最悪すぎるんですが
なんかすみません……イライラMAX回かも。
「私、ハッキリ言ったと思うけど。あんた達と結婚する気ないって」
「すまないが君の気持ちがどうあれ、聖女である君が私達の中の誰かと結婚し子をなすのは、古来からの決定事項なのだ」
「…………」
乙女にあるまじき、白目を剥くかと思ったわ。
なにその古式ゆかしい、人を人とも思わぬ決定事項。ドッキリじゃないよね、いやまさか、本気でそれ言ってんの?
見なさいよ他の三人、あちゃーって顔してるじゃない。誰がどう見たってその言い分、おかしいからね?
「君の中の浄化の力が、そして子に引き継がれる聖なる力が、この地が魔に呑まれる事を緩和する。聖女である君が、この地で子をなすことが重要なのだ」
「うわぁ……脱力するレベルで最低だな」
多分、私。
今、魚が死んだような目をしてると思うわ。はからずも心の声もストレートに出ちゃったし。酷い酷いと思ってはいたが、この国、ここまで狂ってんのか。
「君がそう思うのも無理はない。しかしこの世界にとって、これはなくてはならない事なのだ」
「……聖女は旅が終わったら結婚して子供を産んで、この世界で幸せに暮らしましたって伝説の真相がそれ? うわー、ないわー」
「大切にする。君の望みは極力叶えるし、もうこんな風に傷だらけになって働いたり戦ったりする必要もない」
言葉が通じるのに、話って通じないもんだねえ。真剣な表情でなにやら言い募ってくるダメダメ第二王子の話は、もはや半分も頭に入ってこなかった。
なんかお腹の中が熱くてグネグネ渦巻いてる気がするけど、これって怒りだろうか。こいつのズレまくった主張を聞いていると血管が切れそうな気がしたから、努めて冷静に、言葉を発した。
「帰る手段の伝承がない筈よね、帰られたら困るんだもの。でも今の話で帰る手段はきっとあるってなんか自信持てたわ」
にっこり笑えば、ダメダメ第二王子は寸の間ポカンとした顔をして、すぐに「キッカ!」と必死な形相になった。
「今の話なら、私の子供がいればいいわけでしょう? 自分の相手くらい自分で見つけるわ。こんなところまでご苦労様、私に良い人ができるのを遠い空で祈ってて」
っていうのは方便で、なんかもう恋愛する気にもなれないけど。旦那や子供までこんなアホらしい事で苦労させるのなんか絶対に嫌だわ。
とにかく何でもいいからもう放っておいて欲しい。こいつらの考える事、悉く理解できないんだもの。
「……それは、だめだ。この五人の中でないと」
「へ?」
「ロンドが言っただろう。この五人はこの国でも最も優れた資質を持つものだ。聖女の聖なる力と優れた資質を併せ持つ子供が」
「トップブリーダーか」
なにその発想。なんか、すごいな。徹底してるっていうかなんていうか。
「言ってて最低だなって思わないの? 周りで聞いてるあんた達もさぁ、バカバカしいなって思ってるでしょうよ!」
言ってるうちにヒートアップしてきた。
だってさ、ダメダメ第二王子の言い分はそりゃもう腹わた煮えくり返るけどさ。
黙って聞いてる他の三人だって、自分の結婚、勝手に決められようとしてるんだよ? なにノホホンと聞いてるのさ!
「なんで黙って聞いてんのよ! そんなに王家が怖いのか! それとも世界のためなら仕方ないとでも思ってんの!? なんとか言いなさいよ!」




