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【書籍化】帰れない聖女は、絶対にあきらめない!  作者: 真弓りの


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宿屋の夜

深夜も深夜、日付が変わってたんじゃないかってくらいの時間に宿を探したせいで、やっと落ち着ける宿の部屋についた頃には二人ともかなりぐったりしてしまっていた。


なんせ砂漠で空気はカラッカラに乾燥してるし、深夜過ぎて通りを照らす明かりすらほとんどない。こういうとこがやっぱり日本とは如実に違うよね。どうしたって闇が濃い。追手を撒いて逃げてきた身でその中を歩くのは、精神的にとても疲れる事だった。


部屋につくなり、置かれた水差しがカラになる勢いで水を飲む。部屋に備え付けの洗面所で砂っぽくなった顔を洗っていたら、その僅かな合間にアルバはぐったりとベッドに長くなっていた。



「げ、寝ちゃった?」



小さく呟くと、腕で目を押さえたまま、アルバが小さく呻く。


「……いや、大丈夫だ。すまん、ずっと強行軍でルディまで連日馬を飛ばして来たからな。安心した瞬間、ちょっと寝落ちた」


「なんとなく察するわ」



その間の寝ずの番も、リーンとグレオスと、このアルバの三人で八割がた回したに違いない。なんせダメダメ第二王子とクルクル金髪巻き毛は押しも押されぬおぼっちゃまなのだから。


それにしてもアルバったら、一瞬寝落ちても瞬時に覚醒できるのは、さすがに冒険者ならではといったところだろうか。



「悪かったな、その……急かして無理やり転移させちまって」


「あそこで気付かれて王子達に止められたらアウトだったから、むしろ助かったよ。ありがとう……ただ、心残りはいくつかあったかな」


「領主の娘か」


「うん、それもある。治せるか分からないけど、可能性はあると思うの」


「そうか……」



そう呟いて、少しだけアルバは考え込んだ。



「王子達も俺達を追ってまたすぐに旅にでるはずだ。二週間も経ちゃあそう簡単にはあの町に戻れないだろうから、ほとぼりが冷めてから行った方がいい」


「随分と用心深いのね」


「お前の思い入れが深い人物だと認識されると厄介だ。そこまでするとは考えたくないが、人質にとられたりすると手が出せなくなるだろう、お前」


「人質!?」



あまりの互換語感の凶暴さに、ちょっとうろたえる。



「え、ちょっと待って。なんでそんな……人質とってまで? 聖女の子孫ってそこまで重要なの?」


「少なくとも王とその側近はそこまで重要だと思ってるな、間違いなく。お前が転移で王城から逃げた時の剣幕なんか魔王降臨したのかと思ったぞ。じゃなきゃ王子や宰相子息自らがわざわざお前を追いかけては来ないだろ」


「うわー……」



つくづく王たちの思惑に従った結婚なんて、絶対にしたくない。聖女の人権はどこに廃棄されてるんだろう、この国ときたら。



「だとしたら、リーンが心配だな。やっぱり一緒につれてくればよかった」


「おい。お前さっき俺のこと、連れてくる気なかった的な事、言ってなかったか? リーンはいいのかよ」


「アルバもグレオスも、本当はリーンも、巻き込む気なんかなかったよ。でもリーンは封呪を破られたって事になるなら、立場が悪くなっちゃうじゃん」



酷く責められるんじゃないかと心配する私に、アルバは苦い顔でこう嘯いた。



「罵られようと懲罰をうけようと、今はこうするしかない。あいつこそ、人質をとられてるようなもんだから」


「……どういう、事?」



初めて聞く話に、私は動揺を隠せない。聞き返さずにはいられなかった。

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