桜が咲く季節に起こる悲劇(笑)
桜が舞い散るこの季節。
俺はいつもの場所に来ていた。
「えぇ…っと……いつもの奴は…」
学校の隅にある自動販売機。
俺はここの常連客となった。ここにしか、例の物は売ってない。
俺は売り物を確認し、思わず呟いた。
「無い…だと…!?」
そ、そんな馬鹿な…! 昨日まではあったのに…!!
「……世界は何時だって、こんな筈じゃない事ばっかりだよ」
というか今更だが何故ここに自動販売機置いたし。ここで買う人全然見たことないぞ。
「……しかし、どうするか…」
例の物で始まり例の物で学校を終える。
始まってそうそう出鼻を挫かれた。
……はぁ…仕方ない。
「早退するか」
と言った瞬時、俺の頬に何かが当たった。
「うわっ!」
「はい。これが欲しかったんでしょ」
目の前には、喉の潤いを取り戻し、尚且つ体力が快復するエナジードリンクが…!
驚きの余り後ろを振り向いた。
「……なんだ、お前か」
「お前か、だなんて失礼じゃない? 折角用意したのに」
「いや、悪い。こんな端まで来る人は少ないからさ」
渡されたエナジードリンクを受け取り蓋を開ける。
そのまま一気飲み。
「くぅ〜。この一杯がたまらん」
「……オヤジ臭い。そんな事言ってると彼女出来ないよ?」
「春は来てるのに『春』は来ないって? うるせえわ。俺だってな、本当なら女の一人や二人……」
「作れるの?」
「……」
ツッコミが核心を突いているので何も言い返せない。
「もぅ…意地張ってないで早く行こうよ。体育館に集合だよ?」
「行かねえよ、俺は」
俺は誰かと、卒業や入学をする為に喜んだりする事は出来ない。
「……やっぱり、駄目だったの?」
半ば諦めかけていた様な声音で、俺に聞いてくる。
だから俺は、ただ首を縦に振って返事をする。
「………そう、なんだ…」
「なんでお前が悲しむんだよ。それに、もう逢えなくなる訳じゃないだろ?」
彼女の頭をクシャクシャと撫で、俺は自転車に跨ぐ。
そこで俺は、ポツリと聞こえるか聞こえないかの声を出す。
「……俺、お前の事が好きだったよ……」
「え…?」
自転車のべダルを踏み漕ぎ出す。
ただ俺はその場から逃げたかった。
(聞こえたかもしれないな)
けれど、このままで良い。
気持ちは伝えた。後はもう……
俺がこの世界から居なくなるだけなんだから。
「あぁ…本当に、この世界はこんな筈じゃない事ばっかりだよ」
今回も安定の駄文