どうしてあなたが?
「すみません、時間がないから入りますね、キッカさん」
囁くような声とともに扉から滑りんできたのは、魔術師のリーンだった。
「何の用よ」
優秀な貴方の封呪のせいで、私逃げられずにいるんですけど。……という気持ちをしっかり込めて、私は恨めしげに下から睨みあげた。
旅の間も、クルクル金髪巻き毛の暴言に一緒に怒り、時には私よりも先に涙してくれた彼は、もうすぐ20歳という年齢の割にまだ少年のような外見も相俟って、私にとっては可愛い弟分。癒しの存在だったんだ。
心折れそうになるといつだって励ましてくれた。「絶対に生きて日本に帰るんだ」って呪文みたいに唱える私をいつだって応援してくれた。
それだけに、彼に縛られているのが無性に悲しい。
でも、本当は分かってるんだ。彼にだって立場があるってことくらい。でも、睨むくらいは許されるだろう。
そんな私に、リーンはなぜか困ったように微笑んだ。
「そんなに警戒しないで。大丈夫、僕、キッカさんを逃がしに来たんです」
「えっ」
思いもかけぬ申し出に、私は目を大きく見開いた。そう言い切ったリーンの顔は真剣そのもので、とても冗談を言っているようには見えない。
「キッカさん、よく聞いて。この石が青く瞬いたら、アルバを連れて転移で遠くに逃げてください」
「え……ちょっと待って、どういう事」
「ゆっくり説明してる時間がないんです、今は逃げる事だけ考えて。あとでアルバが説明してくれます」
「え、じゃあリーンはどうするの?」
「僕はまだ調べる事があるから。キッカさんを日本に返す手段が見つかったら、また連絡します。その石が青く光るのを楽しみに待ってて」
私の手の中に無理やり小さな石がついたペンダントを握りこませると、ローブを翻して扉を出て行こうとする。
「待って! そんな事したらリーンの立場が悪くなるんじゃないの?」
「封呪が破られた、聖女の力は偉大だとでも言っておきます」
そう言って笑ったリーンは、また急に真剣な顔をした。
「キッカさん、今はとにかく逃げて。絶対に僕が、キッカさんを日本に返すから」
「ちょ……」
「ばか、部屋から出るな。バレたら厄介だ」
あっという間に部屋を出て行ったリーンに思わず伸ばそうとした手を、入れ替わりで部屋に入って来たアルバが掴み取った。
「どうやってんだか知らねえが、王子とボンボンはお前の居場所が分かるらしい。部屋から出たら飛んでくるぞ」
ひえっ……なんだそれ。
「リーンが部屋に戻ったらすぐに連絡がある。それまで待機だ」
「ちょっと待って、なんか状況が全然掴めないんだけど」
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