ゼロ hour +β
「そもそも四人だけで生き残るのは難しいんですよ?」
声に出さなければわからない事がある。
はっきり言わないと伝わらない事もある。
ユエの誤算も、あるいは、もしかしたら、コミュニケーションを惜しんだせいかもしれない。
例えば、こう言われたとしよう。
「みんなに恐れられたい」
よし!PKだ。
「カッコつけたスカし野郎をヘコませたい」
よし!PKKハントだ。
「アイテムやコインが足りない」
よし!イベント帰りを狙おう。
「女の子は、どう思うかな・・・・・・・・・・・・・・・いや、いいんだけどね?」
よし!必要ないな。
「嫌われたくない、って事も無いけどね?ほら、恨まれるとめんどくさいよね?女ってさ」
よし!めんどくさくならないようにしよう。
「うちも、女性プレイヤーいるし、需要はあるよね?うちのスタイルもさ?だけど、なかなか伝える機会がなくてね?いや、いいんだけどね?」
よし!わかった。
「いやーわかるよね?わかるよ!だよねー」
よし!まかせろ。
かくして、ニートの原案をギルド『モヒカン』の女性プレイヤーが計画にまとめ、モヒカンたちのイベントスケジュールが決まった。
ギルド『モヒカン』幹部とニートの会合。
ニートがたまたま声をかけた為に、ギルド『モヒカン』の女性プレイヤーが同席していた。
だから、あるいは、幹部たちは女性の前で言いにくい本音もあったかもしれない。
きっと男同士ならわかる事もあるかもしれない。
しかし、わからない、かもしれない。
そして『面倒だから、わからなかったことにしよう』と思われる事もある。
ニートはデス・ゲーム当日、穴場の狩場を独占していたのだが、本当に、独占だった。
ニート、ネコ、セイ、トモ。
だけ。
いくらイベント中でも、普通はない。
同じように考える、普段混み合う穴場を狙うプレイヤーは必ずいるからだ。
皆がログインしなくとも十万プレイヤーがエントリーしているのだ。
必ず、間違いなく、居ただろう――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――狩場の周りにPKギルドが罠を張っていなければ。
ニートは、たまたま、PKギルドと活動がかぶってしまった幸運を感謝した。
そして
『アイテムやコインを稼がせれば文句は言うまい』
とか
『手に入らないものがある間はまだまだ使えるな』
と暖かい眼で見ていた。
そしてデス・ゲーム開始確認と同時に、彼らがニートの事を
『メンバーじゃないのに知恵を貸してくれる良い人』
だと思っている事を思い出した。
「世の中にはいい人が多いな~♪」
いい人:×
都合のいい人:○
ニートはギルド『モヒカン』のオトモダチな複数のギルド幹部を経由して接触。
『殺人を防ぐためにPKを即止めなければならない』
という名目で、226人全員がデス・ゲームを知る状況を作った。
パニックである。
まだしも、同じ集団の大勢の中にいるから、暴走はしなかった。
だが、互いにわからない者同士が疑問をぶつけ合い、煽り煽られ、不安スパイラル。
致命的暴走を起こすのも時間の問題。
とりあえず待機を命じたギルド幹部。
本来であれば、ギルド幹部だけで意思統一してから対処を始めたかったところである。
すでに不安や焦りを数百人のメンバーから一身に集めてしまい、相談もできない。
発狂寸前。
唖然呆然としたギルド『モヒカン』の数百プレイヤーの真ん中に移動したニート(ネコ、セイ&トモ)。
ギルドマスター以下『モヒカン』幹部を説得するふり。
周りに聞こえるように・・・・おぃ。
実際はアジテーションにプレッシャーを煮詰めて撒き散らし、最高のタイミングを計っていただけ。
狙い通り、不安でギルド幹部の周りに集まって、依存心が最高になった『モヒカン』メンバーに『方向づけ』。
彼らはよくわからないまま、ギルド『GG』のユエに降伏する以外に道がない、と思い込み走り出した。
ありったけのアイテムをつぎ込みリスクやコストを考えずに。
いったん走り出せば時間もアイテムも減っていき、取り返しがつかない。
育成圏を抜け、疑念が生じる頃にはもう戻れない。
アイテムは残り少なく、見知らぬ攻略圏で、ニートのガイド無しでは一晩と過ごせない・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とまた、思いこまされた。
