なんで来たのよ!
「大丈夫です! 成功しました!」
「でかした、あとで褒章をとらせよう」
扉から颯爽と入ってきた姿を見て瞬時に転移を試みたけれど、案の定封じられて跳ぶことはできなかった。
応戦しようとこっちも扉に寄っていたばかりに、すぐに退路を絶たれたのは手痛い誤算だ。
「すみません、キッカさん……」
消え入りそうな声でリーンが赦しを請うけれど、私はあえて視線を合わせない。第二王子の指示だろう事なんて会話の流れで分かるけど、だからムカつかないかと言ったら、悪いけど普通にムカつくんだよ!
今は涙目で謝られたって腹立たしいだけだと断言できる!
なんなんだ、ハッキリ別れを告げて来たって言うのに、一体何の用があるんだよ。どうやって居場所を知ったか分からないけど、用があるなら伝令でも飛ばせばいいじゃない。
何も第二王子自らが、クルクル宰相子息だの筆頭騎士だの凄腕冒険者だの童顔魔術師だの引き連れて、わざわざ来る事ないじゃない!
言っとくけど私、全然赦してないんだからね!
言いたい事がたくさんあるのに、悔しくって言葉にならない。顔を見たせいであの時の怒りが再燃する。ついでにもりもりと盛り上がってきた涙を見せたくなくて俯いたら、目の前を影が過ぎった。
「恐れながら」
え……? 領主様?
「連絡もなく突然押し入ってのこの有様。如何様な理由かは存じませんが……彼女は善良で腕も立つ一介の冒険者です。賊のような扱いを受ける者には思えませんが」
驚きで思わず見上げたら、領主様は若干青ざめて額にもじんわりと汗が浮かんでいる。
ハッとした。
彼のような立場の人が、王族に真っ向から意見する事がどれだけ難しいか。ただでさえ財政的に困窮しているのに、私のせいで立場まで悪くするわけにはいかないよ。だって、奥様も病弱な娘さんも、そしてヴィオ達みたいにこの地に住む人も領主様の肩にかかってんだから。
「ありがとうございます、領主様。ご迷惑をかけてしまって、ごめんなさい」
一言詫びて、私は認識阻害の魔法を解いた。
「………! 貴女は」
「そう言う事だ。悪いが彼女と話がしたい、部屋を用意しては貰えぬか」
驚愕の表情を浮かべる領主様にすかさず指示を出す王子は、さすがに抜かりない。観念した私は、超まばたきして涙を引っ込めると、悔し紛れに声をだす。
「今更何の用があるか知らないけど、揃いも揃ってご苦労な事ね。さっさと用事を済ませてさっさと帰ってくれない?」
ツン、と澄まして言ってしまってから、私の脳裏にある事がひらめいた。
「も、もしかして、日本に帰る方法が見つかったの!?」
そうか! それならわざわざ来てくれたのも分かる! 生意気言ってごめんなさい!!!




