表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/116

もう用はないでしょう?

「まあいいじゃない。考えてもみなよ、ここにはこの国で最高の男達が揃ってるんだ、そう悪い話じゃないんじゃない?」



クルクル金髪巻き毛が指し示すのは、浄化の旅を共にした仲間達。


騎士団一の実力者だという精悍な騎士グレオス、高名な魔術師だけどまだ幼さの残る可愛いリーン、そしてトップクラスの冒険者だったアルバ。



「君は世界を救った聖女なんだ、誰も嫌だなんて言わないし大事にするさ。安心して選ぶといい」



王の御前で顔を上げる事をまだ許されていない三人の表情を窺い知ることは出来ないけれど、彼らをこんな茶番に巻き込むなんて考えたくもない。


望んでもいない結婚を強いるなんて、さすがにそんな趣味ないわよ。



「さすがにルッカス様と結婚するには君は品が無さすぎる。なんなら僕が結婚してやったっていいけど」


「ロンド! なんという……もういい、お前は下がっていろ」



ルッカス様が慌ててクルクル金髪巻き毛を諌めるけれど、もう遅い。


プチン!と私の中の何かが切れる音がした。



「ふざけんな……」


「え? なんか言った?」



キョトンとした顔で、クルクル金髪巻き毛が問う。その顔が、さらに私の神経を逆撫でした。



「ふざけんなって言ったのよ! あんた達の中のだれかと結婚するくらいなら、ドラゴンの口に身投げした方が万倍いいわ!」



怒りで沸騰した体は、急にシャキンと元気になった。素早く立ち上がった私は、腹立ち紛れにサークレットをクルクル金髪巻き毛に思いっきり投げつける。


いつだったか「僕らと一緒にいる癖にみすぼらしい格好、やめてよね」なんていうイヤミとともにつけさせられた屈辱の一品だ。こんなもの、もう一瞬たりとも身につけていたくない。



「痛たっ! 何するんだ!」



声を荒げたクルクル金髪巻き毛が、飛んできた物体を目にして僅かに息をのんだ。



「これは」


「返すわ。これも、これも。もう要らない」



ルッカス様に貰った髪飾りも、騎士のグレオスに貰ったチョーカーも、この謁見のために飾り付けられた似合わない飾りも全部、全部投げ捨てる。


王の御前だとか、そんな事ももう関係ない。私は完全にキレていた。



「待て、キッカ! 話を聞いてくれ!」


「キッカさん、違うのです! 私は」


「おい、俺も……!」



一緒に旅した男達が口々に何か言うけど。


うるさい、もう誰の声も聞きたくない。


さすがにドレスと靴は脱げないけど、不要な物を脱ぎ捨てて随分と私らしくなったじゃない。せいせいしたわよ。



「さよなら。もう用はないでしょう?」



その一言だけを残し、私は転移魔法でその場を瞬時に立ち去った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【8月1日発売 書籍化作品】

よろしければこちらからどうぞ(^-^)

『自称魔王にさらわれました ~聖属性の私がいないと勇者が病んじゃうって、それホントですか?』

たくさん加筆しましたし、山下ナナオ様によるイラスト・挿絵はもう垂涎モノでございます!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