嘘ではないにせよ、ニートはちょくちょく『モヒカン』達から離れていたのだから、真実でもない。
だが、逃げ場がない彼ら、特に責任に押しつぶされた『モヒカン』ギルド幹部達。
彼らはむしろ積極的にニートを、『ユエに従えは助かる』を信じた。
ニートはユエに確認はもちろん約束すらとっていない。
事前、最中、事後すらも。
完全に独断。
しかもそれをだれにも伝えていない。
だから、ギルド『モヒカン』が助かる保障はなかった。
聞かれればニートは『そのまま死ぬよりましでしょう?』と応えるだろう。
だが、実際は違う。
ギルド『モヒカン』はなんだかんだあっても大手ギルド。
育成圏内部ではかなり強い。
生き残る道は幾らでもあった。
ニート自身、幾らでも考えつく。
しかしニートが動くのは自分が生き残るため。
その為にゲーム世界の安定を創る。
その為に一番不安定な、殺し殺されやすいPKプレイヤーを安定、つまり頸木を嵌めること。
それには特定ギルドだけ助けても意味がない。
っていうより、安定化させずに中途半端に安全を確保すると、のちのち復讐やら報復やらで火種になる。
そんな無意味なことをするなら、旧知な関係を利用して高レベルモンスターの巣に放り込んで皆殺し。
・・・・・・・・・ニートは、真面目にそう考えている。
だから、ギルド『モヒカン』達に一声かけた。
いや、なにが『だから』?
ギルド『モヒカン』226人の命はニートのチップ。
彼らの重みを利用して『まったく動く必要がない』ユエを動かす。
最強ギルド『GG』、そのギルドマスター、ユエ。
彼らはリアルマネーで買ったアイテムに、莫大なプレイ時間を費やしたレベル、プレイヤーとしてのスキルまである。
だからデス・ゲームに対して、なにもする必要はないのだ。
そしてニートはそれでは困る。
あんな便利グッズをを使わない手はない!!
いったい何様なのかと。
リアルで言えば
『資産のユエに率いられ様々なスキルを持つ若者たち』
なGGメンバー。
『適当に働く自由業に近い』
ニート。
ヴァーチャルで言えば
『知らぬものがない最強トッププレイヤー』
なGGメンバー。
『知らぬものがいない災害プレイヤー(ネコ)の側にいる概ね無名な中堅プレイヤー』
なニート。
だから動かす必要があった。
あくまでもニートの都合の為に。
無名で無力なニートが生きる為に、その力が必要だから。
まだいうか。
デス・ゲームをニートより前に知ったユエは落ち着いているだろう。
操る為には、一瞬、一瞬だけ混乱させる。
予想外の、大きな出来事を、ユエ独りに対してぶつける。
ギルド『モヒカン』にニートが背負わせた、二つ目の役割。
かくして、ニートの思惑とおり。
ギルド『モヒカン』は無事にユエの保護下に入った。
集団恭順に面食らったのか判然とはしないが、ユエ、つまりはギルド『GG』もゲーム世界に関わらざるを得なくなった。
最大PKギルド『モヒカン』の動きに触発されて、専門的なPK、シーフギルドが次々とユエの傘下に入っている。不安定要因だった彼らは、ほとんどいなくなるだろう。
他の、直接面識がない、無数のPKプレイヤー達への波及効果を期待して『モヒカン』を狙ったかいがあった。
ニートが最初に打ったキューは、彼が狙った通りに転がった。
これを『モヒカン』達が知ったら・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、知ったんだが。
ギルド『GG』メンバーはモヒカン達に隠す理由もないし。
「すげーよ!」
「神降臨!」
「陛下が命じなきゃ殺せないね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・理解出来てないだけかも知れないが、概ね好評である。
「あったしらは、赦さないっすよ?」ギルド『GG』のC。
「今は、殺せないわね」ギルド『GG』のD。
「殺しておいたほうがよくないか」ギルド『GG』のA。
「じゃあ俺が」ギルド『GG』のB。
ギルド『GG』メンバーには概ね不評である。
ユエの誤算は、なんだったのだろうか?
「わたしが引きこもり前提なのか?」
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