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は? え!? なんで!?

まさか、聖女だと気づかれた!?


領主様のあっけにとられたような顔に、知らず胸が高鳴って緊張で手汗が出てきてしまった。三か月以上も誰にもバレなかったからって、油断していたのだろうか。


おずおずと顔を上げたら、領主様は人のよさそうな笑みを浮かべた。



「いや、驚いた。まさか君のような華奢な女性が『キー・セイバル』君だとは。いつも依頼を受けてくれて感謝する」



脱力した。


なんだよもー! 驚いて損した。この数秒の極端な感情の上がり下がりをどうしてくれるんだ。絶対に寿命が若干縮まったと思うよ!?


心の中で文句を言ったけれど、もちろん口に出せる筈もない。社会人標準装備の営業スマイルをここでもしっかりと発揮し、私は無事に領主様の館に入ることができた。


まあさ、さっきはびっくりさせられたけど、なにしろここの領主様ときたら本当に根が優しいんだよ。


報奨金が少ない事を詫びてくれたし、それなのにいつも即決で受けてくれて品質もとてもいいと褒めてくださった。なによりジーンときたのは、娘さんへの愛情の深さ。


基礎体力が異常に低くてちょっとしたことでもすぐに熱を出してしまうんだそうで、食も細くて十歳を越えた今でもベッドから起きられる日の方が少ないんだとか。


なのに病因が分からない。酷く苦しんで暴れる夜もあるらしく、領主様も奥様もとても心を痛めているご様子だった。少しでも痛みを和らげられるように常に鎮痛作用の薬草を買い求めるのは、彼女のために出来る治療がそれしかないからなんですって。


こんなに大きなお屋敷なのに人気も少なくて、調度品なんか数えるほどだ。私たちが旅の途中で立ち寄った時よりもすごく閑散としている。


あの時も本職のメイドさんは少なくて、応援で来ていたヴィオともそれで知り合えたんだけど、確実にあの時より減ってるよね……娘さんのお薬代に消えたんだと思って間違いないだろう。


娘さんは今日も熱が出てしまったそうで会うことはできなかったけれど、私はなんだか同情してしまった。だって、ずっとずっとその子のために薬草を納入し続けてきたんだもの。


なんとか、してあげられないかなぁ……。


もしかしたら、私の浄化の力や回復魔法で、彼女を少しでも快方に向かわせてあげる事ができるかもしれない。


案内された書庫の中でひたすら本を漁りながらも、私はそんな事を考えていた。



淹れてくださった紅茶をゆっくりと口に含みながら、この町に伝わる伝承を纏めた本を読んでいた時だった。



「……?」



何か、外が騒がしい。


馬のいななき、複数人の乱れた足音。


必死で止めるような声。


私は本を閉じて、腰に佩いた剣に静かに手をかけた。賊ならば、この館で最も戦えるのは私だろう。


ここまで案内してくれた品のいいおじいちゃん執事さんの、うわずったような声が声が聞こえて、私は手遅れにならないようにこの広い書庫中央に置いてある机を飛び越え、扉へ向かって走った。


扉に手をかけようとした時だ、向こうから扉が勢いよく開かれた。



「すみません、キッカさん! 風よ、かの者の奇跡を封じよ!」



聞き覚えのある声がしたと思った瞬間、封呪の呪文で一瞬にして魔法が縛られた。


は? え!? なんで!? 何が起こったの!?

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