目覚めの時
俺は…普通の高校生だった。
いつものようにただ普通に過ごし、勉強して、部活して、帰ってゲームして、楽しく毎日を過ごしていたはずだった。
…が現在の状況は、
「はぁ!!」
勢いに任せて目の前のモンスターを蹴っ飛ばす。
その一撃でモンスターは絶命する。
「…帰るか」
拝啓、お母さんお父さんお元気ですか。
俺は今…ゲームのような異世界にいます。
時は遡り2か月前。
僕、高ノ宮 彰は学校に登校する途中だった。
いつも通り授業を受けて、部活して、帰ってゲームをすることを当たり前にしていた。
なのに…当たり前が突然変わってしまった。
「ふぁ~…」
あくびをして登校している途中、信号機の前で待っていたら子供が走っていったのだ。
「待って~!!」
「先に行っちゃうからねー!!」
「ばかっ…!!」
気付いたら自分も飛び出し子供を押し出していた。
最後に見たのは、目の前に大きく広がる鉄の塊と…
自分の体からぶちまけられた血液だった。
何も見えない…
どうなったんだっけ…
あー、そうか…俺は車に轢かれたんだっけ。
あっけない人生だったな。
「もう少し人生…楽しみたかった…」
涙が頬を伝う。
…涙?
そう言えば声も出てる。
「よかった!俺は生きてたのか!」
そうして思いっきり体を起こし、目を見開く。
そこには…広大な草原が広がっていた。
「………」
首を右に左に向けても見知らぬ景色。
「ここは…どこなんだー!!」
考えても答えが出ずしばらく歩き続けた。
しばらく歩くと道に出た。
「どっちに歩いていけばいいんだ…?」
一本道、右にいくか左にいくか。
しばらく悩んだいたら右から人が馬車に乗って歩いてくる。
(ラッキー‼ここがどこなのか聞いてみよう)
「あの…すいませ…」
止まった。
理由は2つ。
1つは人の後ろにある馬車を引っ張っているのはどう見ても馬じゃない。一言で表現するなら恐竜だ。
2つ目は乗っているのは人じゃない。一言で表現するなら半獣だ。
「どうした、人間の兄ちゃん」
「あ、いえ…」
「俺の顔になにかついてるか?」
「あの…町はどちらでしょうか…」
「町は今俺が向かっている方向に大きなところがあるが…乗っていくか?」
「お、お願いします!」
馬車に乗せてもらったはよかったが…
(人間じゃない!人間じゃない!人間じゃない!)
頭のなかにはそればっかりだった。
馬車の中の小さな窓から縄を引っ張る半獣が見える。
「なぁ、人間の兄ちゃん」
「は、はい!?」
「兄ちゃんは何であんなところに一人でいたんだ?見たところ、ろくに武器も持ってねぇ、かといって俺みたいな行商でもねぇ」
「お…俺は…」
どう答えたらいいかわからない。
いつも家でやってるゲームならこんな展開何回も見たのにいざ自分が経験すると頭が回らない。
「もしかして…この辺は初めてかい?」
「は、はい。そうです」
「なら兄ちゃんはきっと王都から来たんだな。だってそんな黒い格好はこの辺じゃ珍しいからな」
黒い格好…制服という概念がこの世界にはないのか。
「あの…!」
「どうした?」
「あなたのお名前は…?」
「?変なこと言う兄ちゃんだな。俺らレオガルド、名前なんて無いぞ」
…しまった。
「俺は行商をやることを高貴の人間から認められているが仕事がないやつは奴隷扱いされている。奴隷ならこんな形で人間と話すこともできやしないからな」
(…この世界には身分の制度があるってことか)
「もしかして兄ちゃん、王都の中でも身分が高い人間だったりしたのか?えらく外の事には疎いんだな」
「見るものすべてが新鮮だよ…」
「なら、気を付けな。俺は大丈夫だが、中には身分が高い人間をさらって売り飛ばすやつらもいるからな…と!!」
ガコンと音がして馬車が止まった。
「どうしたの?」
「…やべぇ」
彰は外に顔を出す。
すると、
「な…なに!?」
外には狼のような動物が沢山馬車を囲っていた。
「お…おかしい、ここはウェルフの生息区域じゃないはずだが!」
「おいおい…勘弁しろよ…いきなりチュートリアルなしの戦闘かよ」
「兄ちゃん逃げろ!ここは俺が何とかするから!」
レオガルドの男は馬車から降りて果敢にも素手でウェルフを殴り飛ばした。
「すげぇ…」
だが…圧倒的に数が多すぎる。
これじゃあじり貧だ。
「これがゲームなら、異世界に飛んだ主人公ならなにか特殊な能力持っててもおかしくないんだけどな…」
こうする間にも行商レオガルドのHPが…HP?
「そういえば…」
レオガルドの頭の上にもウェルフの頭の上にも緑色のバーが見える。
「…まるっきりこの世界はゲームって訳か」
なんて、独り言をいって逃げずにいると必ず起こりうることがある。
「やべ…」
いつのまにか馬車の後ろにもウェルフが3匹…
逃げ道が無くなった。
そのうちの1匹が彰に飛び付き噛みついてきた。
「うあぁぁ!!」
「くそっ!!数が多すぎる!」
今にも噛まれそうになりながら考える。
(くそ…特殊能力でもあれば…)
腕が疲れてきた。
「離れろ…はな…れろぉ…!」
「兄ちゃん!なんとか堪えてくれ!」
「離れろってぇ……」
「言ってんだろぉぉぉがぁぁぁ!!」
その瞬間、周りにいたウェルフが吹き飛んだ。
「どうなって…」
目の前にゲームでよく見るステータス画面みたいなものが現れる。
「これって…」
『使用コマンド:エリアウインドウ』
突然現れるステータス画面に驚きながらもゲームでやっていたように画面を操作する。
流れるように自分の情報を取り込む。
そこには自分の興味をそそる事が書いてあった。
『ユニークスキル:世界調整』
「それにしても兄ちゃん凄かったな!」
さっきから行商レオガルドは同じ話ばっかりしてる。
「いやー、あんな力があれば武器なんて要らないよなー。これは恐れ入ったぞ!」
「はぁ…ありがとうございます」
「守ってもらったしなにかお礼がしてぇ。困ったことがあれば商店通りの武具店に来な!」
「そんな、町に連れてきてもらっただけでもありがたいですよ」
「いやいや、兄ちゃんが乗ってなかったら俺が危なかったんだからさ、な?」
「まぁ…そこまで言うなら…」
「んじゃ、約束な!」
そうして行商レオガルドと彰は別れた。




