あとは俺が責任持って倒すから」
任せとけ、と微笑まれればさすがに文句は言えなかった。
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気合を入れなおして、薄気味悪い城を黙々と進んでいく。
行く手を阻むように結構な頻度で出現するゴーストは、宣言通りにアルバが殲滅してくれた。ゴーストに遭遇するたびに、私は悲鳴を上げながらアルバの剣に浄化の加護を与えるだけ。
なんとか大広間を抜け、蔦の生い茂る中庭を抜けたら二階への階段が現れる。
だだっ広い一階とは打って変わって、二階は迷路のように入り組んだ狭い通路が折れ曲がりながらどこまでも連なっているような……そんな空間だった。
そして、魔物もじょじょにゴーストに加えてゾンビやグールといった形あるものが増えてきている。
「キッカ、下がってろ!」
「私も戦う! 大丈夫よ、もう慣れた!」
私を制するように叫ぶアルバに、私も負けじと怒鳴り返した。
本当は怖い。
足が震える。
でも、もう黙ってはいられなかった。
だって、さっきからアルバ、顔色がどんどん悪くなってるじゃないの。




